2 / 2
名無しの街
孤独死少女との出会い
しおりを挟む
白雪姫がやって来たのは、
特に有名でも無い『名無しの街』である。
大きな森の隣に佇むその街は、活気が溢れているわけでもなく、また暗いわけでも無い。第2の人生を歩む人々は、街を往復し実に生活を謳歌している。
前世の街とよく似た場所だが、どうやら前世の街とは全く関係が無いようだ。白雪姫は汚れた服装のまま街を歩く。すると、前から歩いてくる少女が見えた。青と白の服装。周りと比べると随分目立つ服装だ。
「白雪姫!」
驚いた顔でこちらに駆け寄る少女。白雪姫は訝しげな顔をする。
「やっぱり、転生したという噂はほんとだったのね!私アリス!」
アリス、と聞いて、白雪姫は驚きの顔を見せる。白雪姫が継母に殺される前の時に、遠い国に住むアリスが誘拐されたと耳にしていたからだ。アリスとは前世で出会った訳では無いが、可愛らしく天然だと噂されていた。それだけしか聞いていなかったのだが、まさか死んでいたとは。
「あ、驚いた?だよね~。私もびっくりしたよ、まさか孤独死するなんてね」
「誘拐されて、そのまま死んだのね?」
「うん、まあそういうことかな。っていうか、白雪姫、私も噂を聞いたよ!この世界に転生したって!」
「ええ。継母に殺されてしまってね。目覚めたらこの世界に来ていたの」
顔を歪ませる白雪姫。彼女にとっては、継母のことの記憶など捨てたいものだ。楽しい思い出なんてありやしない。散々に嫉妬をぶつけられ-----挙句の果てに殺される。思えば前世の人生はめちゃくちゃなものだった。
「よーこそ『カーニバル』へ!だね白雪姫!」
俯いたままで白雪姫が居ると、アリスが大声を出して歓迎した。楽しい場所だとでも言うように、彼女は輝く笑顔を見せていた。白雪姫はそれを見て、呆れの溜息を零す。
「はぁ。何処がようこそ?ここは悲劇の世界なんでしょう?何でも無残に人生を終えた者達が集う世界だとか…。あまり喜ばしいものでは無い気がするけど」
「そうかな?確かにここは悲劇の世界だけど、縛られるものは何も無いんだって。例え誰かを殺しても、何かを奪っても、罪は問われない。だからこその『悲劇』なのかもね!だっていつ自分が殺されてもおかしくない環境だもの」
楽しそうに跳ねるアリス。それを聞いた白雪姫は、一気に警戒心を持つようになった。例え誰が何をしても、罪は問われない。この世界にはきっと、罪を裁く者が居ないということだろう。この世界の環境では、誰がいつ、誰かに何をされてもおかしくない。
それは白雪姫にとって大きな不安となったが、同時に大きな希望にもなった。
何故なら-----
「そう。なら、私が継母を殺したって、何の罪にもならないのね」
白雪姫の復讐も、赦されるものであるから。
特に有名でも無い『名無しの街』である。
大きな森の隣に佇むその街は、活気が溢れているわけでもなく、また暗いわけでも無い。第2の人生を歩む人々は、街を往復し実に生活を謳歌している。
前世の街とよく似た場所だが、どうやら前世の街とは全く関係が無いようだ。白雪姫は汚れた服装のまま街を歩く。すると、前から歩いてくる少女が見えた。青と白の服装。周りと比べると随分目立つ服装だ。
「白雪姫!」
驚いた顔でこちらに駆け寄る少女。白雪姫は訝しげな顔をする。
「やっぱり、転生したという噂はほんとだったのね!私アリス!」
アリス、と聞いて、白雪姫は驚きの顔を見せる。白雪姫が継母に殺される前の時に、遠い国に住むアリスが誘拐されたと耳にしていたからだ。アリスとは前世で出会った訳では無いが、可愛らしく天然だと噂されていた。それだけしか聞いていなかったのだが、まさか死んでいたとは。
「あ、驚いた?だよね~。私もびっくりしたよ、まさか孤独死するなんてね」
「誘拐されて、そのまま死んだのね?」
「うん、まあそういうことかな。っていうか、白雪姫、私も噂を聞いたよ!この世界に転生したって!」
「ええ。継母に殺されてしまってね。目覚めたらこの世界に来ていたの」
顔を歪ませる白雪姫。彼女にとっては、継母のことの記憶など捨てたいものだ。楽しい思い出なんてありやしない。散々に嫉妬をぶつけられ-----挙句の果てに殺される。思えば前世の人生はめちゃくちゃなものだった。
「よーこそ『カーニバル』へ!だね白雪姫!」
俯いたままで白雪姫が居ると、アリスが大声を出して歓迎した。楽しい場所だとでも言うように、彼女は輝く笑顔を見せていた。白雪姫はそれを見て、呆れの溜息を零す。
「はぁ。何処がようこそ?ここは悲劇の世界なんでしょう?何でも無残に人生を終えた者達が集う世界だとか…。あまり喜ばしいものでは無い気がするけど」
「そうかな?確かにここは悲劇の世界だけど、縛られるものは何も無いんだって。例え誰かを殺しても、何かを奪っても、罪は問われない。だからこその『悲劇』なのかもね!だっていつ自分が殺されてもおかしくない環境だもの」
楽しそうに跳ねるアリス。それを聞いた白雪姫は、一気に警戒心を持つようになった。例え誰が何をしても、罪は問われない。この世界にはきっと、罪を裁く者が居ないということだろう。この世界の環境では、誰がいつ、誰かに何をされてもおかしくない。
それは白雪姫にとって大きな不安となったが、同時に大きな希望にもなった。
何故なら-----
「そう。なら、私が継母を殺したって、何の罪にもならないのね」
白雪姫の復讐も、赦されるものであるから。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ねえ、今どんな気持ち?
かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた
彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。
でも、あなたは真実を知らないみたいね
ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
面白いです!
このストーリーの感じも新しくて好きです。
これからも頑張ってください!!
応援してます(*^^*)
ありがとうございます!
更新速度、多分遅いですが……
頑張っていきますね!