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43話 協力体制 その1
しおりを挟むシエラ女王陛下との交渉が終了し、夜が明けた。アイリーンは早速、タイネーブに報告へ向かう。
「……と、いうわけで、シエラ女王陛下から協力許可をもらったわ」
「……ホンマに? 嘘やろ……?」
報告を聞いたタイネーブは目を丸くしていた。それもそのはず、シエラがたった1日で意見を変えたのだから。
「色々と交渉してみてさ、条件付きではあるけれど、あなたのゲシュタルト王国の民衆救援に参加してくれるってさ」
正直、信じられないことだ……タイネーブはどんな魔法をアイリーンが使ったのか、非常に興味があった。
「どんな方法で、あの女王陛下を説得したん? とても首を縦に振る状況じゃなかったやろ?」
「私も興味があります……アイリーン様、何をされたのですか?」
ミランダも興味津々といった表情をしている。もっとも、彼女の場合はアイリーンが無茶な取引をしていないかの方が重要ではあったが。
「大丈夫よ、別に私の身が危うくなることをしたわけじゃないから」
「それを聞いて安心しました」
アイリーンはまず、ミランダを安心させた。その上で、シエラを説得した方法を話そうとしたが、なんと伝えればいいのかわからない。
自らに先見の目があることは、ミランダやタイネーブにも言ったことはないからだ。いくら彼女達二人が相手でも、ゲームプレイヤーであることを明かすわけにはいかない。
「ややこしいから、また時間を置いてから話すわ。それよりもシエラ陛下が、昨日の約束を守ってくれるかどうかの確認をしないと」
「そうやね、じゃあ早速いこか」
「ええ、参りましょう」
まずはそれが重要だ。アイリーンとしてもシエラ自身は信用しているが、女王陛下という立場の人物でもある。フェルナンドら側近と話して、やはり約束は守れないとなるかもしれないのだ。
アイリーンはアルガスが居るであろう応接室の扉をノックした。
「アルガス伯爵、失礼いたします。いらっしゃいますか?」
「これはアイリーン殿。おはようございます」
中にはアルガスの姿があり、アイリーンを見るなり笑顔で挨拶をした。そして……シエラの姿もあった。
「やっほ~~アイリーンちゃん」
「あ……お、おはようございます」
意外に早起きのシエラに面食らいながら、アイリーンも挨拶を交わした。
「どしたの? 血相変えて入って来たみたいだけど」
「あ、いえ……」
アイリーンは少し言葉を濁してしまう。まさか、昨日の約束は大丈夫か? などと直接聞けるわけもない。アルガスを通して、それとなく確認をするつもりであった。
「しかし驚きましたよ。まさか、陛下が協力を承諾していただけるとは」
「へへ~~、まあ条件付きではあるけどね!」
アイリーンは次の言葉を考えていたが、驚くほどあっさりと確認が取れてしまった。シエラは既にアルガスにも協力体制を敷くことを約束していたのだ。
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