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じゃじゃ馬を手のひらで転がすには
しおりを挟む「余計なことを」
保健室で誰もいないのを確認すると
レンカは俺を睨みつけて、血の底から
響くような声で唸った。
「ああいうことしてると女友達出来ないと思うんすけど」
「別に必要ない。私は私の目的を果たすためだけにここにいる。
それ以外の余計な馴れ合いなど不要だ。むしろいないほうが
清々する」
「男の前で猫かぶって結婚できたとしてそれでいいのかよ」
俺はレンカから目を逸らして苦言を漏らすと、レンカが鼻で笑った。
「我々のような高い地位のものにとって結婚とはそういうものだろう。
相手をいかに欺き、自国のために搾り取れるだけ搾り取る。そのためなら何でもやる」
「あんたな…」
イライラして次の言葉を口に出そうとしてふとやめた。
この姫様は幼いころから、自国の利益になるために生きていると教え込まれてきた。
そこに彼女自身の意思は存在しない。
いや、自国のために身をささげることこそ幸せだと、
深層心理の奥の奥まで信じ込まされている。
それは崇拝で、信仰だ。
それを否定することは彼女自身を否定することだ。
おそらく俺みたいな人間が軽々しくやっちゃいけないことなんだろう。
「とにかく、あんま軽々しく男の部屋に入ったりするとふしだらな女だと思われますよ。
男はそういう女を遊びの相手としてみて、結婚相手としてはふさわしくないと思うでしょう・・・
あと周りの女とも仲良くしてください。女の恨みはマジ怖いっすから。」
「ふむ、お前の言うことも一理あるな。わかった、ここはお前の意見に従おう」
「わかってくれたようでよかったっす」
「では、戻るぞ。お遊びになるだろうが、学園の授業を欠席するのは姫としての印象を下げる行為だからな」
「はぁ、さぼりてぇ」
「お前は別に出なくてもいい」
「あ゛あ゛、行きますよ」
俺はレンカと連れ立って保健室を出た。
※※※
保健室からスイラとレンカが出た後、
二人の後姿を見送る影があった。
学園に通う貴族の令嬢たちである。
「ねーあの二人」
「今、二人で保健室から出てきたよね」
「確か片方は残虐姫?」
「ああ、あのマホロバの」
「というかもう一人はまだ子どもじゃない?」
「え、残虐姫ってショタコン?そういう趣味」
「これはやばいよね」
くすくすと少女たちが笑いあった。
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