12 / 30
12 非情な掟
しおりを挟む
アレンはそっとケイに近づき声をかける。
「あの、ありがとう」
「いいよ、礼なんて。あいつらがやり過ぎなんだから。こっちこそごめん」
互いに軽く微笑み合った。そこへ解放されたティムたちが駆け寄ってくる。
「アレーン! 大丈夫だった?」
ティムがそう言ってアレンの身体をチェックする。アレンが心配するティムを見て微笑みながら言う。
「ありがとう。大丈夫だよ。ケイさんのおかげで」
クレイグが驚いてケイを見る。
「えっ、こいつのせいじゃねえのか?」
「違うよ。ケイさんが村のみんなを説得してくれたんだよ。みんなが無事に出れたのもケイさんのおかげなんだよ」
アレンがみんなに説明した。クレイグがケイを見て言う。
「そうか……ありがとう」
「もう、礼はいいから」
ケイが言う。
「若いくせに力持ってんだな」
ブラッドがケイに言った。
「まあね。今だけね……」
「今だけ――」
ブラッドが聞こうとしたのをケイが遮り話しだす。
「そんなこといいから、さっさと行きなよ。急いで馬で駆けたら隣街まで今日中に着くかもよ」
そう言ってケイは4人に手を振り、家に帰っていった。4人は馬に荷物をのせ、出発の準備をする。荷物を積みながらティムがつぶやく。
「いい人だったね。美人でいい人って最強だね」
「そうだな」
クレイグがぼそっとつぶやいた。ティムがクレイグを指さして言う。
「あ! 認めた!」
「あっ、ちがっ……釣られただけだ!」
クレイグがティムの指を払いのけながら言う。ティムとアレンが慌てるクレイグを見て笑っているとき、クレイグの近くを二人の村人が話しながら通り過ぎていく。
「ケイの奴、あんな偉そうに村長に言うのは問題だよな」
「もうすぐ死ぬから大目に見てんだろうな。最後のわがままってやつだな」
話が聞こえたクレイグは手を止めてティムに言う。
「悪い、俺のも頼む! すぐ戻るから!」
クレイグはティムの返事も聞かずに走りだした。
「えっ⁉ ちょっ、ちょっとどこ行くのー⁉」
ティムが呼び止めようとするが、振り返ることなく行ってしまった。アレンとブラッドは不思議そうに顔を見合わせる。
ケイの家の前で息を整えるクレイグ。そしてドアを叩き、中に入る。ケイは食事をしている。
「何? まだ何か用?」
「おまえ病気なのか?」
「はあ?」
「この村、小せえけど医者はいんのか? ああ見えてもアレンは医者の卵だ。どっか悪いなら診てもらえよ」
ケイは黙って食事をしながら壁にかけてある白装束に目をやる。
「おい! 聞いてんのかよ! こっちは真面目に話してんだよ。このまま死なれたら後味悪いんだよ」
ケイは食事を終え、食器を片付けながら言う。
「病気じゃないから安心しな。何を聞いたか知んないけど、あんたたちには関係ないから」
「病気じゃねえなら何で死ぬんだよ」
ケイは大きなため息をつく。
「しつこい奴だな。首突っ込むなって言ってんだよ」
「二度も助けてくれた奴が死にそうなときにほっとけるわけねえだろ! 理由くらい教えてくれたっていいだろ」
ケイはクレイグに背を向けたまま食器を洗っている。そしてぼそっとつぶやく。
「あの大蛇に喰われんの」
「はあ? 何でだよ」
「私、生け贄だから」
「はあ⁉ 何だよそれ。意味わかんねえ!」
ケイが振り返ってクレイグを見る。
「だから、あの大蛇のエサになるってこと」
「そこじゃねえよ。何で黙って喰われようとしてんだよ!」
「それが掟だから。そうしないとこの村が滅んじゃうからさ」
「滅べよ、そんな村!」
「ええ⁉」
「おまえが犠牲にならなきゃ繫栄できねえような村は滅ぶ運命なんだよ」
「そんな勝手な……。私が生け贄にならなかったら、あの蛇が村に何するかわかんないし」
「そんな危ねえとこ住まなきゃいいだろ! 他にも住めるとこあんだろ」
ケイが黙り込む。
「考えるのは後にしろ。とにかく俺らと一緒に来い!」
クレイグがケイの腕をつかみ、家を出る。クレイグはケイの腕を引き、走りだす。ケイはクレイグの横顔を見つめていた。
「あの、ありがとう」
「いいよ、礼なんて。あいつらがやり過ぎなんだから。こっちこそごめん」
互いに軽く微笑み合った。そこへ解放されたティムたちが駆け寄ってくる。
「アレーン! 大丈夫だった?」
ティムがそう言ってアレンの身体をチェックする。アレンが心配するティムを見て微笑みながら言う。
「ありがとう。大丈夫だよ。ケイさんのおかげで」
クレイグが驚いてケイを見る。
「えっ、こいつのせいじゃねえのか?」
「違うよ。ケイさんが村のみんなを説得してくれたんだよ。みんなが無事に出れたのもケイさんのおかげなんだよ」
アレンがみんなに説明した。クレイグがケイを見て言う。
「そうか……ありがとう」
「もう、礼はいいから」
ケイが言う。
「若いくせに力持ってんだな」
ブラッドがケイに言った。
「まあね。今だけね……」
「今だけ――」
ブラッドが聞こうとしたのをケイが遮り話しだす。
「そんなこといいから、さっさと行きなよ。急いで馬で駆けたら隣街まで今日中に着くかもよ」
そう言ってケイは4人に手を振り、家に帰っていった。4人は馬に荷物をのせ、出発の準備をする。荷物を積みながらティムがつぶやく。
「いい人だったね。美人でいい人って最強だね」
「そうだな」
クレイグがぼそっとつぶやいた。ティムがクレイグを指さして言う。
「あ! 認めた!」
「あっ、ちがっ……釣られただけだ!」
クレイグがティムの指を払いのけながら言う。ティムとアレンが慌てるクレイグを見て笑っているとき、クレイグの近くを二人の村人が話しながら通り過ぎていく。
「ケイの奴、あんな偉そうに村長に言うのは問題だよな」
「もうすぐ死ぬから大目に見てんだろうな。最後のわがままってやつだな」
話が聞こえたクレイグは手を止めてティムに言う。
「悪い、俺のも頼む! すぐ戻るから!」
クレイグはティムの返事も聞かずに走りだした。
「えっ⁉ ちょっ、ちょっとどこ行くのー⁉」
ティムが呼び止めようとするが、振り返ることなく行ってしまった。アレンとブラッドは不思議そうに顔を見合わせる。
ケイの家の前で息を整えるクレイグ。そしてドアを叩き、中に入る。ケイは食事をしている。
「何? まだ何か用?」
「おまえ病気なのか?」
「はあ?」
「この村、小せえけど医者はいんのか? ああ見えてもアレンは医者の卵だ。どっか悪いなら診てもらえよ」
ケイは黙って食事をしながら壁にかけてある白装束に目をやる。
「おい! 聞いてんのかよ! こっちは真面目に話してんだよ。このまま死なれたら後味悪いんだよ」
ケイは食事を終え、食器を片付けながら言う。
「病気じゃないから安心しな。何を聞いたか知んないけど、あんたたちには関係ないから」
「病気じゃねえなら何で死ぬんだよ」
ケイは大きなため息をつく。
「しつこい奴だな。首突っ込むなって言ってんだよ」
「二度も助けてくれた奴が死にそうなときにほっとけるわけねえだろ! 理由くらい教えてくれたっていいだろ」
ケイはクレイグに背を向けたまま食器を洗っている。そしてぼそっとつぶやく。
「あの大蛇に喰われんの」
「はあ? 何でだよ」
「私、生け贄だから」
「はあ⁉ 何だよそれ。意味わかんねえ!」
ケイが振り返ってクレイグを見る。
「だから、あの大蛇のエサになるってこと」
「そこじゃねえよ。何で黙って喰われようとしてんだよ!」
「それが掟だから。そうしないとこの村が滅んじゃうからさ」
「滅べよ、そんな村!」
「ええ⁉」
「おまえが犠牲にならなきゃ繫栄できねえような村は滅ぶ運命なんだよ」
「そんな勝手な……。私が生け贄にならなかったら、あの蛇が村に何するかわかんないし」
「そんな危ねえとこ住まなきゃいいだろ! 他にも住めるとこあんだろ」
ケイが黙り込む。
「考えるのは後にしろ。とにかく俺らと一緒に来い!」
クレイグがケイの腕をつかみ、家を出る。クレイグはケイの腕を引き、走りだす。ケイはクレイグの横顔を見つめていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる