厄介払いされてしまいました

たくわん

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薬草栽培の計画が決まった翌日、エリアーナとルーカスは城の裏庭を見に行った。

広い庭だったが、長年放置されていたため、雑草が生い茂り、荒れ果てていた。かつては美しい庭園だったであろう痕跡が、わずかに残っているだけだった。

「ここを、薬草園にするのですね」

エリアーナは庭を見渡しながら言った。

「ええ。でも、相当な整備が必要だ」

ルーカスが答えた。

「セバスチャンに、庭師を集めるよう頼もう」

その日の午後、セバスチャンが数名の庭師を連れてきた。年配の庭師長が代表として前に出た。

「奥方様、ルーカス様。私は庭師長のギュンターと申します」

「よろしくお願いします、ギュンター」

「奥方様、この庭をどのようにされたいのでしょうか」

エリアーナは、前夜に描いた設計図を広げた。

「ここを薬草園にしたいのです。ラベンダー、カモミール、ペパーミント、セージ。それぞれに適した場所に植えます」

庭師たちは設計図を興味深そうに見た。

「奥方様、薬草の知識がおありなのですね」

「ええ。王都の庭師から教わりました」

トーマスは感心したように頷いた。

「それは素晴らしい。我々も全力でお手伝いいたします」

翌日から、庭の整備が始まった。

庭師たちは雑草を取り除き、古い根を掘り起こし、土を耕した。重労働だったが、皆黙々と働いた。

エリアーナも毎日庭に出た。

「奥方様、こんな作業を」

庭師たちは驚いた。

「構いません。私も手伝います」

エリアーナは袖をまくり、雑草を抜き始めた。

ルーカスも、仕事の合間に庭に出て手伝った。

「伯爵様まで」

「領地のためだ。当然だろう」

伯爵夫妻が自ら土を触り、汗を流す姿に、庭師たちは感動した。

一週間かけて、庭は見違えるほど綺麗になった。雑草は取り除かれ、土は柔らかく耕され、整然とした畝ができあがった。

「さあ、種を蒔きましょう」

エリアーナは、トマスからもらった大切な種を取り出した。

小さな革の袋から、ラベンダーの種を手のひらに出す。小さな、小さな種。でもこれが、いつか領地を救うかもしれない。

「私がやります」

エリアーナは膝をつき、一粒一粒、丁寧に土に埋めていった。

庭師たちが見守る中、エリアーナは祈るように種を蒔いた。

「育ってください。どうか、この地で根を張り、花を咲かせてください」

ルーカスは、その姿を優しく見守っていた。

彼女は本当に、心を込めて作業をしている。植物を愛し、この領地を愛している。

ラベンダー、カモミール、ペパーミント、セージ。全ての種を蒔き終えると、夕方になっていた。

「お疲れ様でした、奥方様」

庭師たちが深く頭を下げた。

「ありがとうございました。これから、毎日水をやりますので、よろしくお願いします」

「かしこまりました」

その日から、エリアーナの日課が増えた。

朝早く起きて、薬草園に水をやる。土の状態を確認し、雑草があれば抜く。

毎日、毎日、欠かさず世話をした。

ルーカスは、いつも遠くから見守っていた。

「本当に、植物が好きなんだね」

ある朝、ルーカスが声をかけた。

「ええ。植物は嘘をつきません。愛情を注げば、ちゃんと応えてくれます」

エリアーナは微笑んだ。

「侯爵家では、庭に出ることさえ許されませんでした。でもここでは、自由に土を触れる。それが、とても嬉しいんです」

ルーカスの胸が、温かくなった。

彼女は、こんなにも幸せそうに笑う。

一週間が過ぎた。

ある朝、エリアーナが薬草園に行くと、小さな変化に気づいた。

土の表面に、小さな緑色のものが見える。

「これは...」

エリアーナは膝をつき、目を凝らした。

小さな、小さな芽だった。

「芽が出た!」

エリアーナは思わず叫んだ。

城の中にいたルーカスが、慌てて駆けつけた。

「どうした、エリアーナ!」

「見てください、ルーカス様!芽が出ました!」

エリアーナは嬉しそうに指差した。

ルーカスも膝をつき、小さな芽を見つめた。

本当に、小さな緑色の芽が、土から顔を出していた。

「本当だ。芽が出たんだね」

「ええ!きっと、他の種も出てきます」

エリアーナの目には、涙が光っていた。

喜びの涙だった。

「これは、希望の芽だ」

ルーカスが優しく言った。

「この小さな芽が、いつか領地を救うかもしれない」

「ええ。そして、領民の皆さんにも幸せをもたらすかもしれません」

二人は顔を見合わせ、微笑んだ。

それから数日で、次々と芽が出始めた。ラベンダー、カモミール、ペパーミント、セージ。全ての種が、元気に芽を出した。

エリアーナは毎日、薬草園で過ごした。芽の成長を見守り、水をやり、雑草を抜く。

庭師のギュンターも、毎日手伝ってくれた。

「奥方様、本当にお上手ですね」

「ありがとう、ギュンター。あなたのおかげです」

数週間後、薬草園は青々とした若葉で覆われた。

まだ小さいが、確実に育っている。

ルーカスが商人ギルドに連絡を取り、薬草の需要を確認した。

「エリアーナ、良い知らせだ」

ルーカスが嬉しそうに報告した。

「王都の商人が、薬草に興味を持っている。特にラベンダーとカモミールは、高値で買い取ってくれるそうだ」

「本当ですか!」

「ああ。収穫できたら、すぐに売れるだろう」

エリアーナは安堵した。

これで、計画は成功する。

「では、村の人たちにも栽培方法を教えましょう」

「うん。でも、まずは収穫を成功させないと」

「ええ。頑張ります」

薬草園は順調に育ち、グレンフォード城に新しい希望をもたらした。

そして、エリアーナとルーカスの心も、日に日に近づいていった。

毎朝、二人は薬草園で会い、植物の成長を喜び合う。

その時間が、二人にとってかけがえのないものになっていた。
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