74 / 100
転んでもタダで起きないのがプロのロクデナシたる所以
しおりを挟む前書き
ちょっとした解説つうか説明回やね
なのでスマンが短い
日が沈むより少し前。
都内某所に在る一軒の小さな喫茶店。
其処の奥にある隅の席で下座に座るビジネスマンは愉悦を浮かべると、向かいの上座に座ってスマートフォンで電話をする同年代だろう女性をジッと見詰める。
向かいに座る彼女は「そうか……君達はもう帰って良い」そう相手に告げると共に電話を済ませると、スマートフォンをポケットにしまってビジネスマンの方を少しばかり不快そうに見詰め返して問う。
「魔法が使えない彼の方が脅威なのか?」
そう問われると、ビジネスマンは正直に意見する。
「あぁ……俺の所のスタッフの見立てが正しいなら、非常に高度な軍事訓練や工作員としての訓練を受けた特殊な所の出身だそうだ」
ビジネスマンから返ってきた意見と言う名の答えに女は「そうか……それは脅威だな」そう真剣な表情と共に返すと、更に言葉を続ける。
「彼は私からのメッセージに気付いた様だ」
メッセージ。
ソレはある種の警告であった。
そんな彼女の言葉にビジネスマンも同意する。
「彼、君からの警告……その気になったら何時でも現行犯で引っ張れるぞ。ってのを理解してる。あー見えて頭がキレるタイプだから。だが……」
「何だ?」
「同時に此方の正体にも一気に迫って来た可能性が高いと見た方が良い」
ビジネスマンから思わぬ言葉を聞かされると、彼女は首を傾げてしまう。
「どう言う事だ?」
「プロが尾行して来た相手に接触を図るなんてあり得ないんだ。君は聞いた事あるかい?」
ビジネスマンに問われると、彼女はハッキリと答える。
「聞いた事も見たことも無いわ。だからこそ、私も其処が引っ掛かってる」
「だろ?歴戦の猛者でもあるプロが、不要なリスクを背負って尾行者に対して接触。更には相手の指揮官に対してメッセージを残す……君も承知の通り、普通ならあり得ない」
ビジネスマンの言う通り、プロの悪党が尾行者。
特に警察と繋がりのある相手と接触を図ると言うのは、絶対にあり得ない。
ソレを知るからこそ、彼女も同様に正樹の狙いが解らずに居た
「だからこそ引っ掛かってるのよ……しかも、ソレは私達にとって厄介な結果を齎そうとしているって感じるわ」
彼女の言葉にビジネスマンは尋ねる。
「女の勘ってやつかい?」
その問いに彼女が否定する事は無かった。
「否定はしない。でも、貴方も私と似た予感を感じてるんじゃないかしら?」
そう問われると、ビジネスマンは肯定する。
「あぁ、思うね。警察官僚してる君も承知の通り、プロと言うのは無駄なアクションを好まないし、絶対しない。特に大きなリスクを背負うんなら尚更だ」
ビジネスマンの確認とも言える言葉を彼女は肯定する。
「えぇ、そうね」
彼女が考えに同意する様に肯定すると、ビジネスマンは更に言葉を続けた。
「プロが大きなリスクを背負う事を承知した上でアクションを起こした。と、言う事は恐らく……否、間違いなく成功すれば大き過ぎるリスクに見合うだけのリターンが獲られる確証があって実行に移したと考えざるを得ない」
ビジネスマンの言う通り、プロは天秤なのだ。
リスクとリターンが釣り合う。
または、リターンの方に天秤が大きく傾くならば、躊躇いなくリスクを承知した上で実行に移す。
逆に言えば、リターンが見込めないならば動かない。
実に解りやすい。
だからこそ、ビジネスマンと彼女は正樹の行動に首を大きく傾げて居るのだ。
「私もその意見に賛成だけど……何を狙っての事か?流石に其処までは解らないわ」
「彼は高度な軍事訓練や工作員としての訓練を受けては居るが、魔法に関しては存在は認知していても使用は出来ない……と、言うのが此方で確認出来た事だ」
正樹は高度な軍事訓練や工作員としての訓練は受けているが、魔法を使えない。
