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106話 魔神の軍勢 その6
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「この空間吹き飛ばし? 魔法を使ったのは誰? 出て来な……」
エステラは広場(グラウンド)に集められた生徒たちの前でそう話した。彼女は怒ってはおらず笑顔を見せてはいるが、逆らう場合は容赦なく殺す腹積もりでもいる。
「おい、リキッド……! 立てよ……!」
「そうだよ……! 俺達まで巻き込むなよ……!」
「お、おまえら……!」
16歳の少年同士で罪? のなすりつけ合いが行われていた。エステラたちからすれば、面白い光景ではあるが、彼らからすれば必死なのだ。
「そこの少年が、この空間魔法の使い手ね?」
「く……そ、そうだ……」
矢面に立たされたリキッドは、外見年齢は同じくらいの少女相手に力なく答える。
「じゃあ、この魔法の実験台はあんたでいいよね?」
「えっ……!?」
「おい、エステラ……」
レドンドの言葉は遅かった……。エステラは覚えたばかりの空間制御魔法をリキッドに向けて放ったのだ。その展開速度、破壊力共に、本家であるはずの彼のものとは比較にならないくらいに強かった。
リキッドは断末魔の叫びすらなく、この世から消え去った──。楽に死なせる……という意味ではこれ以上はないとさえ言えるのかもしれない。
「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!!」
「た、助けて……!」
グラウンドに座っている生徒の大半から、そんな言葉が漏れ出して来た。リキッドが消されたことにより、恐怖が彼らを包んでいるのだ。いくら、先に手を出したのがリキッドとはいえ、いきなりの処刑に皆に植え付けられた感情は「逆らえば死ぬ」というものであった。
「あ、いい感じに震えてるじゃない。言っておくけど、正当防衛だからね? いい子にしてれば命は助けてあげるから安心して」
震えあがっている、大半の生徒に向けてエステラは笑顔を振りまいていた。その反応から、脅しは浸透したと考える彼女だが、一人立ち上がる生徒の姿があった。サラ・ガーランドだ。
「……私は、あなた方の主から、この学園の管理を任された身です。先ほどのような振る舞いは、今後は避けてください……あなた方が脅しをかけると、生徒たちは過剰に反応してしまいますので……」
顔中に汗を流しながらも、勇敢に話しをするサラ。レドンドはその状況を無言で観察していた。
「へえ……見たところ、あんたがこの中では一番強そうね。だから、魔神様もそう言ったのか……」
「そちらから仕掛けて来なければ、私たちも無用な血を流す気はありません。それは十分に分かったと思いますけどなぁ」
エステラ、ミヤビ共に、サラの言い分には納得しながらも、やや挑発的な発言となっていた。智司から、サラを殺さないようにという命令は出ていないが、なんとなく彼の無言の意志を感じている二人。同時に同じ「女」としての争いもそこにはあったのかもしれない。
「どのみち、貴様らの生死は我々の気分次第だ……貴様であれば、十分に理解しているだろう?」
「……はい……」
サラはレドンドの言葉に頷くしかなかった。天網評議会序列10位の彼女ですら、レドンドのブレス攻撃を凌ぐことは不可能なのだから……。以前に、嫌という程の実力差を感じ取ったサラは、その後は何も言わずに生徒たちに紛れるように座った。
「くそ……ソウルタワーにも挑戦した俺達やが、何も出来へんのか……?」
「ええ……流石にオーガロード辺りと比較しても、今回の相手は次元が違い過ぎます」
「くそ……!」
サラの言葉を聞いて、ナイゼルは拳で地面を叩く。正義感の強い彼は、このまま魔神の軍勢にいいようにされるのが許せないのだ。リキッドが殺されたことも許せるものではない……しかし、自分では何も出来ないことは、十分に分かっているのだ。
そんな時、学園に近付いてくる影の存在があった……。
---------------------------------
「……あれは」
「おや、意外な程に強大な戦力が居りますなぁ」
レドンドとミヤビは学園に接近してくる敵に真っ先に気付き、視線をそちらに向けた。ブルードラゴン
グリーンドラゴン、レッドドラゴンの3体が迫って来ていたのだ。神話級の怪物がデイトナの街を闊歩している状態と言えるだろうか……。
「レドンドのお仲間が居るみたですなぁ」
ミヤビは亜空間から、専用の扇子を取り出しながら言った。確かに種族から言えばその通りだが、レドンドからすれば迷惑以外の何ものでもない。
「私は知らん……そもそも、智司様に召喚されたのだから、それ以前の記憶などあるわけがなかろう?」
「まあ、それもそうですけど……」
レドンドは智司の配下としてのプライドを持っている為に、この世界の伝説上のドラゴンの仲間とされるのには不満があった。事実、過去に存在していたシルバードラゴンとレドンドでは相違点は存在している。
「それよりも……あの連中にハズキが敗れるとは思えん。宮殿内には、さらに強大な戦力が居るな」
「それヤバイじゃん。さっさと殺しておかないとね。合流とかされたら厄介だし」
「そうですな。早く、倒してしまいましょか」
レドンド、エステラ、ミヤビの3体はそれぞれ臨戦態勢へと移行した。戦略拠点として利用するはずだったランシール学園だが、早くも戦闘が開始されたのだ。
エステラは広場(グラウンド)に集められた生徒たちの前でそう話した。彼女は怒ってはおらず笑顔を見せてはいるが、逆らう場合は容赦なく殺す腹積もりでもいる。
「おい、リキッド……! 立てよ……!」
「そうだよ……! 俺達まで巻き込むなよ……!」
「お、おまえら……!」
16歳の少年同士で罪? のなすりつけ合いが行われていた。エステラたちからすれば、面白い光景ではあるが、彼らからすれば必死なのだ。
「そこの少年が、この空間魔法の使い手ね?」
「く……そ、そうだ……」
矢面に立たされたリキッドは、外見年齢は同じくらいの少女相手に力なく答える。
「じゃあ、この魔法の実験台はあんたでいいよね?」
「えっ……!?」
「おい、エステラ……」
レドンドの言葉は遅かった……。エステラは覚えたばかりの空間制御魔法をリキッドに向けて放ったのだ。その展開速度、破壊力共に、本家であるはずの彼のものとは比較にならないくらいに強かった。
リキッドは断末魔の叫びすらなく、この世から消え去った──。楽に死なせる……という意味ではこれ以上はないとさえ言えるのかもしれない。
「ひ、ひいぃぃぃぃぃ!!」
「た、助けて……!」
グラウンドに座っている生徒の大半から、そんな言葉が漏れ出して来た。リキッドが消されたことにより、恐怖が彼らを包んでいるのだ。いくら、先に手を出したのがリキッドとはいえ、いきなりの処刑に皆に植え付けられた感情は「逆らえば死ぬ」というものであった。
「あ、いい感じに震えてるじゃない。言っておくけど、正当防衛だからね? いい子にしてれば命は助けてあげるから安心して」
震えあがっている、大半の生徒に向けてエステラは笑顔を振りまいていた。その反応から、脅しは浸透したと考える彼女だが、一人立ち上がる生徒の姿があった。サラ・ガーランドだ。
「……私は、あなた方の主から、この学園の管理を任された身です。先ほどのような振る舞いは、今後は避けてください……あなた方が脅しをかけると、生徒たちは過剰に反応してしまいますので……」
顔中に汗を流しながらも、勇敢に話しをするサラ。レドンドはその状況を無言で観察していた。
「へえ……見たところ、あんたがこの中では一番強そうね。だから、魔神様もそう言ったのか……」
「そちらから仕掛けて来なければ、私たちも無用な血を流す気はありません。それは十分に分かったと思いますけどなぁ」
エステラ、ミヤビ共に、サラの言い分には納得しながらも、やや挑発的な発言となっていた。智司から、サラを殺さないようにという命令は出ていないが、なんとなく彼の無言の意志を感じている二人。同時に同じ「女」としての争いもそこにはあったのかもしれない。
「どのみち、貴様らの生死は我々の気分次第だ……貴様であれば、十分に理解しているだろう?」
「……はい……」
サラはレドンドの言葉に頷くしかなかった。天網評議会序列10位の彼女ですら、レドンドのブレス攻撃を凌ぐことは不可能なのだから……。以前に、嫌という程の実力差を感じ取ったサラは、その後は何も言わずに生徒たちに紛れるように座った。
「くそ……ソウルタワーにも挑戦した俺達やが、何も出来へんのか……?」
「ええ……流石にオーガロード辺りと比較しても、今回の相手は次元が違い過ぎます」
「くそ……!」
サラの言葉を聞いて、ナイゼルは拳で地面を叩く。正義感の強い彼は、このまま魔神の軍勢にいいようにされるのが許せないのだ。リキッドが殺されたことも許せるものではない……しかし、自分では何も出来ないことは、十分に分かっているのだ。
そんな時、学園に近付いてくる影の存在があった……。
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「……あれは」
「おや、意外な程に強大な戦力が居りますなぁ」
レドンドとミヤビは学園に接近してくる敵に真っ先に気付き、視線をそちらに向けた。ブルードラゴン
グリーンドラゴン、レッドドラゴンの3体が迫って来ていたのだ。神話級の怪物がデイトナの街を闊歩している状態と言えるだろうか……。
「レドンドのお仲間が居るみたですなぁ」
ミヤビは亜空間から、専用の扇子を取り出しながら言った。確かに種族から言えばその通りだが、レドンドからすれば迷惑以外の何ものでもない。
「私は知らん……そもそも、智司様に召喚されたのだから、それ以前の記憶などあるわけがなかろう?」
「まあ、それもそうですけど……」
レドンドは智司の配下としてのプライドを持っている為に、この世界の伝説上のドラゴンの仲間とされるのには不満があった。事実、過去に存在していたシルバードラゴンとレドンドでは相違点は存在している。
「それよりも……あの連中にハズキが敗れるとは思えん。宮殿内には、さらに強大な戦力が居るな」
「それヤバイじゃん。さっさと殺しておかないとね。合流とかされたら厄介だし」
「そうですな。早く、倒してしまいましょか」
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