Vampire escape

藤丸セブン

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一章 奴隷解放戦

八話 結界を超えて

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 アーマードレイブンを討伐した翌日、キョウヤとメルティは攫われた子供達を助ける為情報を探っていた。
「子供?いや、見ていないなぁ」
「怪しい人物って言われてもな。どんな人を探してるんだ?」
「分からないねぇ。力に慣れなくてごめんよ」
 だが、中々情報は見つからなかった。
「で、収穫は全く無かったって訳か」
「残念ながらな」
 奴隷商人の情報は一切掴めていないものの店主に依頼した武器を放置しておく訳にもいかないのでキョウヤとメルティは再度防具屋を訪れていた。
「だが悪い事ばかりじゃない。完成したぞ、あんちゃんの特注武器がな!受け取りな、こいつは俺の最高傑作だぞ!!」
 そう言って店主が持ってきたのは黒を基調とした手甲だった。その手甲には赤い装飾品が付けられていた。
「わぁ!凄くカッコいいです!」
「確かにいいデザインだ。だが、この装飾品は必要なのか?」
「いるに決まってんだろ。こいつを回してみな」
 店主が自信満々に手甲を渡してくるので言葉の通りに装飾品を回す。すると手甲の中から短刀が飛び出した。
「こいつが自慢の仕込み刀さ!!剣が上手く使えなくても、剣を拳から突き出せば殺傷能力は倍増だ!」
「「おおおぉ!」」
 仕込み刀という武器に浪漫を抱かない人はいない(偏見)。そんな考えを持っている店主の粋な仕組みにキョウヤとメルティは目を輝かせた。
「凄いですね!ジャキンって出てきましたよ!ジャキンって!」
「あぁ。普段は拳で殴り、魔物や拳だけの力では倒せない程の敵が来たら剣と拳の合わせ技か。これは浪漫だな」
「へっ。あんちゃんも嬢ちゃんも分かるじゃねえか!こいつは間違いなく俺が作った中で最高傑作とも言える仕上がりだぜ!」
 これで武器と防具が揃った。今のキョウヤならどれ程の強敵にも負ける気がしない。
「というか。奴隷商人っていう人達はそんなに強いのですか?私のイメージとしては、奴隷商人ってそんなに強い人じゃない様な気がするのですが」
 メルティの言い分もあながち間違いではない。奴隷商人と言ってもあくまで奴らは商人だ。別に腕っぷしが強い必要は一切無いし鍛錬などで自分を鍛える時間があるなら次の商売に頭を回す人物達が奴隷商人。だが。
「もし戦闘になったら奴隷商人はどういう動きをすると思う?」
「えっと。逃げる、でしょうか?」
「それもあるかも知れないが、多くの奴隷商人なら用心棒を出してくるだろうな」
 奴隷商人とはいつ騎士に制圧されてもおかしく無い危険な仕事だ。そんな仕事をしている奴隷商人が戦力を手元に置いておかない筈がない。確実に腕前に自信のある用心棒を雇っているだろう。
「用心棒。それは探検家みたいな人ですか?」
「探検家が何でも屋だとすると、用心棒は護衛専用の職業だな。探検家と違って護衛の仕事しか請け負わない為様々な仕事をこなす探検家よりも護衛歴が長く信用できる。だから探検家にはあまり護衛任務が来ないんだ」
「な、なるほど。その用心棒さんが悪い人に手を貸している、という訳ですね!」
「恐らく。だが、奴隷商人の用心棒をする人物という事は。相当悪の道に足を踏み入れた人間。もしくは、人外か」
 キョウヤが誰にも聞こえない程の小さな声で呟く。この世界には吸血鬼以外にも人間中心世界で忌み嫌われており、見つけ次第捕らえられる、もしくは駆除される生き物達がいる。悪魔や獣人などだ。彼らは元々表向きの生活をする事は出来ないので用心棒の仕事をしていてもおかしく無い。そして、普通の人間よりも遥かに強い。故にキョウヤは奴隷商人から子供達を解放する為に万全の準備をしていたという訳だ。
「とはいえ、未だ奴隷商人の情報はゼロ何ですよね」
「その話何だがな。俺の方でも少し聞き込みをしてみたら、何とそれっぽい奴の目撃証言があったぞ」
「本当か!?」
「おうよ!まあそいつは相当酔ってたらしいから話半分だがな」
 店主が聞いたその証言とは凄く簡単。嫌がる子供を連れた男がいたが、こちらの視線に気づくとその場から一瞬で消えたという話だった。
「そ、そそそそれは。奴隷商人ではなくお化けでは!?」
 ビクビクと震えながらメルティがキョウヤに捕まる。どうやらお化けなどといったものを信じている様だ。
「この世界にお化けなんていないぞ」
「いるかも知れないじゃないですか!この世界には吸血鬼も悪魔も獣人もいるんですよ!?」
「・・・そうだな。そうかも知れないが、今回はそうじゃない筈だ」