そうビジネスマンから告げられると、彼女は益々疑問に沈んでしまう。
「私達は何を見落としているの?」
「さぁね……何れにしろ、彼はある意味で魔女以上に危険な存在なのは確かだ」
高度な軍事訓練と工作員としての訓練を受けたプロの悪党。
ソレはある意味で魔法を行使する者達より、危険極まりない存在と言えるだろう。
そんな話題に上がっている男は、電車で二駅先にある大きな駅の近くに在る喫煙席のあるカフェで煙草を燻らせて居た。
「すぅぅ……ふぅぅ……一手で俺を踊らせたんだ。なら、俺も同じ様に一手で踊らせないと仕返しにならんよな」
紫煙と共に愉快そうに独り言ちる正樹。
電車内で尾行者に対し、メッセージを告げた理由はコレに尽きた。
そして、その仕返しは見事に大きな戦果を齎してくれた。
だが、正樹は戦果に満足する事は無かった。
寧ろ……
「しっかし、ガキ共が警察官僚と深い繋がりがあるとはなぁ……子供の権利条約は何処行ったんだ?日本は何時から、アフリカの軍閥仕草する様になった?」
日本の警察官僚が未成年の子供を利用し、危険な任務に就かせた事に対して大いに呆れると共に侮蔑の気持ちが湧いた。
思わず口に出したくなる程に。
しかし、それはそれ。
コレはコレである。
「まぁ、お陰で俺としては色々とリターンが獲られたから都合が良い事に変わりはない……それにしてもコレ美味いな」
涼子から支払われた1箱3000円の高級煙草は最高に美味かった。
満足気に煙草を燻らせ、薫りの良い紫煙を堪能する正樹は改めて思考を展開し、情報を整理していく。
警察官僚の女。
その女と一緒に居たのが俺達のスポンサーしてくれてるビジネスマンと見て良い。
サツと犯罪組織が仲良しとはなぁ……
まぁ、遣手の犯罪組織ほど国家権力と仲良しなのは良くあるから別に良いけどな。
犯罪組織と犯罪組織を取り締まるべき警察が仲良し。
普通ならば、徹底的に叩かれるべき事象だろう。
だが、正樹にすればよくある話の1つでしかない。
裏社会と言う巨大な闇の中で起こる事を把握したいなら、ソレこそ当人とも言える犯罪組織を利用する方が手っ取り早い。
商売をお目溢しする代わりに情報や資金。
時には汚れ仕事を委託させられるなら、安全保障の観点から見ればそれなりにリターンは大きい。
特に諜報機関持たない事になってる日本にすれば好都合だろう。
そうなると、ビジネスマンは日本国内に於ける犯罪組織の皮を被った非合法な諜報ユニット……担当は国内に於ける防諜関連と見るべきか?
じゃなきゃあ、海保に密輸船拿捕させた上にサツがアレだけのスピードで受け取り主の山菱組の連中を引っ張るのは難しい。
ビジネスマンと警察官僚の女の繋がりを考察すると同時。
先日……もとい、今朝のニュースで話題になった昨夜未明に海上保安庁による海上からの大規模な覚醒剤密輸阻止。
それと、受取主である日本最大手の暴力団……山菱組幹部を逮捕し、各事務所をガサ入れした件を踏まえた上で正樹はビジネスマンの本来の役目も考察した。
だが、辿り着いた答えに正樹が驚く事は無かった。
犯罪組織に扮して防諜や大規模犯罪の阻止ね……
防諜機関や諜報機関を持てないが故の苦肉の策って奴か?
まぁ、持ちたくても面倒臭い連中から猛反対されるだろうから、そうせざる得ないのも事実なんだろう……
「民主主義バンザイって奴だ」
皮肉と嫌味を込めてボヤいた正樹は煙草を燻らせると、温くなったコーヒーをしずかに啜る。
取り敢えず、国家権力嘗めんじゃねぇぞ……ってメッセージに関しては真摯に受け止める。
その方が穏便に解決する。
だが、共同で作戦しろって言われたらふっかけてやろ……
ビジネスマンのビジネスパートナーである警察官僚の女から仕事を依頼された時には、法外な報酬を請求する事にした。
普通ならば、子供を死地に送るロクデナシ共の依頼なんて受けるかバーカ!!
