29 / 30
29 約束の地へ
しおりを挟む
男がケイにゆっくり近づきながら話しかける。
「ほんとは怖いんだろ? ごめんなさいって言ってみろ。そしたら優しくしてやるぞ?」
ケイは鼻で笑って言う。
「あんたこそ怖くてそれ以上近づけないんだろ? 死にたいなら来なよ」
男は勢いよくケイに襲いかかる。しかしケイが男のすねを蹴り、男は痛みで顔をしかめる。その隙にケイは男を背後から押さえつけ、手錠の鎖で男の首を絞めつける。男は苦しさで顔を歪ませ、声を絞り出すように話す。
「や……めろ。わかった……俺が、悪――」
「もう遅い。私はね、あんたみたいな奴らが大嫌いなんだよ。さっさと死にな」
ケイは見下すように冷たい視線で言い捨て、男の首を強く絞め上げる。しばらくすると男はぐったりとし動かなくなった。ケイは男から鍵を取り、手錠を外した。そして男を足で隅に押し退けて牢を出る。ケイが床に落ちていた松明を拾おうとしたとき、頭目の男が部下を数人連れて近づいてきた。
「どこへ行く。中へ戻れ」
ケイは男たちをにらみながら後ずさりして牢に戻る。頭目は中で倒れている男に目をやる。
「暴れ馬は困ったもんだな。人質は人質らしく大人しくしてろ」
頭目はそう言って、ケイの頬を強く叩いた。その勢いでケイは床に倒れこむ。
アリオト砂漠。ブラッドとシビルが馬で駆けている。シビルが声をかける。
「何か策はあるの?」
「その場で考える」
「死んだらだめよ」
ブラッドは正面を見たまま無言で駆けている。
「やっぱり。死ぬ気ね?」
ブラッドは何も答えない。
「あーあ、アイリスが可哀想。アレンたちもきっと泣くでしょ――」
「うるさいな。黙って走れないのか」
「無言で走ってるだけってつまらないじゃない。盛り上げてあげようと思って」
「だとしたらセンスゼロだな」
「もうすぐね」
「死にたくなかったら今のうちに帰るんだな」
今度はシビルが黙って遠くを見つめ、少し間をおいて言う。
「死ぬときは一緒よ」
「誰だよ」
しばらく走ると大きな岩が見えてくる。ドラゴンストーンだ。そのそばに5人の男が立っている。
「あれか」
ブラッドは男たちの前で馬から降りる。賊の男が声をかける。
「ちゃんと逃げずに来たみたいだな」
ブラッドは周囲を軽く見渡して言う。
「ケイはどこだ。俺が来たら返すはずだろ」
「そんなこと言ったか? 最近、記憶力が悪くなってなあ」
男が笑みを浮かべながら言う。
「最近? どうせ元からバカだろ。バカ面5つも並べやがって」
「いい度胸だな。この人数を前にして」
別の賊の男が言う。
「いくら仲間と一緒でもあの距離じゃ何の役に立つんだ?」
ブラッドが男の視線を追って振り返ると、50メートル以上離れたところでシビルが馬に乗ったままじっと見つめている。ブラッドは呆れた表情を浮かべ、ため息をついてつぶやく。
「何が死ぬときは一緒だ」
シビルは笑顔で手を振っている。ブラッドは男たちの方へと視線を戻し、鋭い目つきで言う。
「おまえらごとき一人で十分だ」
薄ら笑いを浮かべていた賊の男たちの表情が険しく変わる。
「なめやがって……」
賊の男たちが腰の剣を抜き、ブラッドに斬りかかる。ブラッドは次々と襲いかかる男たちをかわしながら、一人ずつ斬っていく。シビルはその様子を静かに見守っている。5人の賊の男たちは血を流して倒れている。ブラッドは返り血を浴びているものの無傷だ。ブラッドは乱れる呼吸を整えて賊の男に近づき、のど元に剣を突きつけて言う。
「ケイはどこだ」
男はブラッドを見上げながら震えた声で言う。
「し、死んでも言うか」
「じゃあ死ね」
ブラッドが剣を振り上げる。
「あー! わかった! 言う!」
男が慌てて叫ぶ。ブラッドは動きを止め、じっと男を見つめる。
「ここから真っ直ぐ行って、しばらくしたら洞窟が見えるはずだ。洞窟の一番奥の牢屋にいるはずだ」
「ほんとだな?」
ブラッドは男を刺すようなまなざしで見つめる。
「ああ、移動したって話は聞いてねえ」
ブラッドは剣を鞘にしまう。そこにシビルが近づいてくる。
「居場所わかったの?」
「ああ、急ぐぞ」
「こいつは?」
「放っとけ」
シビルは男を見る。男は息を荒げ二人を見ている。ブラッドは男に構わず馬に乗った。
「シビル、行くぞ」
シビルは足元に落ちていた剣を拾い、男の胸に突き刺す。ブラッドは驚いてシビルを見る。シビルは冷たい視線を男に向けて言う。
「弱肉強食の世界が望みなんでしょ? 弱者が生きられると思わないことね」
「く、くそ……」
男は息絶えてその場に倒れる。
「おまえ……」
「何? 流儀は合わせてあげようかしらって思ってね」
シビルはそう言って馬にまたがった。
「じゃ、行きましょ」
シビルはまるで何もなかったように表情一つ変えなかった。ブラッドは男に視線を向けるが、何も言わず馬を走らせる。シビルはその後を追った。
