39 / 52
39話 今後について その2
しおりを挟むアランドロ女王国の女王シエラ・レオネを説得する……しかも彼女が、首都に戻ってしまう前にだ。それは困難を極めるというよりも不可能を意味していた。
アイリーンの隣に立っているミランダも、首を横に振っている。
「アイリーン様。上手くいくとは思えません。それに……あなた様がなさることではない」
「ミランダ……」
「タイネーブのことを心配するお気持ちはお察し致しますが、過剰なようにお見受けいたします」
ミランダがここまで拒絶するのは珍しいことだ。彼女もアイリーン自身のことであれば協力は惜しまないが……。今回ばかりは事情が違った。
タイネーブはあくまでも他人だ。ミランダとしても友人関係を構築、発展させたいとは考えているが命を懸けるに値する相手とは思っていない。
それに、あくまでも目立った協力をしないだけだ。アランドロ女王国のトップが首を縦に振れば話は違っていた。
アルガス伯爵の下で世話になっているアイリーンとミランダ。あまり事を荒立てるのも得策ではない。
「大丈夫よ。シエラもタイネーブも知らない仲じゃない。私に考えがあるの」
「アイリーン様……? どういうことでしょうか?」
ミランダは戸惑いを見せているが、当然のことだ。アイリーンの記憶としてではない、ゲームプレイヤーの千里としての経験や記憶。それをフル活用しようと考えているのだ。
そうでなければ、女王陛下の考えを変えるなど不可能だ。
「ミランダ。私のこと信じてくれないかな? 時が来たらちゃんと話すから」
「アイリーン様……畏まりました、アイリーン様を信用いたします」
自らに仕えるべきはアイリーン。ミランダの中での忠誠はそれが第一優先となっていた。だからこそ、彼女が真剣に頼み事をすれば、それを最優先に考えるのだ。
「ごめんね、ミランダ。もしも、国外追放とかになったら……」
「大丈夫です。その時はまた、二人で行く宛てを探しましょう」
「そうね。まあ、行く宛てだったら色々あるから心配しないで」
「……そうなんですか?」
上手く行くかはともかく、カンパニュラを操作していた時の恋人候補は数人は居る。彼らの下に向かえば、最悪生活くらいは出来るだろう。
アルガスに迷惑を掛け過ぎるのは、アイリーンとしても望んではいない。もしも、不敬罪などになった場合は、素直に伯爵のところを出ようと考えていた。
「それじゃあ、行って来るわね」
「はい。行ってらっしゃいませ」
アイリーンは元気にミランダに手を振ると、そのままシエラの滞在している部屋に向かって行った。
12
あなたにおすすめの小説
「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い
腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。
お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。
当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。
彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。
『私は“第二”になんて、なりたくない。だから婚約を破棄します』
春秋花壇
恋愛
「恋愛カテゴリにありますが、内容は“家族・地域・社会問題”を描く人間ドラマです」
『私は“第二”になんて、なりたくない。だから婚約を破棄します』
誰かのあとに
並ぶために
この命を磨いてきたんじゃない
微笑むふりをして
手を取るふりをして
名前だけの愛に縛られるくらいなら
一人でいい
でも、自分で選びたい
心の最前列に座ってくれる人を
「君を第二に」
その言葉が降るたび
私の心は音もなくひび割れていった
私のすべてを
“誰かの次”として見られるなら
いっそ何も与えたくない
だから私は
その王冠も、その椅子も、その未来も
全部、返します
私はただ、一人の人として
一番に愛されたいだけだったのに
時渡りの姫巫女
真麻一花
恋愛
リィナは村の祭りで、主役である「姫巫女」役に選ばれた。舞の相手は騎士として活躍しているヴォルフ。
あこがれの彼との舞を喜んでいたのもつかの間、リィナは本物の姫巫女へと祭り上げられ神殿に囚われる事となる。
嘆く彼女に救いの手を差し伸べたのは、出会ったばかりの騎士、ヴォルフだった。
(表紙絵は、りょおさんからいただきました)
冤罪で魔族領に追放されましたが、魔王様に溺愛されているので幸せです!
アトハ
恋愛
「フィーネ・アレイドル公爵令嬢! 私は、貴様との婚約を破棄することをここに宣言する!」
王子に婚約破棄された私(フィーネ・アレイドル)は、無実の罪で魔族の支配する魔族領に追放されてしまいました。
魔族領に降りた私を待っていたのは、幼い頃に助けた猫でした。
魔族にすら見えない猫ですが、魔族領では魔王の右腕として有名な魔族だったのです。
驚いた私に、猫はこう告げました。
「魔王様が待っています」
魔王様が待ってるって何、生贄にでもされちゃうの? と戦々恐々とする私でしたが、お城で待っていたのは私を迎えるための大規模な歓迎パーティ。
こうして私の新天地での幸せな生活が始まったのでした。
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
【完】婚約破棄?望みません。王子の土下座を所望です。
桜 鴬
恋愛
【週末集中連載。4/4 PM18:10完結】
第三王子の婚約者である私は魔術師でもある。私は王命により隣国との戦争にて、広域魔法による稲妻を放ち、布陣を敷く隣国の兵たちを全滅させた。この大量殺戮により、隣国は白旗を上げ停戦となる。しかし避難指示の出ていたはずの自国の村人たちもが、連絡の遅延により巻き込まれ全滅してしまった。
***
「望みのままに。ですか? ならば! 」
「ほう。やはりそなたにも欲はあるのだな? なんなりと申せ。世に叶えられぬことなどない」
戦争の功労者が順に呼ばれ、各自に勲章が渡され望みを聞かれている。今は私の番だった。
「では遠慮なく。後から無理だの不敬罪など、取ってつけないで下さいませ。決して無理難題では有りません」
「父上! コヤツに報奨など必用有りません! 国に献身することは当たり前のことです! 」
この俺様が私の婚約者である第三王子。私の望みはこの王子に……
「では。民に向けて、第三王子からの土下座を要求いたします」
土下座は私にではなく民にです!婚約破棄?それは私からは望みません。なぜ私からは破棄をする必要が?そちらからどうぞ。まあ婚姻するつもりはありませんけど?
これは孤児であった私が本当の自分をみつけ、幸せになるまでの物語。
本編・①~⑦まで。
後日談(もと婚約者。王子side)・㊤㊥㊦
10篇にて完結予定です。
*****
【完結】21距離をおきたいと言れたので、隣国に逃げたけど、、、
華蓮
恋愛
距離をおきたいと婚約者であるレイト王子から告げられ、その横には、妹がいた。
私のもの全てを奪っていった妹。もう、嫌になり、隣国に渡ったアオイ。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜
みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。
悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。
私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私はただのモブ。
この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。
……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……?
※2025年5月に副題を追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる