落ちこぼれ魔女ですが、悪役令嬢の替え玉やってます

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落ちこぼれ魔女と悪役令嬢①

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「……何してるんですか?」

    まんまとドゥードリシュ先生の弱味を握り仲間に引き込むことに成功した私は一旦公爵家に帰ることにした。これでイチイチ行動や発言の矛盾に突っ込まれなくて済みそうなのでちょっとだけ気持ちが楽になったかも。しばらくヒロインの動向はドゥードリシュ先生に探ってもらう事にしたので(問答無用で)私は自分の事に集中出来そうである。

    と、気分よく帰宅したのだが……


    なぜか、公爵家の玄関ホールにズタボロになったユーリが転がっていた。

    つんつんとつつくと、ゆっくり顔をあげて「……もうちょっと違う言葉が欲しかった……」とボソッと呟く。

    あ、動いた。とりあえず生きているようである。

「で、何してるんですか?」

「ちょっと、ハリケーンがやってきて……。詳しくは夫人に聞いてよ。もう、僕、寝るー」

「そうですか、おやすみなさい」

    わざわざ「バタリ」と口にして倒れるユーリをそのままにして公爵夫人の元へと足を向けることにした。しかしあれでも(一応)王子なのに、あんなにズタボロにされるなんて何があったのかしら?






***






    ……私が目の前にいる。

    思わずそう言いそうになるくらい、“今の私”にそっくりな人物が目の前にいたのだ。

「……もしかして、本物のオフィーリア様?」

    そう、オフィーリアだ。ユーリの婚約者で、見習い騎士と駈け落ちした本物の公爵令嬢がそこにいた。

「……あなたが、ルルーシェラさんね?」

「は、はい……」



    あ、やっぱり違う。改めて見れば、本物は全然違うじゃないか。絵からそのまま抜け出たようなオフィーリアだが、溢れる気品も、滲み出る美しさも、私とは桁違いの完璧な公爵令嬢がそこにいた。

「あの馬鹿王子……ユーリが迷惑をかけてしまいましたわ。本当に申し訳ありません」

    頭を下げる仕草さえもひとつひとつが洗礼されていて、あぁ、これが公爵令嬢なのだ。と思い知らされた気がした。

「……戻ってこられたんですね。あの、見習い騎士の方は……あ、いえ、その」

    つい気になっていた事が口をついて出たが慌てて口を手で押さえる。するとオフィーリアはくすっと笑う。

    そんな微笑みすらも優雅で魅力的で……女の私でもときめきそうになった。こんなに素敵なのに私なんかがどんなに努力したって到底真似しきれるものではないだろう。よく今まで偽者だとバレなかったなと思った。

「いいのよ、ユーリから聞いているわ。私の替え玉にさせられたせいで苦労させてしまって本当にごめんなさい。
    ……あなたにはちゃんと知る権利があるわ。全て、話します」

    オフィーリアに「とりあえず着替えてらして。お茶でも飲みながら話しましょう」と言われソワソワしながら与えられた部屋へと戻った。





    そして、改めてオフィーリアと対面したのだ。オフィーリアが形の良い唇を開くのをドキドキしながら待ったーーーー。

「これはユーリも知らない事なんだけどーーーー実は私、中身が男なんだよね」


「……へ?」   

    にっこりと天使の微笑みでとんでもない事を言うオフィーリアに、間抜け面を見せてしまったのはしょうがないと思う。
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