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9、貴公子の手腕(ロゼリア視点)
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「大丈夫だ、今日は授業も休みにしたから時間はたっぷりあるぞ」
「本当ですか!嬉しい!」
わたしを見てなにやらニヤニヤしているフレなんとか殿下。たぶん本人は格好いい自分に酔っているのだろうけど、わたしから見れば滑稽なピエロにしか見えない。
そういえばさっき廊下を教師の方たちが歩いていたけれど、おひとりは顔にケガをしていたようだった。まさかこのフレなんとか殿下に殴られたのか?
表情も怒っていたり悲しんでいたり……これはもしかしなくても、わたしの態度を報告に行ったものの聞き入れてもらえなかったって感じだろうか?いくら作戦だとはいえ、教師の方たちには申し訳なく思う。しかしまさか王子ともあろう立場の人間が簡単に暴力を振るうなんて……なんとも浅はかだ。
そう、わたしはめちゃくちゃ性格の悪い女を演じている。実は勉強やマナーレッスンは完璧だ。何と言ってもあのお義姉様仕込みなのだから。授業中も「テイレシア様に負けず劣らず、素晴らしいです」とよく誉められた。だが合格の判を貰った瞬間、わたしはまるて別人かのように振る舞っていたのだ。
ちなみに参考にしているのは腐女子仲間の方が執筆されている所謂“薄い本”からである。
その本の主人公は男なのに無理矢理女装させられ女として育てられた。そこに迫り来る悪の手(男)。しかし危ないところを助けてくれた相手(男)に一目惚れ。だが自分が本当は男だと打ち明けられず相手からの好意を切り捨てるために悪態をつきわがままな演技をする。そして最後は男だとバレてしまうが、それでも「性別なんてこの愛の前にはなんの障害にもならない」とふたりは結ばれるんです。そこからのイチャイチャがそれはもう――――。 おっと、脱線してしまった。
とりあえず、この王子がどれだけ女を見る目が無く、テイレシアお義姉様がどれだけ素晴らしい女性であったかを周りにしらしめているのである。
「殿下、ご紹介しますね。こちらがわたしの遠縁にあたる、ジークハルト・アルファン伯爵です」
ガゼボに待機してもらっていたジークにい様が立ちあがりフレなんとか殿下(もう、名前を覚える気はない)に美しい仕草で挨拶をした。
「お初に御目にかかります、第1王子殿下。ジークハルト・アルファンと申します」
ジークにい様の長く煌めく銀髪がさらりと肩から落ち、紫水晶のような瞳を細めて微笑んだ。ジークにい様は物腰が柔らかだし、線も細めなので勘違いされやすいが……そう、バリバリの肉食である。
おっと、ジークにい様の目が一瞬ギラッと鋭く光った。長年見てきたせいかわたしにはすぐにわかった。これは獲物をロックオンした証しだと!
よくやった、フレなんとか殿下!あなたはジークにい様の御眼鏡にかなったようだ。ちなみにこれは腐女子界では最上級の誉め言葉である。
「……う、うむ。……」
おーっと、フレなんとか殿下が!あの“格好いい自分大好き”自意識過剰勘違い王子が!ジークにい様を見て一瞬怯んだぁー!絶対自分が世界一格好いいと思ってるあの阿呆がジークにい様の美貌にみとれた――――!
「フレデリック殿下と、お呼びしても?」
さりげなく王子の手に触るジークにい様。
“最初のね、ボディタッチは、さりげなく”
がジークにい様の座右の銘である。
端から見れば王族に忠誠を誓う家臣のようだが次の瞬間ジークにい様の瞳が王子の目を捕らえた。
「!」
1秒目。右側からアップで眺めたい!
2秒目。左側から少しひいて見つめたい!
3秒目。全体を心の額縁に飾りたーーーーい!
その光景を見ていたわたしの脳内では、ジークにい様と王子の周りに薔薇が咲き乱れキラキラとエフェクトがかかっている。
……くっ、誰かわたしに紙とペンを!王宮に来てから執筆活動をしていないので禁断症状がでそうになったがここはぐっと理性でこらえるのだった。
「……うっ、あ、うむ。ロ、ロゼリアの親戚なら俺にとっても親戚になるのだからな。よろしく頼むぞ、アルファン伯爵」
しかしフレなんとか殿下は、少し動揺する様子は見せるもジークにい様から視線を反らして返事をして手を引っ込めた。
……耐えた?!ジークにい様の眼力に耐えたわ!!――――あいつなかなかやるわね?!
だが、わたしの中でフレなんとか殿下の評価は1ミリも上がらなかった。
「……ローゼ、悪いけどお茶のおかわりをお願いしてもいいかい?」
「はい、ジークにい様」
これはジークにい様の合図だ。わたしはジークにい様とフレなんとか殿下をふたりきりにするためにガゼボに背を向ける。
「ロゼリア、茶なら侍女を呼べば……」
「いいえ、殿下。久しぶりにお会いしたジークにい様にはわたしの淹れたお茶を召し上がって頂きたいのです。殿下にもお持ちしますからおふたりで男同士の語らいでもなさってて下さいね」
にっこりと笑顔を見せると「ロゼリアの淹れたお茶……」と鼻の下を伸ばす始末。許されるならその顔面にぶっかけてやりたい。
うふふふ……これは久々にジークにい様の本気が見れるかもしれません。
あの伝説の秘技……ノンケすらも夢中にさせると言う“腐しだらな愛の吐息”が!!
「本当ですか!嬉しい!」
わたしを見てなにやらニヤニヤしているフレなんとか殿下。たぶん本人は格好いい自分に酔っているのだろうけど、わたしから見れば滑稽なピエロにしか見えない。
そういえばさっき廊下を教師の方たちが歩いていたけれど、おひとりは顔にケガをしていたようだった。まさかこのフレなんとか殿下に殴られたのか?
表情も怒っていたり悲しんでいたり……これはもしかしなくても、わたしの態度を報告に行ったものの聞き入れてもらえなかったって感じだろうか?いくら作戦だとはいえ、教師の方たちには申し訳なく思う。しかしまさか王子ともあろう立場の人間が簡単に暴力を振るうなんて……なんとも浅はかだ。
そう、わたしはめちゃくちゃ性格の悪い女を演じている。実は勉強やマナーレッスンは完璧だ。何と言ってもあのお義姉様仕込みなのだから。授業中も「テイレシア様に負けず劣らず、素晴らしいです」とよく誉められた。だが合格の判を貰った瞬間、わたしはまるて別人かのように振る舞っていたのだ。
ちなみに参考にしているのは腐女子仲間の方が執筆されている所謂“薄い本”からである。
その本の主人公は男なのに無理矢理女装させられ女として育てられた。そこに迫り来る悪の手(男)。しかし危ないところを助けてくれた相手(男)に一目惚れ。だが自分が本当は男だと打ち明けられず相手からの好意を切り捨てるために悪態をつきわがままな演技をする。そして最後は男だとバレてしまうが、それでも「性別なんてこの愛の前にはなんの障害にもならない」とふたりは結ばれるんです。そこからのイチャイチャがそれはもう――――。 おっと、脱線してしまった。
とりあえず、この王子がどれだけ女を見る目が無く、テイレシアお義姉様がどれだけ素晴らしい女性であったかを周りにしらしめているのである。
「殿下、ご紹介しますね。こちらがわたしの遠縁にあたる、ジークハルト・アルファン伯爵です」
ガゼボに待機してもらっていたジークにい様が立ちあがりフレなんとか殿下(もう、名前を覚える気はない)に美しい仕草で挨拶をした。
「お初に御目にかかります、第1王子殿下。ジークハルト・アルファンと申します」
ジークにい様の長く煌めく銀髪がさらりと肩から落ち、紫水晶のような瞳を細めて微笑んだ。ジークにい様は物腰が柔らかだし、線も細めなので勘違いされやすいが……そう、バリバリの肉食である。
おっと、ジークにい様の目が一瞬ギラッと鋭く光った。長年見てきたせいかわたしにはすぐにわかった。これは獲物をロックオンした証しだと!
よくやった、フレなんとか殿下!あなたはジークにい様の御眼鏡にかなったようだ。ちなみにこれは腐女子界では最上級の誉め言葉である。
「……う、うむ。……」
おーっと、フレなんとか殿下が!あの“格好いい自分大好き”自意識過剰勘違い王子が!ジークにい様を見て一瞬怯んだぁー!絶対自分が世界一格好いいと思ってるあの阿呆がジークにい様の美貌にみとれた――――!
「フレデリック殿下と、お呼びしても?」
さりげなく王子の手に触るジークにい様。
“最初のね、ボディタッチは、さりげなく”
がジークにい様の座右の銘である。
端から見れば王族に忠誠を誓う家臣のようだが次の瞬間ジークにい様の瞳が王子の目を捕らえた。
「!」
1秒目。右側からアップで眺めたい!
2秒目。左側から少しひいて見つめたい!
3秒目。全体を心の額縁に飾りたーーーーい!
その光景を見ていたわたしの脳内では、ジークにい様と王子の周りに薔薇が咲き乱れキラキラとエフェクトがかかっている。
……くっ、誰かわたしに紙とペンを!王宮に来てから執筆活動をしていないので禁断症状がでそうになったがここはぐっと理性でこらえるのだった。
「……うっ、あ、うむ。ロ、ロゼリアの親戚なら俺にとっても親戚になるのだからな。よろしく頼むぞ、アルファン伯爵」
しかしフレなんとか殿下は、少し動揺する様子は見せるもジークにい様から視線を反らして返事をして手を引っ込めた。
……耐えた?!ジークにい様の眼力に耐えたわ!!――――あいつなかなかやるわね?!
だが、わたしの中でフレなんとか殿下の評価は1ミリも上がらなかった。
「……ローゼ、悪いけどお茶のおかわりをお願いしてもいいかい?」
「はい、ジークにい様」
これはジークにい様の合図だ。わたしはジークにい様とフレなんとか殿下をふたりきりにするためにガゼボに背を向ける。
「ロゼリア、茶なら侍女を呼べば……」
「いいえ、殿下。久しぶりにお会いしたジークにい様にはわたしの淹れたお茶を召し上がって頂きたいのです。殿下にもお持ちしますからおふたりで男同士の語らいでもなさってて下さいね」
にっこりと笑顔を見せると「ロゼリアの淹れたお茶……」と鼻の下を伸ばす始末。許されるならその顔面にぶっかけてやりたい。
うふふふ……これは久々にジークにい様の本気が見れるかもしれません。
あの伝説の秘技……ノンケすらも夢中にさせると言う“腐しだらな愛の吐息”が!!
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