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23話 デート その3

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「それじゃあ、気が向いたらまた来てちょうだい」

「はい、わかりました」


 ひょんなことから、占い師のシエルテと知り合いになったアイリーンとアルガス。アルガスとしては、デートの最中に面白いお店に立ち寄った程度の感覚だが、アイリーンの気持ちは違った。


「はあ……まさか、運命の人じゃないって言われるとは……」

 アイリーンは明らかに肩を落としている。シエルテの占いは相当に正確だったのだ。本来であれば、タイネーブ・カンパニュラとアルガス伯爵が結ばれることになるのだから。

 勿論、他の男性のルートもあるので、アルガス固定というわけではないが。

 わかってはいても、想像よりもアイリーンの心に突き刺さってしまっていた。


「アイリーン殿。そんなに、結果が不味かったですか?」

「いえ……そういうわけではないんですが……まあ、色々ありまして」

「あなたは不思議な感覚を持っていらっしゃる。金鉱山の時もそうでしたが……そもそも、追放された後にピンポイントで私のところに来たのも不思議ですね」


「………」


 不思議……というのはオブラートに包んだ言葉だろう。アイリーンも察知していた。明らかに彼女の言動は未来を見ているからだ。アルガスもそこまでは気付いていないが、不思議を通り越して、不審に感じていてもおかしくはなかった。

 しかし……


「アイリーン殿」

「は、はい……」

「……あなたのその不思議な言動は、あなたをより魅力的に映しているように思います。私は、あなたに惹かれている」


「な、な、な………」


 街中、往来の真ん中での突然の告白だった。特に周りに聞こえるようには言っていないが、アイリーンの顔は真っ赤になっていた。


「私は、アイリーン殿をもっと見て行きたいと考えています。そして……時がきたら、話せない事柄も教えていただけませんか? 私はあなたとそういう関係を目指したい」


 アイリーンの正体を明かしてほしい。アルガスはそれ程の近しい関係を望んでいた。アイリーンは言葉が出て来ない。なんと答えればいいのか、わからないからだ。


「……」

「いえ、すぐに答えを出していただく必要はありませんよ。もう少し経ってからでも」

「あ、ありがとうございます」


 嬉しかったのは事実だ。しかし、自らの秘密を話す関係になるのは少し躊躇われた。いや、恋人関係にはなりたいと感じてはいるが、正体を明かすことに躊躇いのある彼女であった。

 アルガスは彼女は何か大きな秘密を抱えていると察知している。それを怪しいと感じているのではなく、自分には全てを明かしてほしいと思っているのだ。


「それでは、参りましょうか」

「はい、アルガス伯爵」

 二人は手を繋いで大通りを歩いて行く。近い将来、アイリーンが全てを話す時がくるのか。そして、アルガスはどのように受け止めるのか……彼女の心の中の葛藤は大きくなっていた。
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