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42話 交渉 その3
しおりを挟む「信じていただけるかはわかりませんが、お話しいたします」
「は~い、お願いしま~す」
タイネーブへの協力を仰げるのであれば、お釣りが来るくらいだ。そもそも無理してまで秘密にするようなことでもない。
「……」
しかし、問題があった。自分が本当は千里という名のゲームプレイヤーで、アイリーンという令嬢に転生したと言っても意味がない。というより、信じてもらえる自信がなかった。嘘も方便……彼女は思考の末に話し出した。
「実は私には千里眼みたいな能力があって……先を見通せるんです」
「未来を知れるってこと? すご~~い、アイリーンちゃん!」
あっさりと信じるシエラ女王。もちろん演技も入っているだろう、ここからは彼女の質問タイムだ。
「それで、金鉱山で金が出るところも分かってたんだ」
「は、はい。そんな感じです」
「じゃあじゃあ、私の将来のお婿さんとかもわかるの?」
シエラは冗談混じりなのか、それでも興味津々といった瞳で質問をしてきた。アイリーンも面食らっている。
「シエラ女王の旦那様はわかりませんが……例えば、女王国領域にあるシータ雪原には、開拓をすれば大量の食物の供給が可能な場所があります」
「わわ、よく知ってるねアイリーンちゃん! すご~~い!」
設定資料集などに書かれていたことを彼女は話しているだけだ。アランドロ女王国の各地の事実を述べているだけ……しかし、それでもシエラには千里眼で見通しているのだと思わせることが出来た。
「ふ~~ん、すごいんだね、アイリーンちゃんって」
「ありがとうございます、陛下。私の知識と引き換えにタイネーブを救っていただけないでしょうか?」
再びの交渉だ。シエラから切り出してきたことではあるが、アイリーンは頭を下げて懇願した。プレイヤーとして操作していたタイネーブ・カンパニュラ。最早、他人ではなくもう一人の自分のような存在だ。なんとしても助けたいという思いが強まっていた。
「……」
シエラは考え込んでいる。アイリーンからの依頼を聞くべきかどうかをだ。戦争状態になれば、罪のない国民は大勢死んでしまうだろう。女王陛下としてそれは避けなければならない。だが、アイリーンの提案は魅力的でもある。今後の女王国の発展も考慮にいれると……。
「いいよ、タイネーブちゃんに協力してあげる」
「陛下っ!」
シエラは首を縦に振ってみせた。アイリーンは安堵からか、思わず目から涙をこぼしていた。
「ほらほら、アイリーンちゃん。泣かないの」
「ありがとうございます、本当に……!」
「でもでも、今後ともアイリーンちゃんには仕事をしてもらうからね? あと、アランドロ女王国の名前は出せないから。そこんところもよろしく」
「はい、承知いたしました」
あくまでも非公式での協力だ。どの組織が協力しているかはわからないようにするというのが条件に加わった。それでも十分だ……アイリーンは心の底からシエラに感謝し、アランドロ女王国の為に自らの知識を披露することを約束した。
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