24 / 52
24話 ガールストーク その1
しおりを挟む「つまり……宿での休憩もせずに、デートを終えたのですね?」
「ま、まあ……あと、ミランダのそれは気が早すぎるわよ!」
その夜、街で泊まることになったアイリーン達は、アルガスも含めて、タイネーブが滞在している宿を紹介してもらった。現在は、タイネーブの部屋で3人の女性陣が集まっている。アルガスは別室で護衛と待機中だ。
「あははは、おもろい娘やなホンマに。伯爵から求愛受けて、考えさせてください言うたんやろ?」
「勿体ないですね。アルガス伯爵がその気だったのだから、そのまま誘惑してゴールインでよかった気が致します」
タイネーブはそれ程でもないが、呆れるのはミランダだ。なにやらキャラが変わって来ているような印象さえある。
「ミランダ……あなたって、そういうキャラだっけ……?」
「どうでしょうか。私はアイリーン様が幸せになるのなら、いくらでも変わります。そして、アルガス伯爵と添い遂げるのが、今のところ一番よろしいかと感じております」
まだまだ伯爵との仲も親密になったというほどではないかもしれない。しかし、金鉱山の件の一応の解決など含め、信頼関係は着実に育んでいるのだ。
「それに、あなたのすべてを知りたいと言った伯爵の言葉に、なぜ拒否を示したのですか? アイリーン様は何も隠されるやましいことなどないはず……」
「……」
ミランダですら知らない事実。アイリーンは彼女の知っている人物ではないのだ。それをもしもカミングアウトしてしまえば、この関係にも溝が出てきてしまうかもしれない。
だから、ミランダのそんな自分を信じているという言葉に、彼女は少しだけ怖くなったのだ。
思ったよりも、自らの正体を明かすことは大事になるかもしれない。アイリーンはそれを悟っていた。
「拒否ではないわよ。少し考えさせてと言っただけ。いきなり、恋人関係って、いざとなると勇気がいるってわかったし」
「それは確かにそうかもしれへんな。いくら良い男の伯爵でも……いや、伯爵やから余計に緊張するか」
タイネーブの感想は少しズレていたが、今はこういう会話の方が肩の力が抜けて楽しく感じられる。アイリーンは彼女に感謝していた。
「それに、占いのことも気になります。その結果……アルガス伯爵の運命の人は別に居るかのような……その占い師は怪しいですね。明日にでも事情を聴きましょうか。ゲシュタルト王国のウィンドミル王子の手先の可能性も」
いや、ないから……アイリーンは深読みをするミランダに、苦笑いを浮かべていた。ミランダは賢いが、今の彼女はアホの子に見える。もちろん、アイリーンだけが。
「占い結果の運命の相手っていうのは間違っていないわ」
「……アイリーン様?」
アイリーンは雰囲気が変わっており、ミランダもそれに気づく。彼女だけが知る事実。彼女は、他人の色恋沙汰を楽しく聞いている、タイネーブに視線を合わせていた。
10
あなたにおすすめの小説
女嫌いな騎士が一目惚れしたのは、給金を貰いすぎだと値下げ交渉に全力な訳ありな使用人のようです
珠宮さくら
恋愛
家族に虐げられ結婚式直前に婚約者を妹に奪われて勘当までされ、目障りだから国からも出て行くように言われたマリーヌ。
その通りにしただけにすぎなかったが、虐げられながらも逞しく生きてきたことが随所に見え隠れしながら、給金をやたらと値下げしようと交渉する謎の頑張りと常識があるようでないズレっぷりを披露しつつ、初対面から気が合う男性の女嫌いなイケメン騎士と婚約して、自分を見つめ直して幸せになっていく。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!
近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに!
どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…?
幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り
後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが
他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。
※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です!
※「カクヨム」にも掲載しています
※完結しました!ありがとうございます!
悪役令嬢の逆襲
すけさん
恋愛
断罪される1年前に前世の記憶が甦る!
前世は三十代の子持ちのおばちゃんだった。
素行は悪かった悪役令嬢は、急におばちゃんチックな思想が芽生え恋に友情に新たな一面を見せ始めた事で、断罪を回避するべく奮闘する!
時渡りの姫巫女
真麻一花
恋愛
リィナは村の祭りで、主役である「姫巫女」役に選ばれた。舞の相手は騎士として活躍しているヴォルフ。
あこがれの彼との舞を喜んでいたのもつかの間、リィナは本物の姫巫女へと祭り上げられ神殿に囚われる事となる。
嘆く彼女に救いの手を差し伸べたのは、出会ったばかりの騎士、ヴォルフだった。
(表紙絵は、りょおさんからいただきました)
【完】婚約破棄?望みません。王子の土下座を所望です。
桜 鴬
恋愛
【週末集中連載。4/4 PM18:10完結】
第三王子の婚約者である私は魔術師でもある。私は王命により隣国との戦争にて、広域魔法による稲妻を放ち、布陣を敷く隣国の兵たちを全滅させた。この大量殺戮により、隣国は白旗を上げ停戦となる。しかし避難指示の出ていたはずの自国の村人たちもが、連絡の遅延により巻き込まれ全滅してしまった。
***
「望みのままに。ですか? ならば! 」
「ほう。やはりそなたにも欲はあるのだな? なんなりと申せ。世に叶えられぬことなどない」
戦争の功労者が順に呼ばれ、各自に勲章が渡され望みを聞かれている。今は私の番だった。
「では遠慮なく。後から無理だの不敬罪など、取ってつけないで下さいませ。決して無理難題では有りません」
「父上! コヤツに報奨など必用有りません! 国に献身することは当たり前のことです! 」
この俺様が私の婚約者である第三王子。私の望みはこの王子に……
「では。民に向けて、第三王子からの土下座を要求いたします」
土下座は私にではなく民にです!婚約破棄?それは私からは望みません。なぜ私からは破棄をする必要が?そちらからどうぞ。まあ婚姻するつもりはありませんけど?
これは孤児であった私が本当の自分をみつけ、幸せになるまでの物語。
本編・①~⑦まで。
後日談(もと婚約者。王子side)・㊤㊥㊦
10篇にて完結予定です。
*****
【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか
まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。
己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。
カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。
誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。
ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。
シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。
そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。
嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。
カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。
小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜
みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。
悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。
私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私はただのモブ。
この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。
……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……?
※2025年5月に副題を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる