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3・待ちぼうけ
しおりを挟むグラヴィには、昨年度と過去に共通してあった項目を書き出しておくように頼むと、その日の内に仕上げてくれた。
それを見ながら、前回と全部被らないように順路を組み立てて行く。今年流行の店だとか、ね。
討伐訓練に関しては前回、というか、いつも同じ場所から始めているので、今年もそれで良いだろう。
そうして話し合い──と言っても私とグラヴィだけだ。カニスは私の言う事に「はい」としか言わないのだ──は進み、無難ながらもあまり文句は言われないであろう出来に仕上げる事が出来た。
前日にな!
だって、通常業務はいつも通りある中でやろうと思ったら、ちょっとずつしか進まないのだ。
けど、まあ。間に合ったから問題は無い。
そう万全をきして、今日、到着する筈の騎士団を待っているのだが。
「……来ないな」
そう。来ないのだ。
予定では確か、昼過ぎには着く筈だ。
「昨日受け取った連絡では、予定通り進んでいるとあったのですが」
「おかしいですね」グラヴィは首を傾げた。
私の勘違いかとも思ったけれど、そうでは無かったらしい。
それなら、あれか?例年とは違い、うちらみたいなはみ出し者が案内役だからって、舐めてんのだろうか。
だとしたら腹立つな。こっちだって好きでやってるんじゃないっての。仕事なんだから私情を挟むなってのな。
「遅いですね。たいちょーを待たせるとか、……ヤります?」
「ヤらなくて良いから。……何か事故でもあったんだろうよ。まあ、今日はもう仕事も無いし、夕方位までのんびり待つさ」
ちょ、ビビった。心の声が漏れてたのかと思ったわ。
漏れてたとしても、その反応は過激過ぎるから、チラッと見える抜き身部分を納めさせた。
けど、立ったまま待つのも嫌なのは確かだ。
「どっかに座って待つか。近くの店だったら、直ぐに戻れるし」
門近くだったらどこでも良いけど、出来るならテラス席が良い。
そこなら伝令も私達の事が見つけやすいし、此方もまたしかりだからな。
「でしたら、あそこなど如何でしょうか。視界が広く、パラソルで小陰もありますし」
また思考が駄々漏れになっているのかと思った。
けど、グラヴィはこっちの考えてる事を察する能力が高く、こういう事はままある事なので然程驚く事じゃない。
早速グラヴィの示した店に向かおうと足を向けた。けど、
「伝令です!」
慌てた様子の伝令が息を切らせながらも、声を張り上げる。
「今朝、町を出発した騎士団は、突然現れた魔物の集団と交戦中!居合わせた商人を護衛しながらこちらに向かっているそうです」
「魔物の規模は?」
「グリーンウルフの群れですが、通常のものの三倍はあるかと」
「グリーンウルフ?三倍位ならそう手こずる相手でも無いだろ?」
そう問うと、伝令は何か言い難そうに口ごもった。
ひと群れで凡そ二十匹前後だから、六十匹位か。
一体一体はそう強い個体ではないが、奴らは集団で狩りをするのが上手い。
だから、六十匹も集まれば普通の商隊ではひと溜まりも無いだろう。
けど、それは一般人だからだ。
騎士団に居るからには、個人でもある程度戦え、集団での戦いにも慣れている筈だ。
今回来る奴らは五十人だと聞いている。
商隊を護衛するのにいくらか割いたとしても、人頭二匹相手をすると考えて三十人居ればいいのだから、余裕だろうに。
もしかして、それらを相手取る事すら出来ない程ボンクラなのだろうか。
だからあのオッサンは、うちの隊ですら世話出来るだろうと押し付けたんだろうか。
内心でゲッソリしながら、伝令の答えを待った。
「それが、特殊個体、双首ウルフが出現しているそうです!」
「双首だって!?」
恐ろしい物でも聞いたかの様にグラヴィが叫ぶ。
双首ウルフと言えば、通常種のグリーンウルフよりも数倍以上大きいあれか。
しかも、属性魔法まで使って来るようになるんだよな。
けれど巨体そのものよりも、頭も大きくなったからか、知能が上がり統率力や戦闘技術が上がった方が厄介だし面倒だ。
「双首って、ここの騎士でも勝てない奴らは居るから、中央の奴らじゃあ厳しかったみたいだね」
ニヤリと笑うカニスの顔には「まあ、俺達なら楽勝だけど」と書いてあった。
まあ、確かにそうかも知れないけど、口に出して言う事じゃない。
「笑ってないで行くぞ。民間人も居るみたいだから、救護がメインだ。……グラヴィも、いい加減ビビるのは止めて着いて来い!」
カニスの頭を叩いて、グラヴィの肩に手を置いた。
カニスは叩かれたにも関わらず「たいちょーから触ってくれた!」と何故か嬉しそうだし。(これは理解したくない)
グラヴィは驚かれた事に驚きそうになる位大きな声を上げて驚くし。
連れていくのが何だか面倒臭くなってきたものの、一人だと流石に護りきる自信はないから仕方がない。
これが、守りの任務じゃなくて攻めの任務だったら、周りなんか気にせず戦えて楽なんだけど。
なんて、ちょっと溜め息を吐きながら門を走り抜けた。
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