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14 友達のこと
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ケイが歩きながらアレンに話しかける。
「いい奴だね」
「え? あ、うん。いい子だった」
「あんただよ」
「え? 俺? そんなことないよ。感謝の気持ちっていうか……こんなことしかできないから」
そう言って、アレンはティムたちの元へ駆け寄る。
「お待たせ! 行こうか」
「次はメグレスの街だな」
ブラッドがそう言うと、アレンが思い出したように言う。
「あ、ケイの馬どうしよう」
「昨日は慌てて逃げてきたから馬忘れちゃったね。一頭くらい頂戴すればよかったね」
ティムが残念そうに言い、それを聞いたケイが言う。
「逃げたことでも迷惑かけてるからこれ以上はかけらんないよ。後ろに乗る」
「長旅になるぞ」
ブラッドが言った。ケイは自信満々に答える。
「平気。体は丈夫だから」
クレイグが話に入る。
「しょーがねえな。俺の後ろに乗せてやるよ」
「いい。アレン乗せて」
ケイはすぐさま断り、アレンに言った。
「え? いいけど。俺よりクレイグの方が上手いよ?」
「いいの。下手だったら私が代わる」
「そっか、わかった」
そうしてケイはアレンの後ろに乗ることになり、クレイグはムッとしながら自分の馬に乗るのだった。ティムはその様子を心配そうに見ていた。みんなが乗馬したことを確認したブラッドが合図を出し、4人が一斉に駆けだした。
街を出た5人は見晴らしの良い草原を駆けていた。ケイはアレンの腰に捕まり、後ろから声をかける。
「ねえ、ちょっと聞いていい?」
「ん?」
アレンが少し振り向き、ケイは話を続ける。
「助けたい友達って好きな人?」
「え⁉ あ、えっ……えっと……」
ケイはクスっと笑う。
「わかりやす。そっか、そりゃ必死になるわけだ」
「すごく絵の上手な人なんだ。その絵を見てたら不思議と癒されて、優しい気持ちになれた」
「そっか、大事な人がいるっていいよね」
「ケイにもいたんじゃない? 半分強引に連れてきといて今更だけど」
ケイが黙り込んでしまい、アレンが心配そうに声をかける。
「ケイ? やっぱり――」
「ううん。今はいない。みんな嫌い」
帰す言葉が思いつかずアレンが黙ってしまう。そしてケイが話を続ける。
「でも私にもいたんだ。カーラっていう幼なじみの親友が。もう死んだけど」
「それって……」
「そう、生け贄。それからずっと恨んでた。全員殺してやろうかとも考えた」
「そっか……」
「でもできなかった。カーラが命をかけて守ろうとした奴ら……殺せないじゃん」
そう言ってケイはアレンの背中に額を寄せ、涙を流した。アレンは黙ったまま前を見つめている。しばらくするとケイは頭を上げ、軽く鼻をすすり話しだす。
「ごめん。忘れて。そう言えば、あんた医者の卵だって聞いたけど、何で剣なんて使えんの?」
「ああ。えっと……子供の頃、剣道習ってたのとみんなでよくチャンバラごっこして遊んだからかな」
「へえー仲良いんだ」
「うん。おさな……」
アレンは言いかけて口ごもる。
「幼なじみなんだろ? 気遣うなってば」
「あ、うん。ごめん」
ケイがアレンの背中を軽く叩いて言う。
「次、このことで謝ったら蹴り入れてやる」
「わかった。もう言いません」
ケイはフッと笑った。それからしばらく走り続けると、道の脇に馬車が止まっているのが見えてくる。アレンが馬車に視線を向けたとき、馬車の陰から男が飛び出してきた。
「おーい! 止まってくれー!」
男が大きく手を振り叫んでいる。アレンは男の近くまでいき止まり、それに気づいた3人も馬を止める。
「どうしました?」
アレンが男に声をかける。男は額に汗をかき疲れた様子で話しだした。
「馬車のタイヤが外れてしまって動けないんです。助けてくれませんか?」
ケイが馬を降りて、ティムたちに向かって言う。
「タイヤが外れたらしい。人手がいるからあんたたちも手貸しな!」
4人も馬を降りて、男のそばに集まる。男は深々と頭を下げ、礼を言う。
「ありがとうございます」
そして馬車に向かって声をかける。
「おまえたち、馬車を直すから一度外に出なさい」
その声を聞き馬車の中から数人の若い女が降りてくる。皆、シルクのガウンを羽織り、美しい女ばかりだ。それを見たクレイグが男に声をかける。
「おっさん、そんなに美人乗せてどこ行くんだ?」
「仕事だよ。メグレスの街にね。彼女たちは踊り子なんだ」
女たちは笑顔でクレイグに手を振ったり、ウインクをする。クレイグは軽く手を上げ、笑みを返す。
「なるほど、美人なわけだ」
馬車のそばからブラッドがクレイグを呼びつける。
「クレイグ! 何してんだ、早く来い!」
クレイグは小走りで皆の元へと駆けつける。アレンたちは協力して馬車を修繕する。その間、女たちは椅子に座り、お茶を飲みながら様子を見ている。時折、クレイグたちに笑顔で手を振り応援している。修繕が終わり、クレイグが男に声をかける。
「これで大丈夫だろ」
「ありがとうございます」
「よかった、上手く直って」
ティムが笑顔で言う。男が聞く。
「あなたたちは旅のお方ですか? どちらまで行かれるのですか?」
「とりあえずはメグレスに向かってます。最終はもっと先ですけど」
アレンが答える。
「そうですか。もし、お急ぎでなければお茶でもいかがですか? お礼もしたいので」
それを聞いたクレイグが話に入ってくる。
「ご馳走になろうぜ。休憩もかねてさ」
アレンは皆の顔を見て言う。
「どうする?」
「僕はそろそろ休みたいって思ってたよ」
ティムが答える。アレンがブラッドを見る。
「おまえに任せる」
ブラッドが言った。アレンは男に言う。
「じゃあ、一杯だけ」
「ぜひぜひ」
男は笑顔で準備を始めた。
「いい奴だね」
「え? あ、うん。いい子だった」
「あんただよ」
「え? 俺? そんなことないよ。感謝の気持ちっていうか……こんなことしかできないから」
そう言って、アレンはティムたちの元へ駆け寄る。
「お待たせ! 行こうか」
「次はメグレスの街だな」
ブラッドがそう言うと、アレンが思い出したように言う。
「あ、ケイの馬どうしよう」
「昨日は慌てて逃げてきたから馬忘れちゃったね。一頭くらい頂戴すればよかったね」
ティムが残念そうに言い、それを聞いたケイが言う。
「逃げたことでも迷惑かけてるからこれ以上はかけらんないよ。後ろに乗る」
「長旅になるぞ」
ブラッドが言った。ケイは自信満々に答える。
「平気。体は丈夫だから」
クレイグが話に入る。
「しょーがねえな。俺の後ろに乗せてやるよ」
「いい。アレン乗せて」
ケイはすぐさま断り、アレンに言った。
「え? いいけど。俺よりクレイグの方が上手いよ?」
「いいの。下手だったら私が代わる」
「そっか、わかった」
そうしてケイはアレンの後ろに乗ることになり、クレイグはムッとしながら自分の馬に乗るのだった。ティムはその様子を心配そうに見ていた。みんなが乗馬したことを確認したブラッドが合図を出し、4人が一斉に駆けだした。
街を出た5人は見晴らしの良い草原を駆けていた。ケイはアレンの腰に捕まり、後ろから声をかける。
「ねえ、ちょっと聞いていい?」
「ん?」
アレンが少し振り向き、ケイは話を続ける。
「助けたい友達って好きな人?」
「え⁉ あ、えっ……えっと……」
ケイはクスっと笑う。
「わかりやす。そっか、そりゃ必死になるわけだ」
「すごく絵の上手な人なんだ。その絵を見てたら不思議と癒されて、優しい気持ちになれた」
「そっか、大事な人がいるっていいよね」
「ケイにもいたんじゃない? 半分強引に連れてきといて今更だけど」
ケイが黙り込んでしまい、アレンが心配そうに声をかける。
「ケイ? やっぱり――」
「ううん。今はいない。みんな嫌い」
帰す言葉が思いつかずアレンが黙ってしまう。そしてケイが話を続ける。
「でも私にもいたんだ。カーラっていう幼なじみの親友が。もう死んだけど」
「それって……」
「そう、生け贄。それからずっと恨んでた。全員殺してやろうかとも考えた」
「そっか……」
「でもできなかった。カーラが命をかけて守ろうとした奴ら……殺せないじゃん」
そう言ってケイはアレンの背中に額を寄せ、涙を流した。アレンは黙ったまま前を見つめている。しばらくするとケイは頭を上げ、軽く鼻をすすり話しだす。
「ごめん。忘れて。そう言えば、あんた医者の卵だって聞いたけど、何で剣なんて使えんの?」
「ああ。えっと……子供の頃、剣道習ってたのとみんなでよくチャンバラごっこして遊んだからかな」
「へえー仲良いんだ」
「うん。おさな……」
アレンは言いかけて口ごもる。
「幼なじみなんだろ? 気遣うなってば」
「あ、うん。ごめん」
ケイがアレンの背中を軽く叩いて言う。
「次、このことで謝ったら蹴り入れてやる」
「わかった。もう言いません」
ケイはフッと笑った。それからしばらく走り続けると、道の脇に馬車が止まっているのが見えてくる。アレンが馬車に視線を向けたとき、馬車の陰から男が飛び出してきた。
「おーい! 止まってくれー!」
男が大きく手を振り叫んでいる。アレンは男の近くまでいき止まり、それに気づいた3人も馬を止める。
「どうしました?」
アレンが男に声をかける。男は額に汗をかき疲れた様子で話しだした。
「馬車のタイヤが外れてしまって動けないんです。助けてくれませんか?」
ケイが馬を降りて、ティムたちに向かって言う。
「タイヤが外れたらしい。人手がいるからあんたたちも手貸しな!」
4人も馬を降りて、男のそばに集まる。男は深々と頭を下げ、礼を言う。
「ありがとうございます」
そして馬車に向かって声をかける。
「おまえたち、馬車を直すから一度外に出なさい」
その声を聞き馬車の中から数人の若い女が降りてくる。皆、シルクのガウンを羽織り、美しい女ばかりだ。それを見たクレイグが男に声をかける。
「おっさん、そんなに美人乗せてどこ行くんだ?」
「仕事だよ。メグレスの街にね。彼女たちは踊り子なんだ」
女たちは笑顔でクレイグに手を振ったり、ウインクをする。クレイグは軽く手を上げ、笑みを返す。
「なるほど、美人なわけだ」
馬車のそばからブラッドがクレイグを呼びつける。
「クレイグ! 何してんだ、早く来い!」
クレイグは小走りで皆の元へと駆けつける。アレンたちは協力して馬車を修繕する。その間、女たちは椅子に座り、お茶を飲みながら様子を見ている。時折、クレイグたちに笑顔で手を振り応援している。修繕が終わり、クレイグが男に声をかける。
「これで大丈夫だろ」
「ありがとうございます」
「よかった、上手く直って」
ティムが笑顔で言う。男が聞く。
「あなたたちは旅のお方ですか? どちらまで行かれるのですか?」
「とりあえずはメグレスに向かってます。最終はもっと先ですけど」
アレンが答える。
「そうですか。もし、お急ぎでなければお茶でもいかがですか? お礼もしたいので」
それを聞いたクレイグが話に入ってくる。
「ご馳走になろうぜ。休憩もかねてさ」
アレンは皆の顔を見て言う。
「どうする?」
「僕はそろそろ休みたいって思ってたよ」
ティムが答える。アレンがブラッドを見る。
「おまえに任せる」
ブラッドが言った。アレンは男に言う。
「じゃあ、一杯だけ」
「ぜひぜひ」
男は笑顔で準備を始めた。
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