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☆第三十五話 オドサン大決戦☆
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オドサンの防壁を破壊して街へと侵入する砂ドラゴンを空から追い抜いた正人だけど、しかしこの二十メートルを超える巨竜を排除する方法は、思いついていない。
「このまま突撃して爆散…いや、すぐに砂が集まってしまうだけだっ!」
実質粒生物の集合体である巨大な砂ドラゴンの姿に、街の人々が恐怖した。
「なっ、なんだあれぇっ!?」
「ドラっ――ドラゴンだああっ!」
「みんな逃げろおおおっ!」
街の住宅区域へと踏み込んだ砂ドラゴンが、恐れて逃げ惑う人々の姿を歓喜するかのように、勝ちどきみたいな咆吼を夜空へ上げる。
――ッグラララァガァァアアアアアアッ!
叫びながら、体内に溜め込んでいる魔法衛士隊員の魔力を使って、体内でより強力な火炎を生成し始めた。
「こいつっ、また火炎を吐くのかっ!」
砂ドラゴンの正面へ飛来して、吐かれる火炎から街を護ろうとする飛行の青年に、しかし火炎竜は頭を背けて業火を吐き出す。
「――っまずいっ!」
――ッゴァァアアアアッ!
長い首をフル活用して、周囲一帯へ広く豪炎地獄を現出させようとした砂ドラゴンの蹂躙を読めた正人は、その身を高速飛行で、開かれたドラゴンの口内へと突撃させて、火炎そのものの放出を物理的に妨げた。
「か、火炎が…っ!」
「見てっ! 誰かっ、いるわっ!」
ドラゴンの口で、炎を四方へ散らしている人影に気付いて、街の人たちも驚きながら注視をする。
「このままっ!」
凄まじい火炎をモノともせず、正人は口内から長い首の中を潜り抜けて、膨らんだ腹部の中心部へと到達。
内部も砂が詰まっているけれど、火炎の熱源となっている微振動の砂を、全身の回転で押し除けながら外へも散らし、一時的でも砂をバラけさせて熱を奪った。
――ッゴアアアアッ!
更に尻尾に囚われている魔法使いの衛士隊員たちを助け出そうとしたものの、ドラゴンが尻尾を振ったので、正人は尻尾の付け根あたりで外へと飛び出してまう。
「コッチはダメかっ…あっ!」
魔法の源泉を奪われまいと、砂ドラゴンは隊員たちを更に身体の中へと引き囲み、外からでは体内のドコにいるのか、解らなくされてしまった。
「くそっ、いちいち感に障る事をっ!」
つくづく厄介な知的生命体である。
「全隊っ、防御っ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
空飛ぶマントのヒーローに遅れて、魔法衛士隊が街の中へと展開を始めていた。
街を護っていた防衛の衛士隊たちも駆けつけて、全隊員で砂ドラゴンを取り囲む。
「衛士隊の人たちだっ! とりあえず、魔法の盾で火炎は防げそうだけど…っ!」
「正人様~っ!」
衛士隊から後方に離れた建物一階の屋根の上から、シーデリア嬢の声が聞こえた。
「シーデリアさんっ! アリスさんもご無事でっ!」
「はいですっ!」
金髪のお嬢様も、黒髪の護衛メイド長も、艶々な美しい髪や上品な衣装が、煤で汚れてしまっている。
街での火炎魔方陣の消火作業を、手伝っていたからだ。
シーデリアの目の前に浮遊しながら、無事が確認できてホっとしている正人。
「正人殿っ、あの怪物はっ?」
「はいっ、詳しくは後に説明しますが、火炎テロのボスのドラゴンですっ!」
「な、なんという…っ!」
シーデリアを誘拐した悪質な商人の逆恨みと知って、お嬢様も言葉を失っていた。
ドラゴンは火炎を吐きながら、重たい身体を引きずるように歩を進め、街の領主である貴族屋敷の地区へと、近づいてゆく。
「正人様、あのドラゴンは、正人様のお力でも、困難なのでしょうか?」
「悔しいですが…あれは砂粒の集合体でして…っ!」
怪力や超速度を誇る正人にとっては、敗北する事はなくても排除困難な巨竜である。
「とにかく…あっ、見て下さいっ! あのように火炎を防ぎつつ、水と氷魔法で本体を凝固させて、後は海とかに捨てるしかないようですっ!」
正人たちの視線の先で、砂ドラゴンを取り囲んだまま火炎を魔法防御する衛士隊たちの奮戦が、苛烈に展開されていた。
「魔法っ、水っ!」
厳顔な部隊長の指示で、魔法部隊が巨竜の頭上に消火魔法ではなく水を発生させる魔方陣を展開し、大量の水を降らせる。
――っザザザザザザザアアアアアっ!
上からの降水に、砂ドラゴンはなぜか焦る様子も無く微動だにもせず、大量の水を砂の身に浴びせられ続ける。
「続いてっ、氷結っ!」
隊長の号令で隊列が入れ替わり、ズブ濡れになった砂ドラゴンへ、氷結魔法が発動。
巨体の周囲に青色の魔方陣がいくつも展開をして輝き、目標へ向けて光を放った。
――っきらきらきらキラキラキラキラっ!
周りの空間全てからの氷結魔法に、ドラゴンの身体が含んでいる水分が冷やされて氷結し、更に巨体が分厚い氷で包まれてゆく。
「「「…ぉぉおおおっ!」」」
「凍ってゆくわっ!」
「流石は衛士隊だっ!」
恐ろしいドラゴンが無力化されてゆく様子に、避難をしている人々が歓声を上げた。
「これで倒されれば何より…あっ!」
「正人様っ!」
氷結されたと想った次の瞬間、氷の中の砂ドラゴンは腹部を赤く光らせて、中から氷を溶かし始める。
そして、全身の砂を赤熱化させた脅威の火炎ドラゴンは、体表の濡れた砂を熱爆発で弾けさせつつ、砕いた氷と一緒に周囲へと爆散をさせた。
――ッドオオオオオンンンッ!
「うわあぁっ!」
「きゃあぁっ!」
人間サイズで鋭く砕かれた氷が、周囲の人々や建物へと襲い掛かり、悲鳴が上がる。
「なっ――なんとっ!」
衛士隊の魔法攻撃すら利用して街への攻撃に転じる砂ドラゴンの狡猾さに、流石の魔法衛士隊たちも、驚きを禁じ得なかった。
「森の部隊は住人達の守護っ! 我々は巨竜をっ、絶対に食い止めるっ!」
街防衛の衛士隊たちも、魔法部隊はドラゴンとの戦闘に参加をして、それ以外の部隊は人々を護る盾となる。
そして街中では、自警団員たちも、被害者の避難や救出に動きまわっていた。
「皆っ、被害者の待避を最優先してくださいっ!」
「怪我をされた方たちは、私たち魔法隊がっ、後方で治癒を致します~っ!」
「男たちはとにかくっ、年寄りとか子供を抱えて退避だっ!」
自警団の女性団長であるドングリウルも、女性の副団長である魔法使いのシームも、体力自慢の男性部隊長であるガランも、街の人々を護る為に必死である。
「くそぉ…っ、僕はなんて無力なんだっ!」
超人として転生をしながら、今は何の役にも立たない。
僕の転生なんてっ、誰一人として救えない。
そんな悔しい想いが、正人の胸を締め付けてくる。
「正人様っ、あのドラゴンを最終的には、海へと捨てられるのですよねっ?」
「えっ――は、はいっ!」
正人よりも頭の回転がずっと早いシーデリアは、冷製に状況を見ながら、事態収拾へのプロセスを思考していたらしい。
「凍らせる事が不可能でしたら、とにかく街の外へ、出せませんでしょうか?」
「街の外へ…ぁあっ、そうかっ!」
「しかしお嬢様、あの巨竜を外へとなると…相応に巨大な荷台が…」
ドラゴンを無力化する事に囚われていた正人は、シーデリアの言葉を受けて、新たな考えを巡らせ始めた。
「砂ドラゴンは細かい砂だ…っ! アレを街の外へ運び出すには…荷車…っあのっ!」
「「は、はいっ!」」
シーデリアとアリスが一緒に返事をして、そしてヒーローの仮面の奥で輝く自信の光を、ハッキリと認識する。
「この辺りにっ、高くて広くて固い岩の崖とかっ、ありませんかっ?」
「い、岩の影、ですか…? アリス…」
「崖…固い岩の、ですか…?」
記憶を探る二人の足下の路上から、正人もよく知る人物の声がした。
「固い岩の崖なら、ホレ、向こうにあるぜ」
聞き知っている声の主を見ると、正人がお世話になっている髭の現場リーダーが、街の東にそびえる山の稜線を指さしている。
「リーダーっ、ご無事でっ! ぁあの山の向こう側に、崖があるのですかっ!」
目のすぐ前まで降りてきた仮面青年の圧に、初老の現場リーダーも流石に慌てたり。
「ぉおう…。ここから見える山の裏っ側にな。エラく固くて手も付けられねぇ崖が、昔っからあってな」
「ちなみにっ、崖の高さはっ?」
「ぉおぅ、あのドラゴンどこじゃねぇ位の、高け~ぇ断崖絶壁だぞ」
「ぁっ、有り難う御座いますっ!」
仮面ヒーローが礼儀正しく頭を下げて、興奮気味な笑顔で告げた。
「シーデリアさんっ、アリスさんっ、リーダーっ、皆さんのお陰でっ、この街は護られますっ!」
そう言って、マスクの青年はマントを翻して衛士隊の元へと向かった。
「…あいつ、俺のこと知ってるの…?」
「衛士隊長っ!」
「むっ、きみか! どうした?」
「あのドラゴンを、街の外へ運び出しますっ! ですのでっ、あと五分だけ踏ん張って下さいっ!」
「…五分だな!」
青年を信じる衛士隊長は、詳細を聞かずに引き受けてくれる。
「有り難う御座いますっ!」
街から高速で飛び立った正人が山の裏側へ降り立つと、岩の崖は高さが五十メートル程もあって、幅はそれ以上に広かった。
「…これなら行けるっ!」
~第三十五話 終わり~
「このまま突撃して爆散…いや、すぐに砂が集まってしまうだけだっ!」
実質粒生物の集合体である巨大な砂ドラゴンの姿に、街の人々が恐怖した。
「なっ、なんだあれぇっ!?」
「ドラっ――ドラゴンだああっ!」
「みんな逃げろおおおっ!」
街の住宅区域へと踏み込んだ砂ドラゴンが、恐れて逃げ惑う人々の姿を歓喜するかのように、勝ちどきみたいな咆吼を夜空へ上げる。
――ッグラララァガァァアアアアアアッ!
叫びながら、体内に溜め込んでいる魔法衛士隊員の魔力を使って、体内でより強力な火炎を生成し始めた。
「こいつっ、また火炎を吐くのかっ!」
砂ドラゴンの正面へ飛来して、吐かれる火炎から街を護ろうとする飛行の青年に、しかし火炎竜は頭を背けて業火を吐き出す。
「――っまずいっ!」
――ッゴァァアアアアッ!
長い首をフル活用して、周囲一帯へ広く豪炎地獄を現出させようとした砂ドラゴンの蹂躙を読めた正人は、その身を高速飛行で、開かれたドラゴンの口内へと突撃させて、火炎そのものの放出を物理的に妨げた。
「か、火炎が…っ!」
「見てっ! 誰かっ、いるわっ!」
ドラゴンの口で、炎を四方へ散らしている人影に気付いて、街の人たちも驚きながら注視をする。
「このままっ!」
凄まじい火炎をモノともせず、正人は口内から長い首の中を潜り抜けて、膨らんだ腹部の中心部へと到達。
内部も砂が詰まっているけれど、火炎の熱源となっている微振動の砂を、全身の回転で押し除けながら外へも散らし、一時的でも砂をバラけさせて熱を奪った。
――ッゴアアアアッ!
更に尻尾に囚われている魔法使いの衛士隊員たちを助け出そうとしたものの、ドラゴンが尻尾を振ったので、正人は尻尾の付け根あたりで外へと飛び出してまう。
「コッチはダメかっ…あっ!」
魔法の源泉を奪われまいと、砂ドラゴンは隊員たちを更に身体の中へと引き囲み、外からでは体内のドコにいるのか、解らなくされてしまった。
「くそっ、いちいち感に障る事をっ!」
つくづく厄介な知的生命体である。
「全隊っ、防御っ!」
「「「「「はいっ!」」」」」
空飛ぶマントのヒーローに遅れて、魔法衛士隊が街の中へと展開を始めていた。
街を護っていた防衛の衛士隊たちも駆けつけて、全隊員で砂ドラゴンを取り囲む。
「衛士隊の人たちだっ! とりあえず、魔法の盾で火炎は防げそうだけど…っ!」
「正人様~っ!」
衛士隊から後方に離れた建物一階の屋根の上から、シーデリア嬢の声が聞こえた。
「シーデリアさんっ! アリスさんもご無事でっ!」
「はいですっ!」
金髪のお嬢様も、黒髪の護衛メイド長も、艶々な美しい髪や上品な衣装が、煤で汚れてしまっている。
街での火炎魔方陣の消火作業を、手伝っていたからだ。
シーデリアの目の前に浮遊しながら、無事が確認できてホっとしている正人。
「正人殿っ、あの怪物はっ?」
「はいっ、詳しくは後に説明しますが、火炎テロのボスのドラゴンですっ!」
「な、なんという…っ!」
シーデリアを誘拐した悪質な商人の逆恨みと知って、お嬢様も言葉を失っていた。
ドラゴンは火炎を吐きながら、重たい身体を引きずるように歩を進め、街の領主である貴族屋敷の地区へと、近づいてゆく。
「正人様、あのドラゴンは、正人様のお力でも、困難なのでしょうか?」
「悔しいですが…あれは砂粒の集合体でして…っ!」
怪力や超速度を誇る正人にとっては、敗北する事はなくても排除困難な巨竜である。
「とにかく…あっ、見て下さいっ! あのように火炎を防ぎつつ、水と氷魔法で本体を凝固させて、後は海とかに捨てるしかないようですっ!」
正人たちの視線の先で、砂ドラゴンを取り囲んだまま火炎を魔法防御する衛士隊たちの奮戦が、苛烈に展開されていた。
「魔法っ、水っ!」
厳顔な部隊長の指示で、魔法部隊が巨竜の頭上に消火魔法ではなく水を発生させる魔方陣を展開し、大量の水を降らせる。
――っザザザザザザザアアアアアっ!
上からの降水に、砂ドラゴンはなぜか焦る様子も無く微動だにもせず、大量の水を砂の身に浴びせられ続ける。
「続いてっ、氷結っ!」
隊長の号令で隊列が入れ替わり、ズブ濡れになった砂ドラゴンへ、氷結魔法が発動。
巨体の周囲に青色の魔方陣がいくつも展開をして輝き、目標へ向けて光を放った。
――っきらきらきらキラキラキラキラっ!
周りの空間全てからの氷結魔法に、ドラゴンの身体が含んでいる水分が冷やされて氷結し、更に巨体が分厚い氷で包まれてゆく。
「「「…ぉぉおおおっ!」」」
「凍ってゆくわっ!」
「流石は衛士隊だっ!」
恐ろしいドラゴンが無力化されてゆく様子に、避難をしている人々が歓声を上げた。
「これで倒されれば何より…あっ!」
「正人様っ!」
氷結されたと想った次の瞬間、氷の中の砂ドラゴンは腹部を赤く光らせて、中から氷を溶かし始める。
そして、全身の砂を赤熱化させた脅威の火炎ドラゴンは、体表の濡れた砂を熱爆発で弾けさせつつ、砕いた氷と一緒に周囲へと爆散をさせた。
――ッドオオオオオンンンッ!
