Vampire escape

藤丸セブン

文字の大きさ
5 / 31
一章 奴隷解放戦

五話 初めての依頼

しおりを挟む

 サンクラリィス教会から最も近い街についた二人は荷物を宿屋に置き、防具店を訪れていた。
「おお、いかにもそれらしいお店ですね!」
 木造で作られており、看板には剣と盾が描かれた一眼で分かる防具屋を前にメルティが少し興奮気味にキョウヤを引っ張る。キョウヤはそのまま引っ張られたまま防具屋の中へと足を踏み入れた。
「いらっしゃい!防具の新調か?それとも修理か!?」
「新調で。物凄く丈夫なのと、丈夫ではあるものの動きやすさなどを重視した女性用の防具を頼みたい」
「おん?この辺じゃ見ない顔だな?新入りの探検家か?」
 防具店の店主からの問いかけにメルティは不思議そうにキョウヤを見た。探検家、という言葉について聞きたいが、今聞いても良い物なのかどうかを決めかねているのだろう。
「問題ない。探検家とは魔物の討伐や遠出の護衛などを勤めながらお金を稼ぐ人達の事だ」
「見たところ嬢ちゃんはシスターか?もしかして近くの」
「はい。サンクラリィス教会から来ました」
 街の人々は近くに教会がある事は知っていたがその教会で何が起こったかは知らなかったらしい。なのでメルティはサンクラリィス教会で起こった事を全て話した。勿論、キョウヤの正体については内密にしたが。
「そいつは酷え。だがあんちゃんがいてくれたのは不幸中の幸いだったな。嬢ちゃんだけでも助かった良かったぜ」
「ありがとうございます。しかし、私は彼と共に子供達を救出しなければ」
「その意気込み買った!最高級の武具を用意してやるぜ!と、言いてえ所なんだが。生憎武具の素材を切らしちまっててな」
 店主の言葉に目を輝かせていたメルティの顔が少しずつ曇っていく。その顔を見て店主は物凄く申し訳なさそうにした。
「だがら、取引と行かねえか?今から俺が言う素材をあんちゃんと嬢ちゃんで狩ってきてくれ。そうしたら俺がただで防具を作って二人にやるよ」
「なるほど。それは魅力的な提案だな」
 キョウヤは過酷なこの世界を生き抜く為己の肉体と技を鍛え抜いてきた。故に強さには自信があるが、所持金の額には自信がない。更にこれからは自分だけでなくメルティの分の食費や宿代も追加されるとなると、防具代がタダになるというこの話は得でしかない。
「んじゃこいつは俺からあんたら二人への依頼って事にするぜ。頼んだぞあんちゃん、嬢ちゃん。くれぐれも無理はすんなよ」
「依頼?ですか?」
「ああ、探検家は雇い主の依頼を受けて仕事を行う」
 探検家とは所謂その日暮らしのフリーターだ。依頼人がいなければ仕事すらない。その為依頼人達の依頼を一つの場所にまとめた酒場などがあり、探検家はこぞってそこへ行く。
「今回素材を取ってきて欲しいのはアーマードレイブン。こいつがいい素材を持ってる事が多いからな。そいつらを溶かしてあんちゃん達の防具にする予定だ」
「アーマード?防具を着込んでいると言う事ですか?」
 メルティの言葉にキョウヤが静かに頷く。
「アーマードレイブンとは実に頭のいいカラスの魔物だ。元々彼らは鎧や防具なんて着込んでいないが、人の言葉を理解し、人の道具を使える頭がある。だから探検家の防具や商人や住民が持っていた道具などを使って戦いを仕掛けてる」
 道具などを使って人間を襲う魔物は本当に数が少ない。故にその恐ろしさを伝える為国偉い人達がそのカラスの魔物にアーマードレイブンという名を付けた。名前を聞いてしっかりと対策をする為に。
「既に何人かの探検家に依頼を出してはいたんだが、未だに誰も帰ってきてねえ。新人っぽい嬢ちゃんに頼むのはあまりに荷が重いが、あんちゃんは見るからに歴戦の探検家っぽいもんなぁ!きっと倒してきてくれるって信じてるぜ!!」
「はい!キョウヤ様は本当にお強いんですよ!」
 豪快に笑う店主にメルティが同意して激しく頭を縦に振る。そこまで絶賛されると少しプレッシャーとなってくるが、だからといって引く事は出来ない。
「とりあえずアーマードレイブンを倒す為の防具が必要だろ?そいつらをうちで買ってけよ。武器とかも選りすぐりを持ってきてやるぜ!」
「そうか、結局防具を買う事にはなるのか」
 質の良い防具をタダで手に入れられると思っていたが、まず依頼を受ける為に装備を整えなければならない。正直キョウヤはヴァンパイアとしての力で戦う為剣や槍などの武器の扱いはからっきしなのだが、ここでそんなことを言っては店主に怪しまれる。故にここは店主の言う通りに装備一式を整えるのが良いだろう。
「キョウヤ様、あなたはどの様な武器を使うのですか?」
 店主には聞こえない様な小さな声で、それでいてもし聞こえてしまっても問題ない質問をメルティがする。どうやらメルティもキョウヤが普段から武器を使わない事を察している様だ。実際サンクラリィス教会で倒れていたキョウヤが武器を持っていなかったので察する事は出来るだろう。
「ひとまずは無難に剣でいこうと思う。槍や弓は技術が必要そうだ。いや、剣も技術は必要なのだろうけども」
 弓は力任せに放つ以外の技術がないと使いこなせないだろうし、槍はまず槍そのものが長いので扱いづらそうだ。その点剣なら最悪力一杯剣で殴りつけるという攻撃も可能そうだ。
