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1.間違えた告白
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「ずっと前からお慕いしていました。よろしければ私と結婚を前提にお付き合いしてください!」
告白。
それは貴族令嬢にとって叶うことのない憧れで、恋物語の中で行われる男女のやり取り。
そんな浮ついた言葉が、皇宮の中庭で響いた。
決して大きな声ではない。だけど、精いっぱい勇気を振り絞って口から出した言葉だから、目の前にいる人の耳にはきっと届いたはずだ。
緊張から高鳴る心臓の音が、身体の内側から響いてきて、彼にも聞かれてしまいそうだ。
告白しておいてこんなこと言うのはどうかと思うけど、返答は期待していなかった。
やんわりと断られるか、もしかしたらあのひんやりとした青色の瞳でにらまれるか。そのどちらかもしれないと思っていた。
だから顔を上げずに、私はただ時が過ぎるのを待っていた。
それなのに――。
「――お慕いしていた、だと?」
響いた低音。それが予想と違っていることに、驚いて顔を上げて、私はすぐに後悔した。
漆黒の黒髪に、金色の瞳をした男がいた。
ひっと、喉奥で悲鳴を噛み殺す。いま悲鳴を上げれば、佩いている剣で喉を掻き切られるかもしれない。そういうことは平気でやってのける男だ。
金色の瞳。この帝国の象徴にして、この世界の何よりも尊い色。
アルコンスイエル帝国の、皇族である証。
金色の瞳の皇族は、現在この帝国にひとりしかいない。
アルベリクス・ドレ・アルコンスイエル。
目の前にいるこの人だ。
金色の瞳で私を睥睨した皇帝は、フッと口の端に笑みを刻んだ。
ひっ、とまた悲鳴が出そうになるのを堪える。
「ふ、おもしろい。いいだろう。私の、結婚を前提とした恋人にしてやろう」
な、な、なんでっ。
なんで――よりによって、間違えて皇帝陛下に告白してしまったの、私!
自分の愚かさと、いますぐ逃げだしたい気持ち、それから怖ろしい金色の瞳。
淑女の笑みを張り付けた私は、
「あ、ありがとうございますー」
と、震えた声で答えることしかできなかった。
告白。
それは貴族令嬢にとって叶うことのない憧れで、恋物語の中で行われる男女のやり取り。
そんな浮ついた言葉が、皇宮の中庭で響いた。
決して大きな声ではない。だけど、精いっぱい勇気を振り絞って口から出した言葉だから、目の前にいる人の耳にはきっと届いたはずだ。
緊張から高鳴る心臓の音が、身体の内側から響いてきて、彼にも聞かれてしまいそうだ。
告白しておいてこんなこと言うのはどうかと思うけど、返答は期待していなかった。
やんわりと断られるか、もしかしたらあのひんやりとした青色の瞳でにらまれるか。そのどちらかもしれないと思っていた。
だから顔を上げずに、私はただ時が過ぎるのを待っていた。
それなのに――。
「――お慕いしていた、だと?」
響いた低音。それが予想と違っていることに、驚いて顔を上げて、私はすぐに後悔した。
漆黒の黒髪に、金色の瞳をした男がいた。
ひっと、喉奥で悲鳴を噛み殺す。いま悲鳴を上げれば、佩いている剣で喉を掻き切られるかもしれない。そういうことは平気でやってのける男だ。
金色の瞳。この帝国の象徴にして、この世界の何よりも尊い色。
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目の前にいるこの人だ。
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ひっ、とまた悲鳴が出そうになるのを堪える。
「ふ、おもしろい。いいだろう。私の、結婚を前提とした恋人にしてやろう」
な、な、なんでっ。
なんで――よりによって、間違えて皇帝陛下に告白してしまったの、私!
自分の愚かさと、いますぐ逃げだしたい気持ち、それから怖ろしい金色の瞳。
淑女の笑みを張り付けた私は、
「あ、ありがとうございますー」
と、震えた声で答えることしかできなかった。
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