厄介払いされてしまいました

たくわん

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結婚から半年が経った。

エリアーナとルーカスの関係は良好だった。毎日一緒に領地の仕事をし、食事を共にし、薬草園で植物の成長を喜び合った。

しかし、二人はまだ形式的な夫婦のままだった。

別々の寝室で過ごし、夜は互いに別れて休む。契約上は夫婦だが、本当の意味での夫婦ではなかった。

エリアーナは、それで良いのだと自分に言い聞かせていた。

ルーカスは優しく、尊敬できる人だ。一緒にいて心地良い。でも、それ以上を求めてはいけない。

彼は、情報の手違いで結婚することになっただけなのだから。

ある夜、エリアーナは部屋で一人、窓の外を見つめていた。

月が美しく輝いている。

ルーカスは今、何をしているのだろう。

書斎で仕事をしているのか、それとももう休んでいるのか。

胸の奥に、小さな寂しさが広がった。

一緒にいるのに、夜になると離れ離れになる。

これで良いのだろうか。

翌日、領地を視察している時、村の女性の一人が言った。

「奥方様とルーカス様は、本当にお似合いですね」

「ありがとう」

エリアーナは微笑んだ。

「お二人とも、とても仲が良さそうで。見ているこちらまで幸せになります」

仲が良い。

確かに、二人は良い関係だった。でも、それは本当の夫婦の関係なのだろうか。

その夜、エリアーナは眠れなかった。

寝室のベッドに横たわりながら、天井を見つめる。

ルーカスのことを考える。

優しい笑顔。真剣な眼差し。温かい手。

一緒にいると、心が安らぐ。

でも、それだけで良いのだろうか。

エリアーナは勇気を出して、ベッドから起き上がった。

廊下に出ると、静まり返っている。使用人たちはもう寝ているだろう。

ルーカスの部屋の前まで来たが、ノックする勇気が出なかった。

でも、このままではいけない気がした。

半年間、ずっと曖昧なままだった。

エリアーナは深呼吸をして、扉をノックした。

「ルーカス様」

しばらくして、扉が開いた。

ルーカスは寝間着姿だったが、まだ起きていたようだった。

「エリアーナ?どうしたんだ、こんな時間に」

「あの、少しお話ししてもよろしいでしょうか」

「ああ、もちろん。入って」

ルーカスは部屋に招き入れてくれた。

部屋は質素だが、整頓されていた。机には書類が積まれており、彼がさっきまで仕事をしていたことがわかった。

「座って。何か飲むかい?」

「いいえ、大丈夫です」

エリアーナは椅子に座った。心臓が激しく鼓動している。

ルーカスも向かいの椅子に座った。

「それで、話って?」

エリアーナは、言葉を選んだ。

「ルーカス様は、この結婚をどう思っていますか」

ルーカスは少し驚いたようだった。

「どう、というと?」

「私たちは、半年前に結婚しました。でも、まだ本当の夫婦ではありません」

エリアーナは勇気を振り絞って続けた。

「ルーカス様は、これで満足していますか」

ルーカスは真剣な表情になった。

しばらく沈黙が続いた。

やがて、彼は静かに口を開いた。

「最初は困惑していた」

ルーカスは正直に話し始めた。

「老伯爵に嫁ぐつもりだった君が、若い僕のもとに来た。お互いに戸惑っていた」

「ええ」

「でも、今は違う」

ルーカスはエリアーナをまっすぐに見た。

「君と出会えて、本当に良かったと心から思っている。君は賢く、優しく、領民思いだ。一緒にいると、心が温かくなる」

エリアーナの胸が、高鳴った。

「でも」

ルーカスは続けた。

「君が望まないなら、無理に夫婦になる必要はないと思っていた。君は、情報の手違いで僕のもとに来た。本当は、こんな辺境の領主と結婚するつもりはなかっただろう」

「そんなことは」

エリアーナは首を横に振った。

「私は、ルーカス様と結婚できて幸せです」

「本当に?」

「ええ。ルーカス様は、私を一人の人間として扱ってくれました。私の意見を聞き、能力を認めてくれました。それが、どれだけ嬉しかったか」

エリアーナの目に、涙が光った。

「侯爵家では、誰も私を認めてくれませんでした。でもルーカス様は違った」

「エリアーナ...」

「だから、私は」

エリアーナは勇気を出して言った。

「ルーカス様と、本当の夫婦になりたいです」

ルーカスの目が、わずかに見開かれた。

「本当に、それでいいのか?」

「ええ。私は、ルーカス様と共に生きたい。形だけの夫婦ではなく、心から結ばれた夫婦になりたいんです」

ルーカスは立ち上がり、エリアーナの前に膝をついた。

そして、優しく彼女の手を取った。

「僕もだ、エリアーナ」

ルーカスの声は、感情で震えていた。

「君と本当の夫婦になりたい。ずっと、そう思っていた。でも、君が望まないかもしれないと思って、言い出せなかった」

「ルーカス様...」

「僕は君を愛している」

ルーカスは真剣な眼差しで彼女を見つめた。

「最初は尊敬だった。でも、一緒に過ごすうちに、それは愛に変わった。君なしの人生は、もう考えられない」

エリアーナの涙が、頬を伝った。

「私も、ルーカス様を愛しています」

二人は抱き合った。

長い、長い抱擁だった。

半年間抑えていた感情が、溢れ出した。

「これから、本当の夫婦として生きよう」

ルーカスが囁いた。

「ええ」

エリアーナは微笑んだ。

「ずっと、一緒に」

その夜、二人は初めて、心から結ばれた。

別々の寝室はもう必要ない。

これからは、一つの部屋で、一つのベッドで、共に眠る。

本当の夫婦として。

翌朝、二人が一緒に朝食の場に現れると、使用人たちは嬉しそうに微笑んだ。

セバスチャンは、満足そうに頷いた。

「お二人とも、お幸せそうで何よりです」

エリアーナは頬を赤らめ、ルーカスは照れたように笑った。

二人の新しい人生が、本当に始まった。
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