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第13話 神、従える
しおりを挟む礼をするならばもっとそれらしい顔をすればいいものを、命を救ってやったのだから崇め奉られてもよいだろう。
「そう言うのを恩着せがましいていうんだよ。助けてくれたのは嬉しいけどね」
助けてやったのだから恩を着せて何が悪い!
不意に影ができた。まだ空は明るい筈なのにおかしい、上を見上げるとそこにはアークベアの顔がある。
「マルネスター、こいつまだ生きてるぞ!」
アークベアが俺のすぐ後ろにいる。絶体絶命な状況にもかかわらず恐怖や焦りといった感情は一切わかなかった。
「よい、許してやろう。俺の下僕になるがいい」
アークベアは頭を垂れ俺に擦り寄ってきた。
涎を垂らし暴れ回っていた恐怖の魔獣の姿はなく、そこには強者に服従する獣の姿がそこにあった。
根拠はないが俺の下僕になった。そういう確信がある。
「どうなってるの?」
「俺殺されそうになってたよな?」
「大丈夫か!? あれ? マルス、魔獣と仲良くなったのか?」
アークベアの頭を撫でていると父が遅れてやってきた。切迫した状況を想定していたのか、戯れている俺の姿を見て呆気にとられていた。
「父上、アベアンを家で飼っても良いですか?」
「アベアン? アークベアの名前か? うーん、さすがに魔獣はなぁ……」
せっかく従属してやったのだから側に置いておきたい、渋る父に対してアレコレとメリットを出して説得を試みた。
「アベアンが来たように他の魔獣も森や村に現れるかもしれません。その時にアベアンなら番犬ならぬ番熊として十分な働きを見せると思います! 俺の言うことは絶対聞きますし力仕事も任せられますよ!」
「いや、何があったかは知らんが言うことを聞くのか? もしもというときもあるし……」
俺がアベアンに指示を出すと腹を見せ服従のポーズを取る。更に支持を出すとお座りしたりクルクルと回って言う事をすべて聞くようだ。
背中に乗せろと命令すれば伏せて乗りやすいようにしてくれる。乗り心地は良くもなく悪くもないが気分はいい
「メイヤ、ユントニウス、お前等も乗るがいい」
「じゃあ僕も乗る!」
「お、俺はいいよ。いいってば! 無理やり乗せんなよ!」
メイヤと嫌がるユントニウスも乗せ父に向けて遊具にもなるとアピールする。
眉間にシワを寄せていた父だが、軽く笑みを浮かべ俺も乗るぞ! と参加してきた。
「たしかに敵意は感じられないな。俺がなんとか村の人達を説得してみよう」
「父上、ありがとうございます。征くぞアベアン! 村まで一直線だ!」
父と俺の度重なる説得により、どうにか許しを得ることができた。
ただし、俺の家がアベアンを管理する事、絶対に問題を起こさせないようにする事を条件にだ。問題など起こるはずがないがな。
ユントニウスとの関係は随分良くなった……訳でもなかった。
以前の様に理不尽な絡まれ方をする事はなくなったが、魔法を教えろ、メイヤと遊ばせろ、俺の家に上がりたい、父上に修行をしてもらいたいとライバル意識をもっているらしい。
「マルスにこんなに友達が増えたなんてママ嬉しいわ!」
ユントニウスの子分共も来るので以前では考えられないくらい連日賑やかな様子に母は嬉しそうにしている。
アンベアも遊んでもらえて楽しそうだ。
少しうっとおしくも感じるこやつらだが、鍛えて俺の配下にするのも悪くはない。
いっぱしの戦いができるくらいには鍛えてやろうじゃないか。
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