「ほんとは怖いんだろ? ごめんなさいって言ってみろ。そしたら優しくしてやるぞ?」
ケイは鼻で笑って言う。
「あんたこそ怖くてそれ以上近づけないんだろ? 死にたいなら来なよ」
男は勢いよくケイに襲いかかる。しかしケイが男のすねを蹴り、男は痛みで顔をしかめる。その隙にケイは男を背後から押さえつけ、手錠の鎖で男の首を絞めつける。男は苦しさで顔を歪ませ、声を絞り出すように話す。
「や……めろ。わかった……俺が、悪――」
「もう遅い。私はね、あんたみたいな奴らが大嫌いなんだよ。さっさと死にな」
ケイは見下すように冷たい視線で言い捨て、男の首を強く絞め上げる。しばらくすると男はぐったりとし動かなくなった。ケイは男から鍵を取り、手錠を外した。そして男を足で隅に押し退けて牢を出る。ケイが床に落ちていた松明を拾おうとしたとき、頭目の男が部下を数人連れて近づいてきた。
「どこへ行く。中へ戻れ」
ケイは男たちをにらみながら後ずさりして牢に戻る。頭目は中で倒れている男に目をやる。
「暴れ馬は困ったもんだな。人質は人質らしく大人しくしてろ」
頭目はそう言って、ケイの頬を強く叩いた。その勢いでケイは床に倒れこむ。
アリオト砂漠。ブラッドとシビルが馬で駆けている。シビルが声をかける。
「何か策はあるの?」
「その場で考える」
「死んだらだめよ」
ブラッドは正面を見たまま無言で駆けている。
「やっぱり。死ぬ気ね?」
ブラッドは何も答えない。
「あーあ、アイリスが可哀想。アレンたちもきっと泣くでしょ――」
「うるさいな。黙って走れないのか」
「無言で走ってるだけってつまらないじゃない。盛り上げてあげようと思って」
「だとしたらセンスゼロだな」
「もうすぐね」
「死にたくなかったら今のうちに帰るんだな」
今度はシビルが黙って遠くを見つめ、少し間をおいて言う。
「死ぬときは一緒よ」
「誰だよ」
しばらく走ると大きな岩が見えてくる。ドラゴンストーンだ。そのそばに5人の男が立っている。
「あれか」
ブラッドは男たちの前で馬から降りる。賊の男が声をかける。
「ちゃんと逃げずに来たみたいだな」
ブラッドは周囲を軽く見渡して言う。
「ケイはどこだ。俺が来たら返すはずだろ」
「そんなこと言ったか? 最近、記憶力が悪くなってなあ」
男が笑みを浮かべながら言う。
「最近? どうせ元からバカだろ。バカ面5つも並べやがって」
「いい度胸だな。この人数を前にして」
別の賊の男が言う。
「いくら仲間と一緒でもあの距離じゃ何の役に立つんだ?」
ブラッドが男の視線を追って振り返ると、50メートル以上離れたところでシビルが馬に乗ったままじっと見つめている。ブラッドは呆れた表情を浮かべ、ため息をついてつぶやく。
「何が死ぬときは一緒だ」
シビルは笑顔で手を振っている。ブラッドは男たちの方へと視線を戻し、鋭い目つきで言う。
「おまえらごとき一人で十分だ」
薄ら笑いを浮かべていた賊の男たちの表情が険しく変わる。
「なめやがって……」
賊の男たちが腰の剣を抜き、ブラッドに斬りかかる。ブラッドは次々と襲いかかる男たちをかわしながら、一人ずつ斬っていく。シビルはその様子を静かに見守っている。5人の賊の男たちは血を流して倒れている。ブラッドは返り血を浴びているものの無傷だ。ブラッドは乱れる呼吸を整えて賊の男に近づき、のど元に剣を突きつけて言う。
「ケイはどこだ」
男はブラッドを見上げながら震えた声で言う。
「し、死んでも言うか」
「じゃあ死ね」
ブラッドが剣を振り上げる。
「あー! わかった! 言う!」
男が慌てて叫ぶ。ブラッドは動きを止め、じっと男を見つめる。
「ここから真っ直ぐ行って、しばらくしたら洞窟が見えるはずだ。洞窟の一番奥の牢屋にいるはずだ」
「ほんとだな?」
ブラッドは男を刺すようなまなざしで見つめる。
「ああ、移動したって話は聞いてねえ」
ブラッドは剣を鞘にしまう。そこにシビルが近づいてくる。
「居場所わかったの?」
「ああ、急ぐぞ」
「こいつは?」
「放っとけ」
シビルは男を見る。男は息を荒げ二人を見ている。ブラッドは男に構わず馬に乗った。
「シビル、行くぞ」
シビルは足元に落ちていた剣を拾い、男の胸に突き刺す。ブラッドは驚いてシビルを見る。シビルは冷たい視線を男に向けて言う。
「弱肉強食の世界が望みなんでしょ? 弱者が生きられると思わないことね」
「く、くそ……」
男は息絶えてその場に倒れる。
「おまえ……」
「何? 流儀は合わせてあげようかしらって思ってね」
シビルはそう言って馬にまたがった。
「じゃ、行きましょ」
シビルはまるで何もなかったように表情一つ変えなかった。ブラッドは男に視線を向けるが、何も言わず馬を走らせる。シビルはその後を追った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる