異世界に転生した守銭奴は騎士道を歩まない?

ただのき

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4・馬より速い、頼りになる相棒

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「ここからは、私が先導致します!」

 別の兵士が名乗りを上げる。門の外には馬が何頭か繋がれて、手綱を渡そうとしてくる。けど、

「いや、オレに馬は必要ない」
「しかし、ここからはまだ距離がありますので、」

 確かに、距離があるなら走っていては間に合わないだろう。走っていては、だけど。
 頑なに手綱を受け取ろうとしない私に、兵士は困惑している。
 知らないという事は、新人だろうか。
 彼の事は有名だと思っていたのだけれど、そうでも無かったらしい。
 まあ、最近は遠出する事が無かったからなあ。
 だけど、本当に要らないんだよね。かといって走っていくつもりもない。
 そうしている内に、ほら、来た!

「カエシウス!」

 足元に大きな影が出来ていたので見上げれば、太陽を背にした彼が颯爽と着地する。

「ヒッ!し、白い魔物!?」

 ああ、初めて彼を見た人は大抵同じ様な反応をするよね。
 けど、久しぶりに目にするのと、思った以上の驚きように思わず笑いが込み上げてくる。

「やあ、カエシウス。最近、会いに行けなくて悪いね。今日は久し振りの魔物退治デートと行こうぜ」

 カエシウスの喉元を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めゴロゴロと喉を鳴らす。
 こういう所は、普通の猫科と代わりない。

「何、お前知らないの?たいちょー達の事知らないとかモグリにも程があるな。あれは、たいちょーの相棒の風虎ウェント・ティガーだよ。風虎ってだけでも珍しいのに、黄色の普通の奴じゃなくて希少種を乗りこなすとか、流石たいちょーだよね!」

 後ろの方でカエシウスが何やら説明してるのを聞き流す。
 知らないとモグリとか。いや、自分でも結構知られていると思っていたから、他人がそう言ってるのを聞くと何か恥ずかしいわ。
 一通り撫でて満足したから、カエシウスの背に跨がる。
 今は一応急いでいるから、鞍を着けてる時間はないだろうし。

「どうせ、街道沿いに行けばその内ぶち当たるだろ?オレは先に行くから、お前達は後から着いて来い!」
「了解でーす!」
「はい!」

 カエシウスの首筋に触れ合図を出すと、直ぐに地をけったのでカニスとグラヴィの返事を背中で受け取った。
 久し振りの散歩が嬉しいのか、いつもより少し速度が速い。
 今日は鞍も手綱も着けていないから、流石に振り落とされそうだ。

「カエシウス!嬉しいのは分かるけど、もうちょい速さを落としてくれ。でないと落ちそうだ!」

 言うと、少しだけ速度を落とし、いつもと同じくらいの速さになる。
 怒られたと思ったのか、チラチラと寄越す視線が心なしかしょんぼりしている。

「怒った訳じゃないよ。嬉しいのはオレも一緒だし。今度休みが取れたら遠出しような」

 耳の後ろをカリカリと掻いてやって、怒ってない事を示す。
 カエシウスがまた前を向いたので、私も体を伏せてしがみつき直す。
 でないと、いくら速度を落としたとしても風圧がある事に変わりはないから、油断すると落ちかねないからね。
 流れるように後ろに消えていく景色を横目に、街道を進む。
 途中、いくつかの商隊や旅人らしき人達とすれ違った。
 その内の殆んどが、カエシウスを見て怯えていたのを見て少しだけ申し訳無く思いながらも「緊急時だから許してよね」なんて内心で呟いた。
 怯えてなかった人達はきっと、何度かカエシウスを見た事があるのだろう。
 通り過ぎる風に煽られてはいたけれど、何事もなかったかの様に平然としていたし。
 中には手を振ってくる人も居たくらいだ。
 その調子でカエシウスに友好的な人がどんどん増えていけば良い。
 そうしたら、街中でも堂々とカエシウスを連れて歩ける様になるし。
 まあ、今でも一部では連れ歩いてるんだけど、手綱とか放して歩いて見たいよね。
 中には、カエシウスがどんなに大人しく利口か説いても、生理的に動物自体が駄目な人も居るから、結局は無理だろうけど。
 その辺りは、前世の時にも居たから心得ている。
 私はれっきとした常識人だからね!

「っと、あれか」

 乗っている間、暇だからそんな事をつらつらと考えていれば、見えてきた。
 何とか前を塞がられる事は避けている様だけど、あれだと止まるのはもう時間の問題だな。
 殆ど四方を取り囲まれているのを見て、目を細めた。
 さて、どこから加勢しようかな、と考えていると突然、火柱が上がった。

「アレは?」

 グリーンウルフは風属性だから、火柱が上がる筈がない。とすれば、騎士団の誰か、か。
 けど、風属性に炎、って一体何を考えているんだろうか。
 下手をすると周りも巻き込みかねない規模の炎を見て舌打ちを一つ。

「カエシウス!あそこへ行ってくれ!」

 火柱が上がるのは一点だけだ。
 という事は、あそこに首級(ボス)が居ると考えて間違いないだろう。
 指をささずとも、私がどこに行きたいかをきちんと理解しているカエシウスは真っ直ぐ火柱が上がった場所へと向かってくれる。
 馬鹿の始末は後回しだ。先に面倒なのを倒してからジックリタップリ突っついてやる!



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