婚約破棄令嬢、不敵に笑いながら敬愛する伯爵の元へ

あめり

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24話 ガールストーク その1

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「つまり……宿での休憩もせずに、デートを終えたのですね?」

「ま、まあ……あと、ミランダのそれは気が早すぎるわよ!」


 その夜、街で泊まることになったアイリーン達は、アルガスも含めて、タイネーブが滞在している宿を紹介してもらった。現在は、タイネーブの部屋で3人の女性陣が集まっている。アルガスは別室で護衛と待機中だ。


「あははは、おもろい娘やなホンマに。伯爵から求愛受けて、考えさせてください言うたんやろ?」

「勿体ないですね。アルガス伯爵がその気だったのだから、そのまま誘惑してゴールインでよかった気が致します」


 タイネーブはそれ程でもないが、呆れるのはミランダだ。なにやらキャラが変わって来ているような印象さえある。

「ミランダ……あなたって、そういうキャラだっけ……?」

「どうでしょうか。私はアイリーン様が幸せになるのなら、いくらでも変わります。そして、アルガス伯爵と添い遂げるのが、今のところ一番よろしいかと感じております」


 まだまだ伯爵との仲も親密になったというほどではないかもしれない。しかし、金鉱山の件の一応の解決など含め、信頼関係は着実に育んでいるのだ。


「それに、あなたのすべてを知りたいと言った伯爵の言葉に、なぜ拒否を示したのですか? アイリーン様は何も隠されるやましいことなどないはず……」

「……」


 ミランダですら知らない事実。アイリーンは彼女の知っている人物ではないのだ。それをもしもカミングアウトしてしまえば、この関係にも溝が出てきてしまうかもしれない。

 だから、ミランダのそんな自分を信じているという言葉に、彼女は少しだけ怖くなったのだ。

 思ったよりも、自らの正体を明かすことは大事になるかもしれない。アイリーンはそれを悟っていた。


「拒否ではないわよ。少し考えさせてと言っただけ。いきなり、恋人関係って、いざとなると勇気がいるってわかったし」

「それは確かにそうかもしれへんな。いくら良い男の伯爵でも……いや、伯爵やから余計に緊張するか」


 タイネーブの感想は少しズレていたが、今はこういう会話の方が肩の力が抜けて楽しく感じられる。アイリーンは彼女に感謝していた。


「それに、占いのことも気になります。その結果……アルガス伯爵の運命の人は別に居るかのような……その占い師は怪しいですね。明日にでも事情を聴きましょうか。ゲシュタルト王国のウィンドミル王子の手先の可能性も」

 いや、ないから……アイリーンは深読みをするミランダに、苦笑いを浮かべていた。ミランダは賢いが、今の彼女はアホの子に見える。もちろん、アイリーンだけが。


「占い結果の運命の相手っていうのは間違っていないわ」


「……アイリーン様?」


 アイリーンは雰囲気が変わっており、ミランダもそれに気づく。彼女だけが知る事実。彼女は、他人の色恋沙汰を楽しく聞いている、タイネーブに視線を合わせていた。



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