7 / 8
7話 メイドのお仕事 その1
しおりを挟むプリムラからメイドとしての適性問題なしという判定を受けたアンネは、その翌日から正式に公爵家の使用人という立場で働くことになった。同時に、プリムラ以外の仕事仲間の紹介もされた。執事や複数名のメイド、秘書など、それなりの人物が働いているようだ。
「よろしく、アンネ。僕たちも全て、ワケアリの面子さ。君の過去についての詮索などはしないし、ドルトムント家に売るような真似は決してしないと約束しよう。これからは、家族と思って接してくれ」
紹介された者の一人、アレク公爵の秘書官を務めるマーベル・ディケイトが、皆を代表してアンネに話しかけた。婚約破棄をされ追放された身……王国の立場で言えば、生きる権利を剥奪されたに近い存在のアンネ。
そんな自分に優しく接してくれるマーベルやプリムラ、そしてアレク公爵……マーベルの後ろに立っている者達も言葉こそ発してはいないが、笑顔でアンネに視線を合わせている。新たな家族が来たことを喜んでいるようだ。
「ありがとうございます。本当に信頼の於ける家族になれるよう、誠心誠意働かせていただきます」
この場には居ないアレク公爵も見据えながら、アンネは深々と頭を下げた。彼女の新しい生活が幕を開けた瞬間であった……。
----------------------------
それから数日の間、アンネはプリムラと一緒に仕事をこなしていくことが多かった。適性は問題なしでも、まだ慣れない作業も多い為、その都度プリムラが教えていく寸法だ。そんな中、清掃に訪れた書斎にて、アレク公爵と秘書官のマーベルが会話しているところに出くわした。
「公爵閣下、書類の提出のついでに日用品の買い出しは必要ありませんと、以前にも申し上げておりますが……」
「今回はまだ購入はしていない。しかし、通り道である以上は私が買い物を行うのが現実的だろう?」
「……それはそうかもしれませんが……」
アンネは二人の会話を聞いて察した。特にシリアスな状況というわけではなさそうだ。アレク公爵が出かける用事のついでに日用雑貨などの買い出しも行うと言っているのか……。確かに、公爵の立場にある者がそれを行うのは違和感があるが。こういった施設を運営しているのであれば、そこまで違和感というわけでもない。
アンネはアレク公爵の人となりを感じながら、二人に声を掛ける。
「あの……よろしければ、私が買い出しに向かいましょうか?」
「アンネ……? いや、しかしそれは……」
アンネの存在に気付いたマーベルは苦い表情をしていた。いきなり新人の彼女に頼むのもどうかと考えたからだ。
「そういえばアンネはまだ買い出しは初めてであったか。ならば、私と同行してくれるか?」
「アレク公爵とですか? は、はい喜んで」
アレク公爵はどのみち買い出しをする気満々のようだ。アンネは初めての買い出しという名目で、彼と一緒に出掛けることになったのである。彼女の内心は少し高揚していた。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?
ヨルノソラ
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」
そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち?
――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど?
地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。
けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。
はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。
ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。
「見る目がないのは君のほうだ」
「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」
格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。
そんな姿を、もう私は振り返らない。
――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。
見捨ててくれてありがとうございます。あとはご勝手に。
有賀冬馬
恋愛
「君のような女は俺の格を下げる」――そう言って、侯爵家嫡男の婚約者は、わたしを社交界で公然と捨てた。
選んだのは、華やかで高慢な伯爵令嬢。
涙に暮れるわたしを慰めてくれたのは、王国最強の騎士団副団長だった。
彼に守られ、真実の愛を知ったとき、地味で陰気だったわたしは、もういなかった。
やがて、彼は新妻の悪行によって失脚。復縁を求めて縋りつく元婚約者に、わたしは冷たく告げる。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
どうぞお好きになさってください
みおな
恋愛
学園に入学して一ヶ月。
婚約者の第一王子殿下は言った。
「学園にいる間くらい自由にさせてくれないか。君が王太子妃になることは決定事項だ。だから、せめて学園に通う二年間は、僕は恋がしたい」
公爵令嬢はその綺麗な顔に冷酷な笑みを浮かべる。
「好きになさればよろしいわ」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる