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最終章 ほな、さいなら

捕らわれた基地内での目覚め~水無瀬ラクとの邂逅~

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「…ひぃっ、ぅあっ…!」

目を覚ました。

すでに日向はおらず、今何時なのか、
最後の陵辱からどのくらい時間が経ったのか。

「……ぁ……」

声を出そうとして、喉が痛む。
体中も痛い。特に胸と下腹部の痛みがひどい。

「うーわっ、ひどい有様ですね」

実験用のカエルのように足を開かされ、
ベッドに拘束されているわしの頭上で
知らない声がした。

「…誰や?」

自分の声はかすれてしわがれている。
首だけ動かして声の方を見た。

「あ、起きましたか?初めまして。
って言っても僕の方はあなたが気絶しているときに
何度も会っているんですが」

目にかかるほど伸びた前髪、そこから覗くぎょろりとした目、
今は白衣を着ているが、怪人と戦っているのをモニター越しに
見たことがある。

「君もヒーローか?」

「ええ、お察しの通りです。
日向君の後輩の水無瀬ラクって言います」

「水瀬君、ね。悪いけどこれ、ほどいてくれん?
苦しゅうてしゃーないねん」

「それでほいほいほどくほど馬鹿じゃないですよ。
それにそんなことしたら先輩に殺されますから」

「…まぁ、そやろなぁ」

そこでわしは言葉を区切る。
目の前の人物は日向よりも手強そうだ。
わしは再び口を開く。

「なぁ、君が日向に力貸したんやろ。
日向がまたヒーローになったのも
チョコバイダーに乗り込んだのも、
君が手助けしたからやろ」

そう言うとラクは驚いた顔をした。

「驚いたな。まさか僕のことまで調べていたんですか?」

「いや、これはほんまにただの勘や」

「怖い人だ。結果としてあなたを拘束できたのは
良かったかもしれない。こんなものを放っておいたら
知らないうちにアスカーは壊滅させられるところだった」

「それは買い被りすぎや」

「いえ、あなたには随分と苦しめられました。
スーツの件もそうですが、最近の怪人の急激な強化、
あなたの仕業でしょう、対策が追い付かず苦労しました」

「そんなら、わしも怪人の回収に合わせて日向も同乗させるとは
思わなかったわ。なんやあれ、反則やろ」

「あれは僕じゃなくて日向先輩の案ですよ。
怪人と一体化して転送なんて、ほぼ博打みたいなものでした。
上手く転送されなかったら体がバラバラになるか
怪人と融合してしまうか。
それでもいいと言われて、仕方なくやったんです」

「相変わらず無茶苦茶やるわ」

わしははぁーっと深いため息をついた。

「ところで、信さん、どうやって先輩を誑し込んだんです?」

ラクの言葉にげんなりした。

「君までそんなこと言うん?
ほんまわしそんなことしてへんよ。
偶然に偶然が重なっただけやったん。
わしかてこんなことなるなんて思ってへんかった」

「そうですか。僕は信さん見た時納得したんですが。
先輩はあれで意外と面食いでむっつりなので
信さんに誘惑されて、スーツを渡したりしたのかと。
まぁ、それでもこんなに執着してるのは異常だと思いますが」

そしてラクが不躾にわしのことを眺めたので
居たたまれなくなる。

「そんなん見んといて。わしだって日向がこんなんすると
思ってへんかったわ。嫌やわ、これ、いつ終わるん?」

「それは信さんが本当のこと話したらじゃないですか」

「ほんまのことも何も、わし日向が望む情報なんて
何も持っとらんよ。わしはしがない雇われ研究員やから」

「よく言いますね」

「…はぁ、わしどうすればええねん。
このままここにずっとおるわけにはいかへん。
家族も心配しとるだろうし」

わざとらしくため息をついて、目の前の高校生を
罪悪感で揺さぶれないだろうかと試みる。

「あ、そのことなら心配ないですよ」
「あ?」

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