 メルティが涙目でキョウヤにそう訴えかけるのでキョウヤもそれを認める事にした。何よりここでお化けを否定すると勢いのまま「キョウヤ様だって吸血鬼の癖にー!」とか言い出しそうだ。別に二人の時なら良いのだが、今は店主がいるのでそう叫ばせる訳にはいかない。
「あんちゃん、なんか知ってんのか?」
「ああ。恐らくその奴隷商人は結界の中に入ったのだろう」
 キョウヤの口から出た結界という言葉に店主とメルティは首を傾げた。それもその筈、普通に暮らしている人間はまず結界に遭遇する事はないし、もし遭遇したとしても結界の効果により何の違和感も持たないだろう。
「結界っていうのは自分の魔力で街を覆い、その覆っている部分に特定の効果を付与する術の様なものだ。今回使われているのは恐らく干渉できなくなる結界。その結界の中に奴隷商人らしき人物と子供が入っていった為、目撃者の目では発見する事が出来ず、消えた様に見えたのだろう」
「そいつはまた物騒というか、大掛かりな仕事だな。その結界ってのはそんな簡単に作れるもんなのか?」
「いや、勿論作り手によって製造速度は変わるだろうが、早くても三日はかかると思う。幾ら奴隷を扱っているからといって、今回の為だけにそんな面倒な手は取らないだろう。つまり」
「この町では常習的に奴隷の売買が行われている、と?」
 顔を青ざめさせたメルティの小さな声にキョウヤは静かに頷く。勿論これはあくまでもキョウヤの推測に過ぎないが。
「可能性は高いだろうな」
 まさか結界まで張られているとは夢にも思わなかったキョウヤはこれからの計画について少し状況を整理する。元々は小さなチンピラがお小遣い稼ぎにやっていた奴隷売買だと思っていたが、そこに結界が出ると話は変わってくる。もしかしたらメルティとキョウヤは巨大な犯罪組織に喧嘩を売ろうとしているのかもしれない。
「メルティ」
「助けますよ」
 これからの事を話す必要があるかとキョウヤがメルティの名を呼ぶと、メルティは要件も聞かずに自分の意見を言い放った。
「・・・かなり危険な行いだ。敵は俺の想像を遥かに超えていた」
「それでも、彼らは私を慕ってくれていました。そんな子供達を見捨てるなんて、私には出来ません」
 覚悟の決まった、良い目だった。自らが戦う能力すらない小さな少女をこんな危険な戦いに連れ出すのは心配だったが、この決意を揺るがす事はキョウヤにも出来そうにない。
「分かった。なら、俺は全力であなたを守るだけだ」
「しょっ!しょんな、私を、えへへへへへ」
 先程の瞳は何処へやら。赤面して情けない声をあげるメルティを見てキョウヤは再度心配に駆られた。
「行くのか?でも、さっきの結界があったらあんたらも中に入れないんじゃないのか?」
「大丈夫だ、秘策がある。色々とありがとう。あなたはこれ以上この件に関わらない様にな」
「ああ。しがない鍛治氏に出来ることはここまでだ。検討を祈ってるぜ」
 店主に軽く手を挙げてキョウヤは店を出た。
「ま、守るだなんて。しょんなしょんな。えへへへへ」
「何してる行くぞ」
 未だに幸せな夢の世界に浸っているメルティを連れ出す為再度店に来店したキョウヤは我に帰ったメルティと共に二度店を出た。
「やれやれ。あんな調子で奴隷商人から奴隷となる子供達を救い出せんのか?」
 店主は深いため息を吐いたが、心の底から心配している訳ではない。あの二人ならやれる。その様な謎の信頼が店主にはあった。本当に何故かは分からないが。
  ◇
「ここだな」
 時刻は夜。店主からの情報を元にキョウヤとメルティは奴隷商人と思われる人物が消えたという場所を訪れていた。
「別段何もない様に見えますが、本当にここに結界があるのですか?」
「ああ、間違いない。この先に進んでみてくれ」
「?はい」
 キョウヤからの指示に疑問を抱きながらもメルティは足を動かしてキョウヤに指示されたように歩き出し、
「あれ?」
 キョウヤが指差した方向とは別方向へ足を進めていた。
「これが結界の作用。この先に進ませないように人の脳に情報を送っている。更に結界の事を知らない人には違和感すら抱かせないようにな」
 結界が張られていたのは寂れた集落だった。元々その集落に住む人も既にいないので何か目的があってここに訪れる人もいない。奴隷商人にとってはこれ以上ない好立地だった。
「な、なるほど。でも!これでは進めません!」
「普通ならな」
 キョウヤはそういうと自分の指に店主から貰った剣を軽く刺し、少量の血を流した。
「行くぞ」
「え?」
 キョウヤがメルティの手を引き、結界内に入った。吸血鬼の血でキョウヤとメルティの頭を覆ったのだ。
「知っていれば結界の攻略は容易い。奴隷を買う為の人々もこの結界の中に入らなければならないからな」
 こうしてキョウヤとメルティは奴隷の売買が行われているであろう集落へと足を踏み入れた。
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