「うわあぁっ!」
「きゃあぁっ!」
人間サイズで鋭く砕かれた氷が、周囲の人々や建物へと襲い掛かり、悲鳴が上がる。
「なっ――なんとっ!」
衛士隊の魔法攻撃すら利用して街への攻撃に転じる砂ドラゴンの狡猾さに、流石の魔法衛士隊たちも、驚きを禁じ得なかった。
「森の部隊は住人達の守護っ! 我々は巨竜をっ、絶対に食い止めるっ!」
街防衛の衛士隊たちも、魔法部隊はドラゴンとの戦闘に参加をして、それ以外の部隊は人々を護る盾となる。
そして街中では、自警団員たちも、被害者の避難や救出に動きまわっていた。
「皆っ、被害者の待避を最優先してくださいっ!」
「怪我をされた方たちは、私たち魔法隊がっ、後方で治癒を致します~っ!」
「男たちはとにかくっ、年寄りとか子供を抱えて退避だっ!」
自警団の女性団長であるドングリウルも、女性の副団長である魔法使いのシームも、体力自慢の男性部隊長であるガランも、街の人々を護る為に必死である。
「くそぉ…っ、僕はなんて無力なんだっ!」
超人として転生をしながら、今は何の役にも立たない。
僕の転生なんてっ、誰一人として救えない。
そんな悔しい想いが、正人の胸を締め付けてくる。
「正人様っ、あのドラゴンを最終的には、海へと捨てられるのですよねっ?」
「えっ――は、はいっ!」
正人よりも頭の回転がずっと早いシーデリアは、冷製に状況を見ながら、事態収拾へのプロセスを思考していたらしい。
「凍らせる事が不可能でしたら、とにかく街の外へ、出せませんでしょうか?」
「街の外へ…ぁあっ、そうかっ!」
「しかしお嬢様、あの巨竜を外へとなると…相応に巨大な荷台が…」
ドラゴンを無力化する事に囚われていた正人は、シーデリアの言葉を受けて、新たな考えを巡らせ始めた。
「砂ドラゴンは細かい砂だ…っ! アレを街の外へ運び出すには…荷車…っあのっ!」
「「は、はいっ!」」
シーデリアとアリスが一緒に返事をして、そしてヒーローの仮面の奥で輝く自信の光を、ハッキリと認識する。
「この辺りにっ、高くて広くて固い岩の崖とかっ、ありませんかっ?」
「い、岩の影、ですか…? アリス…」
「崖…固い岩の、ですか…?」
記憶を探る二人の足下の路上から、正人もよく知る人物の声がした。
「固い岩の崖なら、ホレ、向こうにあるぜ」
聞き知っている声の主を見ると、正人がお世話になっている髭の現場リーダーが、街の東にそびえる山の稜線を指さしている。
「リーダーっ、ご無事でっ! ぁあの山の向こう側に、崖があるのですかっ!」
目のすぐ前まで降りてきた仮面青年の圧に、初老の現場リーダーも流石に慌てたり。
「ぉおう…。ここから見える山の裏っ側にな。エラく固くて手も付けられねぇ崖が、昔っからあってな」
「ちなみにっ、崖の高さはっ?」
「ぉおぅ、あのドラゴンどこじゃねぇ位の、高け~ぇ断崖絶壁だぞ」
「ぁっ、有り難う御座いますっ!」
仮面ヒーローが礼儀正しく頭を下げて、興奮気味な笑顔で告げた。
「シーデリアさんっ、アリスさんっ、リーダーっ、皆さんのお陰でっ、この街は護られますっ!」
そう言って、マスクの青年はマントを翻して衛士隊の元へと向かった。
「…あいつ、俺のこと知ってるの…?」
「衛士隊長っ!」
「むっ、きみか! どうした?」
「あのドラゴンを、街の外へ運び出しますっ! ですのでっ、あと五分だけ踏ん張って下さいっ!」
「…五分だな!」
青年を信じる衛士隊長は、詳細を聞かずに引き受けてくれる。
「有り難う御座いますっ!」
街から高速で飛び立った正人が山の裏側へ降り立つと、岩の崖は高さが五十メートル程もあって、幅はそれ以上に広かった。
「…これなら行けるっ!」
~第三十五話 終わり~
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