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一章 奴隷解放戦
七話 吸血
しおりを挟む「・・・っっ」
「あ、起きましたか?ご気分はどうですか?」
アーマードレイブンを討伐した後意識を失ったキョウヤは同じ林の中で目を覚ました。メルティに膝枕をされている形で。
「俺は、どれくらい寝ていた?」
「ほんの十五分程ですよ。けれど、あまり長居するのは危険なので早めに出たいとは思っています。動けますか?」
「ああ」
メルティの言葉通りに立ちあがろうとしたキョウヤはよろけてもう一度倒れ込んでしまった。
「キョウヤ様!大丈夫ですか!?やはりお怪我が」
「い、や。怪我の方は問題ない。問題なのは、血の方だ」
キョウヤは先程の攻撃で大量の出血をした。実際あれだけの血を使わなければアーマードレイブンの群れは倒せなかったのでそれ自体は構わない。だが、問題はその後。つまり今の状態だ。
「簡単に言うと貧血だ。吸血鬼は血を使って攻撃するが、その分大量の血が必要になる」
「だから吸血鬼は血を求めて人を襲うんですか?」
「それもある。基本吸血鬼が人の血を吸うのは血液を吸いたいからだがな」
ぐったりしているキョウヤの言葉にメルティは寂しげな顔を見せる。吸血鬼は基本自分の事を中心に動いている。人の血を吸う事は自分の力を強める事にもなるが、それよりも美味しいから吸っているという吸血鬼が大半を占めているだろう。
「だが、血の量が吸血鬼の強さと言っても過言ではない。幾ら吸血鬼の秀才と呼ばれた女性ですら、血がなければ俺にも勝機がある」
「な、なるほど」
キョウヤの話していた女性が妙に具体的でメルティの心は少し暗い影を落としたが、そんなことはどうでもいい。それより今すべき事は。
「では、どうぞ」
「・・・?」
メルティは着ていた装備を少し肌けさせて首筋をキョウヤに見せた。が、キョウヤは何も分からない様に首を傾げた。
「どうしてこれで分からないんですか?ほら、私の血を吸ってください」
貧血でふらふらのキョウヤを復活させるのに最も早く、適切な処置。それがメルティの血を吸わせる事だ。例えキョウヤに血を吸われすぎて逆にメルティが貧血になってしまったとしても、キョウヤならばメルティを抱えて街に帰る事が出来る。これ以上に今取れる最善の手はない様に思える。
「・・・うん。まあ、そうなってしまうよな」
「前々から思っていたのですが、キョウヤ様は人の血を吸う事に抵抗があるのですか?」
「そうだな。俺は、吸血鬼の落ちこぼれだった。その理由は簡単で、人の血を吸えないからだ。いや、違うな。吸おうとしなかったから、かな」
吸血鬼というのは生まれながらにして吸血衝動を宿している。人は母の乳を飲み成長し、暫くすると動物の肉や野菜を食べて成長する。大半の人間はそこに何の抵抗も無いだろう。吸血鬼に取ってその食事が人を襲って血を吸う事。何も特別でもないその行為にキョウヤは抵抗感を覚えたのだ。
「人の血を吸い、その人間が死ぬまで血液を吸い取り尽くす。この行為が俺にはできなかった。人を襲って血を吸う、という行為事態が悪である様にしか思えなかったんだ」
実際、人の考え方では吸血鬼は悪だ。ある日突然何の罪もない人間を襲い、生きる為に殺すのだから。しかし吸血鬼はそこに何の疑問も抱かない。寧ろ血を吸う事は永栄であり、どれだけ血を吸えるかによって吸血鬼の地位が決まる。キョウヤは、吸血鬼として生きるには心が吸血鬼に不向き過ぎたのだ。
「うーん。確かに私以外の人の血を吸うのはダメですが、私ならば構いませんよ?私なら最悪キョウヤ様に全ての血を吸われて死んでしまっても恨みませんし後悔もありません」
「どうしてあなたは、こうも覚悟が決まり過ぎているんだ。はぁぁぁぁ」
長く深いため息を吐いたキョウヤは覚悟を決めた様にゆっくりと起き上がった。
「分かった。あなたの血を吸う。その代わり、俺が動ける様になったら直ぐに牙を抜く。それから俺があなたから血を吸うのは必要最低限にする。いいか?」
「むぅ、私は幾ら吸ってくれても構わないのですが。分かりました」
メルティとしては寧ろキョウヤの役に立つ為毎日でも血を吸って貰いたいのだが、今はこれで妥協する。
「では!どうぞ!!」
「・・・いただきます」
「召し上がれ!」
妙に瞳を輝かせ嬉しそうに鼻息を荒くするメルティに何とも言えない感情を抱きながらもキョウヤは血の補給の為メルティの白く細い首に牙を突き立てた。
「あっ。んっ、ふ」
「卑猥な声出さないでくれ」