そんなノリで拒絶するのだろう。
しかし、正樹も飛び切りのロクデナシなのだ。
それ故、思う所はあってもカネになるならば気にしない。
勿論、涼子もだ。
他人のカネになるくらいだったら、俺のモノにしてやる方が良い。
特にクソな連中から巻き上げられるんなら、心が痛まないし、気分も良い。
正樹を銭ゲバと思うだろう。
実際、銭ゲバである。
だが、高度に発展した文明社会に於いてカネは現代に於ける魔法。
カネが無ければ、何も出来ない。
何をするにしてもカネは必須。
カネが無ければ、生きていく事も立ち行かなくなる。
カネは生命の糧なのだ。
そんなカネを沢山稼ぎたい。
その想いを否定する事は、愚か極まると言えるだろう。
話を戻そう
敢えて尾行者にメッセージを告げ、尾行者達が指揮官に連絡した事で件の警察官僚の女に繋がる通信端末を特定する事に成功した。
成功した後。
その端末を電脳からハッキングし、盗聴器に変えてビジネスマンとの遣り取りを盗聴する事にも成功。
まさに、ビジネスマンと警察官僚の女の言う通り……
プロはリスクよりリターンが大きいならばリスクを踏まえた上で実行に移すと言う証左と言っても良いだろう。
「うーん……事が上手く運んだ時の煙草は美味い」
プロのロクデナシとして、相手を惑わすと同時。
戴けるモノをキッチリ戴いた正樹は満面の笑みと共に漏らすと、美味いコーヒーと煙草を堪能していく。
勿論、今後の予定を組み立て直しながらだ。
サツが俺達をブチ込む気が無いんなら、新しい"犬小屋"への引越し後にプリズンブレイクの準備に費やしても良さそうだ。
その間に"クソ面倒"が起きなければ……って問題点を除けば、概ねその方針で進めていくべきか?
頼むから、コレ以上のトラブルは勘弁してくれ……
俺の予定が台無しになっちまう。
予定を概ね決めた正樹は心の中で祈る様にボヤくのであった。
ちょっとした補足説明的なモノ
相手側の指揮官とビジネスマンは仲良し←
解りやすく言うなら…BLACKLISTのレッドとFBIみたいな感じの関係かな?
違う点はビジネスマンと指揮官である警察官僚♀さんは同じ目的を見据えて安全保障の為に活動してるって所か?
で、大量の覚醒剤密輸を摘発し、最大手暴力団の幹部を逮捕出来たりと治安維持と国民には貢献してる(詭弁
それでも汚い大人の遣り取りである事に変わりはない←
で、そう言うのを探る為の一石として正樹は前回の更新時にプロにあるまじき行いをした訳である
相手の通信端末を特定して何処のどいつだ?って知れたら儲けものだからね…
ヤラない理由は無いと言えば無い
滅茶苦茶リスキーだけど←
だからこそ、ビジネスマンと警察官僚♀さんはマジで何が狙いだ???って困惑した
だって、正樹が攻殻機動隊めいた電脳スキル持ちな事を知らないから←
正樹「相手に手札を知られない事の利点はコレに尽きる(胸を張る
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
捨てられた貴族六男、ハズレギフト『家電量販店』で僻地を悠々開拓する。~魔改造し放題の家電を使って、廃れた土地で建国目指します~
荒井竜馬@書籍発売中
ファンタジー
ある日、主人公は前世の記憶を思いだし、自分が転生者であることに気がつく。転生先は、悪役貴族と名高いアストロメア家の六男だった。しかし、メビウスは前世でアニメやラノベに触れていたので、悪役転生した場合の身の振り方を知っていた。『悪役転生ものということは、死ぬ気で努力すれば最強になれるパターンだ!』そう考えて死ぬ気で努力をするが、チート級の力を身につけることができなかった。
それどころか、授かったギフトが『家電量販店』という理解されないギフトだったせいで、一族から追放されてしまい『死地』と呼ばれる場所に捨てられてしまう。
「……普通、十歳の子供をこんな場所に捨てるか?」
『死地』と呼ばれる何もない場所で、メビウスは『家電量販店』のスキルを使って生き延びることを決意する。
しかし、そこでメビウスは自分のギフトが『死地』で生きていくのに適していたことに気がつく。
家電を自在に魔改造して『家電量販店』で過ごしていくうちに、メビウスは周りから天才発明家として扱われ、やがて小国の長として建国を目指すことになるのだった。
メビウスは知るはずがなかった。いずれ、自分が『機械仕掛けの大魔導士』と呼ばれ存在になるなんて。
努力しても最強になれず、追放先に師範も元冒険者メイドもついてこず、領地どころかどの国も管理していない僻地に捨てられる……そんな踏んだり蹴ったりから始まる領地(国家)経営物語。
『ノベマ! 異世界ファンタジー:8位(2025/04/22)』
※別サイトにも掲載しています。
Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた
ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。
今の所、170話近くあります。
(修正していないものは1600です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる