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第三幕・勝手なグルペット(周りの人々)
14・噂
しおりを挟む奇妙な宣言をされてから数日もしない内に、キャロ・ディ・ルーノが目覚めている事。アルベルトがキャロ・ディ・ルーノに挑む様だと噂が広まっていた。
既に精霊持ちであるにも関わらず挑むという事に異を唱えた人は少なく、殆どの人は好意的だった。
リデイラは知らなかったけれど、アルベルトがキャロ・ディ・ルーノに熱を上げているのは有名だった事が幸いしたようだ。
しかし、肝心の挑む相手が精霊院から出てくる気配が無かった。
精霊院は湖の水面に浮いているので、再び眠ってしまった訳ではない。
ならば何故?どうしたら出てくるのかと、アルベルトに期待をする周囲の人々が頭を悩ませていると、別の問題も表れた。
「ねえ、聞いた?また立候補者が増えたみたいよ」
「また?これでもう十八人目だっけ?」
「十九人じゃないの?」
「どっちにしろ、いい度胸してるわよね。アルベルト様がいらっしゃるのに立候補するだなんて」
「ねー」と最後の言葉に同意しながら、目の前を通り過ぎて行く女子生徒を見送った。
「凄いことになってるわね」
「そう、だね」
キャロ・ディ・ルーノと契約を望む者が日に日に増えていく。
フリーの精霊に対し、契約を望む数としてはまだまだ少ない方だけれど、キャロ・ディ・ルーノは他にはない特殊楽器なので妥当な所だろう。
皆、自分が専攻している楽器以外は敬遠するのだ。
けれど、挑戦者が一人だけではなくなってしまったのは事実だ。
「“試しの儀式”になるわね」
「まあ、複数居るのなら妥当だよね。一応、挑戦者全員の演奏を聞いて貰わないと不満が出るから」
挑戦者が同時に複数居る場合、平等に挑戦出来るようにある仕組みが“試しの儀式”だ。
誰かが抜け駆けして挑まないよう、様々な制約がある。
今回の場合は、キャロ・ディ・ルーノが公式にはまだ姿を現していない為、抜け駆けも何もあったものではないけれど。
「“試しの儀式”が公式に発表されたら、流石の彼も出て来ざるを得ないでしょうし」
「まあ、出てくるんじゃないかな。精霊は基本的に、人のお願いを無下には出来ないらしいからね」
基本的にはその筈なので、大勢の人に直接懇願されたら出てくるだろう。
一度は出てきたので、演奏の音以外にも耳を傾ける筈だ。
希望的観測でしかないけれど、殆どの人がそう思っている。
「あら、まるで自分には関係ないとでもいう言い方ね」
普段と変わり様子のリデイラに、ソフィアは首を傾げた。
「だって、私は挑む気はないもの。ソフィアこそどうなの?あまり興味無さそうじゃない?」
「私も挑戦する気はないのよね。だって、似た物に変える位なら兎も角、全く違う楽器ですもの。今まで練習してきたものを捨ててまで音響士になろうとは思わないわ」
「なんだ。ソフィアもそうなんじゃない」
挑戦する気がない事にホッとしたリデイラだったけれど、ソフィアは首を振った。
「けれど、興味がない訳ではないわ。だって、“始まりの精霊”が誰を選ぶかなんて、国を上げての一大イベントじゃない」
まあ、確かに挑む気は無くとも、普通なら多少気になるか。
ある意味、国王よりも名が知れ渡っているモノなのだから。
だけど、とリデイラは内心で頭を振る。
(私は、関わりたくない)
そんなリデイラの内心を知らないソフィアは「きっと、国中から挑戦者が現れるのではないかしら」とどこか楽しげに笑う。
リデイラも「そうかもね」等と曖昧に微笑んでいたけれど、果たしてそれは真実となった。
そんな事を話していた数日後、学園から公式に発表があったのだ。
“本日より一月後、【試しの儀式】を開催する。”と。
精霊はキャロ・ディ・ルーノである事。
詳細は追って報せる。等くらいの簡素な報せだったけれど、国中が沸き立った。
周囲がその話で持ちきりになっている中、リデイラは人知れず溜め息を吐いた。
(そっか、“試しの儀式”を了承したんだ)
それは、キャロ・ディ・ルーノが新たな主を迎える事を望んだ事を意味していた。
リデイラは、いつもそれを望んでいた。
望んでいた、筈なのだ。
けれど、いざ本当にそうなってしまう事がほぼ確定してしまった今、リデイラの胸中は複雑だった。
(オカシイな。ずっと。ずっと、そうなれば良いって思ってたのに)
様々なオモイがない交ぜになった心を隠す様に、リデイラは胸元をギュッと握り締めた。
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