残念ながら吸血鬼の牙に蚊のように痛みを和らげる仕組みはない。故に当然吸血鬼に牙を立てられれば痛みが伴う。しかしメルティはキョウヤの牙を受け入れ、寧ろ興奮していた。
「だって、仕方ない、じゃないですかぁ!」
先程吸血鬼の牙に痛みを和らげる効果はないと言ったが、しっかり他の効果はある。それが軽い興奮状態にするという効果だ。しかしその効果は低く、どちらかというと興奮状態にする事で吸血鬼の血を素早く体内に巡らせ、対象を吸血鬼にする為の作用なのだが。
「んっ、あぁ。キョウヤ様ぁ、ら、らめぇ」
「頼むからその声だけ何とかしてくれないか?それがあると尚更罪悪感が強くなって血を吸う機会が減るぞ?」
「しょ、しょんな事いわえてもぉぉ」
キョウヤに血を吸われる事でメルティが興奮状態に陥る。それは別に可笑しな事ではないのだが、メルティはキョウヤに恋をしている。その恋という感情に吸血時の興奮状態が合わさり、擬似的に性的興奮に近い状態へとなってしまっていたのだ。
「んぁぁぁぁ!」
・・・数秒後。
「・・・ご馳走様。お陰で血の補給が出来た。ありがとう」
「い。い、え。こちらこそ、太くて逞しいモノを、ありがとうございます」
「・・・あなたは、あれか?思春期なのか?性的欲望に飢えているのか?」
間違ってはいないが実に卑猥な言い方をするメルティにキョウヤは頭を抱える。
「ひとまず、帰ろう」
「は、はい」
肌けた装備をしっかりと装着し直し、二人は街へと戻った。
◇
「おうお疲れさん!無事に帰ってきてくれて何よりだぜ!」
アーマードレイブンが装備していた鎧などを持ち帰ってきた二人はそのまま防具屋へと足を運んでいた。
「中々大変な相手だった。あの林にはずっと前からアーマードレイブンが棲みついているのか?」
この街は人があまり住んでいない田舎街の為衛兵の騎士は最低限しか所属していないし、探検家も駆け出しの者が多い。そんな街にアーマードレイブンが生息しているというのは少し危険過ぎる。今回大まかなアーマードレイブンは討伐出来たが、全てのアーマードレイブンを殺せたとは思えない。かといって一匹ずつ殺していく時間もない。
「いいや、そんな話は聞いた事ねえな。数日前に突然目撃情報があったんだよ」
「となると、何者かに持ち込まれた可能性が高いか」
アーマードレイブンは知能が高い為戦って勝てないと分かると撤退をする。故に服従もさせやすい。
「まさか、魔物を使役してる奴がいるってのか!?そんな馬鹿な!?」
「普通の人間には不可能だろう。だが、出来る存在は知っている」
キョウヤの話に店主は息を呑む。もしキョウヤの話が本当なら、この街は何かとんでもない事件に巻き込まれそうになっているのかも知れない。
「話し過ぎた。店主、今の話は忘れてくれ。これ以上は、あなたに危険が及ぶかも知れない」
「・・・分かってるよ。俺はただのしがない防具店の店長だ。探検家、いや。騎士が出張ってくる様な事件に首を突っ込む程命知らずじゃねえ」
この世界の犯罪は基本騎士が取り押さえ、牢に入れ罪を償わせる形となっている。故にこの世界の警察の役割は騎士が担っている。これはその騎士が関わりそうな案件だ。
「だが、防具屋として最高の仕事はする。その素材達をよこしな。あんちゃんに最高の武器を作ってやるぜ!」
「あぁ、頼む」
にやりと笑う店長にキョウヤも応えて笑う。そしてアーマードレイブンの装備を渡した。
「作る武器は剣でいいのか?」
「ああ、その事なんだが。こいつでお願い出来ないか?」
キョウヤはそういって自身の拳を突き出した。
「拳、手甲って事か?」
「ああ。戦ってみて分かったんだが、どうも剣は性に合わない」
「ふっ、そうかい。安心しなあんちゃん!探検家にとって武器は最高の相棒だ!その探検家にピッタリな最高の相棒を作るのが俺の仕事だ!!!」
自信ありげの店主にキョウヤは満足そうに頷く。
「そういやー、あんちゃん。これは蛇足なんだが」
「ん?」
キョウヤと店主の話も聞かずに可愛らしい装飾品を眺めているメルティに聞こえないように小さな声でキョウヤの耳元で小さく話す。
「あんちゃん、林の中で嬢ちゃんになんかしたか?」
「・・・何の話だ?」
「ここだけの話、きのこ狩りに出た奴から林の中でお嬢ちゃんらしき人の声を聞いたって言われてよ。それも、ほら、中々卑猥なやつをな」
「誤解だ!!!」
誤解を解こうとキョウヤは必死に店主に説明をした。しかし血を吸っていたなどと説明する訳にもいかないので説明には非常に苦労したが。
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