「騎士の人々に聞かれたら激怒されそうな言葉ですね」
「大丈夫。騎士の知り合いはいない」
 そんな事を言いながらひとまず二人は店主が持ってきてくれた防具と武器を眺める事にした。
「まずは防具からだ。守りは最大の防御。特にメルティの防具に一番お金をかけたい」
「そ、そんな。恐縮です」
「ほほう。愛されてんなぁ、嬢ちゃん」
 顔を真っ赤にしながら照れるメルティを他所にキョウヤは防具に触れたりしながらメルティに会う防具を探す。メルティはキョウヤと違って戦闘経験はないし運動という運動も普段から行っていない。故に防御力は必要だがまず一番に機動力を重視したい。メルティを前線に出すつもりは無いがサポート能力などはあるので戦闘には参加して欲しい。
「ん?そういえば、あなたはどの様な事が出来るんだ?」
 ここにきて一つの疑問が生じる。キョウヤはメルティがどの様な奇跡を使えるのかを知らない。彼女が神に仕える敬虔なるシスターで神の奇跡を仕える事は知っているが、どの様な奇跡が使えるかどうかを把握しているか否かで、戦闘の質は大きく変わるだろう。
「は、はい。私の使える奇跡は三つです。傷を治す治癒の奇跡。対象者の能力を少し強化する支援の奇跡。そして周囲を光らせる光彩の奇跡です」
「なるほど」
「へぇ。嬢ちゃん三つも奇跡を使えるのか!凄えじゃねえか!」
 メルティの言葉に店主がまたしても豪快に笑い、メルティがペコリと頭を下げる。
「奇跡を三つ使えるのは凄い事なのか?」
「さぁ?私はシスターウラディア以外のシスターに会ったことが無いので分かりません。確かにシスターウラディアは奇跡を使えませんでしたが」
 その言葉にキョウヤは乾いた笑いを浮かべる。メルティはウラディアの事を悪く思っていなさそうだが、キョウヤから見ても彼女は神に仕える敬虔な信徒には見えなかった。更に悪事に手を染める様な人なら奇跡を使えなくてもなんの違和感もないだろう。
「俺も詳しくは知らねえけど、探検家にも何人か奇跡を使える奴がいたが、三つも奇跡を使えるのは嬢ちゃんだけだったぜ」
 神の奇跡は神を信じ、神を敬う者ならば人種や年齢などは一切関係なく使える可能性がある。故に探検家が使えても何もおかしくはない。
「神の奇跡はどの様に使える様になるんだ?試練とかを超える必要があったり?」
「いえ?普通に使える様になります。私の場合、子供が転んで膝を擦りむいた時に治癒の奇跡を、シスターウラディアが重い荷物を持っていた時に支援の奇跡を。夜に御手洗に行く時に光彩の奇跡を授かりました」
 それを聞いたキョウヤと店主は二人で顔を見合わせ、苦笑いを浮かべた。思っていたよりも神の奇跡が日常的だったからだ。神の奇跡などという大袈裟すぎる力だというのに夜に御手洗に行きたいという願いに応じて奇跡を与えるというのか。
「ま、まあそれはいい。店主、メルティには動きやすく且つ防御力の高い防具を用意して欲しい」
「動きやすいもんはあるが、どうしても防具は脆くなるぜ?」
「構わない」
 メルティ本人をガン無視して話を進めているが当のメルティはキョウヤに全面的に任せているので口を挟む事もしない。そのままメルティは店主に勧められるがままに更衣室へ移動した。
「ジャーン!どうです?」
 数分後、更衣室から少しテンションの高いメルティが姿を見せる。メルティが身を包んでいるのは白を基調としたインナーの様な服に軽めの防具が取り付けられた装備だった。
「店主」
 キョウヤは店主を呼んでメルティから少し距離を取った。
「何だよ?あの布はしっかりと良い生地使ってるし防御力も高いぜ?ああ見えて魔物の斬撃二回程度は凌いでくれる」
「そこじゃない。その、なんだ。露出が多くないか?」
 メルティの服装は確かに動きやすそうだが、首元の布がなかった。何が言いたいかというと、キョウヤ視点からメルティを見ると、豊満ではないもののしっかりとある二つの果実がうっすらと見えてしまうのだ。
「でも嬢ちゃんがこれがいいって」
「はい!シンプルですが服のあちらこちらにリボンが付いていて可愛いのです!」
「ここは本当に防具店なのか?洋服店ではなく?」
「失礼な奴だな。最近の探検家はおしゃれかつ防御力の高い服を求めてんだよ!」
 少し不服ではあるもののメルティが求めているのならば仕方がない。キョウヤはメルティの防具のお会計を済ませ自分の防具と剣を選び始めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

【アラウコの叫び 】第4巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日19:20投稿】 4巻は、序盤は「推理もの」、中盤から後半は「ロマンスもの」が展開されます。 ・サンティアゴで起こる「事件」と「裁き」 ・「アンデスの悪魔」として悪名を轟かせた狂気の老人カルバハルの存在感 ・ニドス家の兄妹の「行く末」 ・イネスとバルディビアとの「出逢い」と「結末」 大きく分けてこの様な展開になってます。 ------------------- 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...