カモミールの福音 ~花と〈家族〉に癒される優しい世界の物語~

南 鈴紀

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第一一話 雨の休日

第一一話 一

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 梅雨本番になり、連日しとしと雨が降り続く。
 子ども達が飽きないようにと、ウタセとミトドリが催し物を企画していたのは記憶に新しい。実際に梅雨入りしてからは平日休日問わずに遊戯室を開放し、一日一つ、なるべく大人数で遊べる企画が開催されていた。
 慈乃は梅雨明けを待ち遠しく思う一方で、そんな今を心から楽しんでいた。

 五日に一度の休日。
「げっ。まだあったんですか、このすごろく……」
 宿題を終えてから、トゥナと連れ立って遊戯室にやって来たソラルは頬を引きつらせてそれを見た。
 遊戯室に広がる四枚の模造紙。それらは全て手作りのすごろくだ。何人かに分かれて遊んでいるが、唯一まだひとのいないすごろくは忘れたくても忘れられないあのすごろくだった。
 トゥナも苦い顔をしている。
「これは……ちょっと……」
 ふたりで顔を見合わせていると、背後から声が掛かった。
「こんなとこに突っ立って何してんの?」
 そこにはタムの肩に腕を回したニアがいた。さらにその後ろにはヨルメイと何やら楽しそうに話す慈乃の姿もある。
 ソラルはちらりと床に広げられたすごろくに目をやった。
「……部屋に戻ろうか考えてました」
「右に同じく」
 トゥナもすごろくを一度見たものの、すぐに目を逸らした。
 ニアはきょとんと目を瞬く。
「なんで? 今来たばっかりじゃないの?」
 タムが閉じていた目を開けた。寝ているようでも話は聞いていたらしい。
「……わかった。友達がいないからだね」
「いやいやいや! タム姉、その言い方はぐっさりくるよ⁉」
 トゥナが身を乗り出して、全力で否定した。その隣ではソラルが冷静に状況を説明する。
「俺達はこのすごろくにあまりいい思い出がないんです。だから」
 ソラルが言い切る前に、タムはこくりと頷いた。
「……わかった。わたしが一緒にやってあげる」
「話聞いてました⁉」
 ソラルも冷静さを忘れかけ、思わず突っ込みを入れてしまう。
 タムはこてんと首を傾けると、ゆっくりしゃべりだした。
「聞い、てたよ? 大丈夫。わたしがいい思い出に塗り替える……」
「タム姉さんが珍しく本気に……! わ、私も協力します!」
 後ろで成り行きを見守っていたヨルメイも、タムの熱意に圧されて遊び相手を申し出る。当然ニアもやると言い出し、慈乃も特に抵抗なくすごろくに参加することにした。
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