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40話 交渉 その1
しおりを挟む「よろしいですかな? くれぐれも粗相のないように……」
アイリーンは女王陛下の泊まる部屋への入室が許された。側近であるフェルナンドに念を押されている状態だ。
「承知いたしました……」
「それでは、入室を許可いたします」
アルガス伯爵の屋敷の中での出来事であるとはいえ、他国の元令嬢が女王陛下に単独で会えることなど異例だ。もしもなんらかの粗相をしてしまえば、すぐさま親衛隊により捕らえられてしまうだろう。現在はデリケートな問題も挟んでいる為に、牢獄行きということもあり得るかもしれない。
「アイリーン・ヴァルハーツと申します。失礼いたします」
「あ、アイリーンちゃん! こっちこっち!」
アルガスの屋敷にある客間の中で最も広い部屋にて、シエラはくつろいでいる。キングサイズのベッドに座りながら、アイリーンに手招きをしていた。
「陛下、私のわがままを受け入れてくださり、本当に……」
「あ、堅苦しい挨拶とかどうでもいいから。ほらほら、座って座って!」
「は、はい……。それでは、失礼いたします……」
アイリーンは戸惑いながら、彼女の座っているベッドに腰を掛けた。元々、緩い性格なことは知っているが、目の前の彼女はさらに緩くなっている。修学旅行中の女子同士の会話を連想させる緩さであった。
「それで、お話ってなにかな? あっ、金鉱山の件かな?」
「あ、いえ……」
「改めてありがとうね! あの金鉱山が私たちの管理下になれば、たくさんの人が潤うしね!」
「ありがとうございます、陛下」
喜んで話しているシエラに対して、話題を無理やり変えるのは逆効果だ。ゲームの中での経験ではあるが、アイリーンは彼女の話を聞くことにした。
「ところで陛下」
「シエラでいいってば」
「では、シエラ様。私はアランドロ女王国の永住者として認めていただけるのでしょうか?」
「そんなの当たり前じゃん! アルガスちゃんが許可してるし、私が言うことでもないけど。金鉱山の成果と併せて間違いないよ」
非常に上機嫌なシエラだ。今なら大丈夫かもしれない……アイリーンは話題の内容を、少し曲げて行く。
「シエラ様、こういうお話はいかがでございますか?」
「ん? な~に?」
アイリーンは内心で、シエラの機嫌を損ねる図を想像してしまった……。もしも上手く行かなかったときのイメージだ。だが、もう遅い……行け、彼女は心の中で何度も叫び続ける。
「金鉱山から今後産出される金も含めて、アランドロ女王国に献上いたします。その代わり、タイネーブを助けていただけませんでしょうか?」
勇気を振り絞ったアイリーンの言葉。それを聞いたシエラの反応は……。
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