四銃士

黄坂美々

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27 弔いの盃

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 ゲルの中で3人はベッドに腰かけてゆっくりとくつろいでいた。しかし、アレンはどこか浮かない顔をしている。クレイグが声をかける。

「何だよ。辛気臭え顔して」
「ブラッドのことが気になるんでしょ?」

 ティムが言った。アレンは頷いて言う。

「うん。ほんとに大丈夫かなって」
「考えても仕方ないだろ。あいつは言い出したら聞かねえ奴だ。もう気にすんな」

 クレイグが言った。アレンが不満そうにしているのを見てティムが言う。

「僕はアレンが気になるなら戻ってもいいと思うよ。月の花の件が一段落したらだけどね」
「はあ⁉ ブラッドにキレられるだけだぞ。すぐには治らねえって言ってたじゃねえか」

 クレイグが言う。

「それでもやっぱり怪我人を置き去りは気が進まないよ。きっと孤独だと思う」

 アレンが心配そうに言った。

「あいつが寂しがるタイプかよ」

 クレイグがつぶやく。するとティムが突然明るく切りだす。

「いいこと考えた! 荷馬車を使えばいいんだ!」
「それだ! それならみんなで行ける!」

 アレンが笑顔で言った。喜ぶ二人を見て、クレイグが言う。

「好きにしろ。もう何も言わねえよ。戻ってブラッドにキレられろ」
「おやすみ!」

 アレンはそう言って笑顔で布団に潜り込んだ。

「僕も早く寝よ。おやすみ」

 ティムも布団に入る。

「遠足前のガキかよ。早く寝たって明日は早く来ねえぞ」

 クレイグが二人に向かって言った。ティムが布団から顔を出してクレイグに言う。

「クレイグも早く寝るんだよ。アレンのあの様子じゃ明日は5時くらいに出発かもよ」
「バカか! 何はしゃいでんだよ。そんな早朝お断りだ」

 クレイグはそう言い捨てて外へと出ていく。


 外では焚火を囲むように人々が集まって酒を飲んでいるのが見えた。クレイグは近づいて様子を見ていた。すると数人のうつむいた女に周囲の人々が代わる代わる酒を注いで話しかけているのがわかった。クレイグは静かにうつむいた女の隣に腰を下ろして話しかける。

「弔いか? 俺も混ぜてくれ」

 老婆がクレイグに酒瓶とグラスを手渡して言う。

「皆、身内を今日亡くした子たちだ。この子たちが酔いつぶれるまで飲み明かして弔うんだよ。あんたにできるかい? 先につぶれるような男はいらないよ」
「任せろ。酒の勝負で女に負けるようなダセえことはしねえよ」
「よく言った。ここの女は強い。気合入れて弔っとくれ」

 老婆はクレイグの背中を軽く叩いて言った。クレイグは隣の女に静かに酒を注ぐ。女は顔を上げてクレイグを見る。

「あら、旅のお方じゃない。優しいのね」
「美人が泣いてたらもったいないと思ってな」

 女はクスリと笑って言う。

「人妻よ?」
「未亡人だろ?」

 女はクレイグの肩に寄りかかり、静かに目を閉じる。


 そして翌朝。ティムとアレンがベッドに座り、寝ているクレイグを見て話している。

「やっぱり起きないね」

 ティムがつぶやく。

「昨日も遅くまで飲んでたのかな」

 アレンがため息をつく。

「起きてるか? 入るぞ?」

 外から男がアレンたちに問いかけてくる。

「どうぞ」

 アレンが答えると、男が顔を覗かせて言う。

「朝食ができたぞ。一緒にどうだ?」
「あ、すみません。すぐに起こします」

 アレンがそう言ってクレイグの元へ行こうとすると、男が止める。

「あー、その兄ちゃんは寝かせてやりな。朝方まで飲んでたんだ。起きやしねえよ」
「ええ⁉ あんなに早く寝ろって言ったのに!」

 ティムが驚く。アレンが困った様子で言う。

「昼頃まで起きないかな……」
「朝食終わったら叩き起こそ!」

 ティムはそう言ってゲルを出る。アレンも後をついて行く。男は案内しながら怒る二人を見て言う。

「許してやってくれよ。俺はあの兄ちゃんの優しさ好きだけどな」
「優しさ?」

 アレンが聞く。

「知らねえのか? 昨日、身内を亡くした者を集めて弔いの会をしてたんだ。そこにあの兄ちゃんが参加してくれたんだよ」
「クレイグが?」

 ティムも不思議そうに聞く。

「ああ。旦那を亡くした女に寄り添って朝まで慰めていたよ」
「そうだったんですか」

 アレンが言った。男は話を続ける。

「顔も知らない者のために心を痛めてくれて優しい奴だよ」

 ティムが小声でアレンに言う。

「絶対、未亡人口説きたかっただけだよ」

 アレンは苦笑いしながら小声で返す。

「クレイグなりの優しさかもよ」

 男は大きなテーブルのそばで立ち止まり、振り返って二人に言う。

「さあ、召し上がれ」

 そう言って男が手を差し出したテーブルの上にはたくさんの料理が並んでいた。豚の丸焼き、焼き鳥、野菜たっぷりのスープ、フルーツの盛り合わせなどテーブルいっぱいに置かれている。アレンたちは笑顔で席につき食べ始めるのだった。
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