11 / 26
10、初めての親友(フレデリック視点)
しおりを挟む
……おかしいぞ?どうしてこうなったんだ……?
俺は現在の状況に混乱しつつ、これまでの事を思い出していた。
***
あれからクビにした教師どもの代わりに新たな教師を雇ったが、ロゼリアに対する評価は全く同じだった。なんて見る目の無い奴らなのかと落胆したのをよく覚えている。
テイレシアの評判を前任の教師たちから聞いていたと言う奴等はまたもやロゼリアを酷評したのだ。
なんてことだ!優秀な教師を選んだはずなのにあの前任どもの息がかかっていたとは。と、再びクビにしてやった。しかもよくよく調べれば、最初の教師どもはその業界では“博士”とか“師匠”などと呼ばれる存在だったらしく、この国の若い教師どもはみんなそいつらの弟子だったのだ。俺はこの国の腐った片鱗を見てしまったと頭を抱え、ロゼリアの教師は他国から探して連れてくることに決めた。そして、ロゼリアの為にも俺がなんとしてもこの国を変えなければと新たに決意したのだ。
王宮の中にも不穏分子はたくさんいた。なんと、ロゼリアの身の回りの世話を任せた侍女たちまで口を揃えてロゼリアへの不満を言っていたのだ。
「テイレシア様は使用人を差別したりしせんでした」
「テイレシア様は身分の低い者もちゃんと人間扱いしてくれました」
「テイレシア様は」
「テイレシア様だったら」
「テイレシア様ならば」
と、王宮で働く者たちがこぞってロゼリアを批判していると報告を受けて目眩を感じた。
何に目眩を感じたかって?そんなの、あの毒婦が手当たり次第に自分の毒を撒き散らしていたという事実にだ。
ロゼリアが差別をしただと?馬鹿馬鹿しい。彼女は未来の王子妃だ、俺の妻になる女なのだ。身分の低い使用人が馴れ馴れしくしていいはずがないだろう。ロゼリアはちゃんと身分の差と言うものをわかっている賢い娘だ。それなのにテイレシアは老若男女、下級貴族から平民上がりの使用人にまで分け隔てなく接していただと?!
あいつらがテイレシアの事をなんと評していたと思う?「慈愛の女神」だと!「テイレシア様が王子妃になられたら、この身を捧げて忠誠を誓うつもりでした」などと言う王宮騎士までいたんだぞ?!
あいつら王家に忠誠を誓っているはずだろう?!なんで個人的に忠誠を誓うなんて言い出すんだ?!意味がわからん!
まさか堅物で有名な騎士たちまでテイレシアに毒されていたとは……あいつはとんだ尻軽女だ!あんな女と婚約していたと思うと虫酸が走る!!
あの日、ロゼリアに親戚だというアルファン伯爵を紹介されてから4日が過ぎた。
ガゼボでふたりきりになった時、アルファン伯爵は俺の味方だと囁いてきたのだ……。
そしてなぜか、その日からアルファン伯爵は王宮に泊まっている。いや、許可したのは俺なんだが。
アルファン伯爵は悩める俺の相談役になってくれた。親身に話を聞いてくれて、男同士なのだから無礼講だと。それまで友と言う名の取り巻きしかいなかった俺は、はじめて心の底から話し合える相手を見つけた気がした。
アルファン伯爵は毎夜寝室にやって来て俺の悩みや愚痴を聞いてくれた。彼はロゼリアのこともよく知っているから俺の知らないロゼリアを教えてくれるのも嬉しかった。
アルファン伯爵は不思議な男だ。
俺から見てもとんでもなく美しいと思う。しかし、やたらなんというか……時々こそばゆい感覚になってしまうのだ。
耳元で甘く囁かれると頭の芯が時折痺れるような感覚に陥る。男同士なのだから気にする必要はないのだが、彼の指先が俺の……その、わざわざ際どい場所に触れてくる気がしてならない。いや、俺の思い過ごしだと思うのだが。
でも……それが彼の親愛の示し方なのだろうかとも思ってしまう。何の抵抗もなく自然に彼は俺の心に染み込んできたのだ。俺の中にあったはずの警戒心はとっくの昔にほぐれてしまっていた。
これが親友と言うものかと、嬉しささえも覚えたものだ。
***
「フレデリック殿下、僕とふたりきりの時はあなたはとても可愛らしいですね。とても魅力的だ」
「ア、アルファン伯爵……っ?!」
な、なんだこれ……なぜか胸の奥がきゅんきゅんする――――?!
耳元でそんな言葉を囁かれ、我に返った俺は自分の心臓の鼓動の煩さに戸惑った。
あぁ、それにしてもなぜだ。……今現在、なぜ俺はアルファン伯爵の膝の上に乗っているのか?!
俺は現在の状況に混乱しつつ、これまでの事を思い出していた。
***
あれからクビにした教師どもの代わりに新たな教師を雇ったが、ロゼリアに対する評価は全く同じだった。なんて見る目の無い奴らなのかと落胆したのをよく覚えている。
テイレシアの評判を前任の教師たちから聞いていたと言う奴等はまたもやロゼリアを酷評したのだ。
なんてことだ!優秀な教師を選んだはずなのにあの前任どもの息がかかっていたとは。と、再びクビにしてやった。しかもよくよく調べれば、最初の教師どもはその業界では“博士”とか“師匠”などと呼ばれる存在だったらしく、この国の若い教師どもはみんなそいつらの弟子だったのだ。俺はこの国の腐った片鱗を見てしまったと頭を抱え、ロゼリアの教師は他国から探して連れてくることに決めた。そして、ロゼリアの為にも俺がなんとしてもこの国を変えなければと新たに決意したのだ。
王宮の中にも不穏分子はたくさんいた。なんと、ロゼリアの身の回りの世話を任せた侍女たちまで口を揃えてロゼリアへの不満を言っていたのだ。
「テイレシア様は使用人を差別したりしせんでした」
「テイレシア様は身分の低い者もちゃんと人間扱いしてくれました」
「テイレシア様は」
「テイレシア様だったら」
「テイレシア様ならば」
と、王宮で働く者たちがこぞってロゼリアを批判していると報告を受けて目眩を感じた。
何に目眩を感じたかって?そんなの、あの毒婦が手当たり次第に自分の毒を撒き散らしていたという事実にだ。
ロゼリアが差別をしただと?馬鹿馬鹿しい。彼女は未来の王子妃だ、俺の妻になる女なのだ。身分の低い使用人が馴れ馴れしくしていいはずがないだろう。ロゼリアはちゃんと身分の差と言うものをわかっている賢い娘だ。それなのにテイレシアは老若男女、下級貴族から平民上がりの使用人にまで分け隔てなく接していただと?!
あいつらがテイレシアの事をなんと評していたと思う?「慈愛の女神」だと!「テイレシア様が王子妃になられたら、この身を捧げて忠誠を誓うつもりでした」などと言う王宮騎士までいたんだぞ?!
あいつら王家に忠誠を誓っているはずだろう?!なんで個人的に忠誠を誓うなんて言い出すんだ?!意味がわからん!
まさか堅物で有名な騎士たちまでテイレシアに毒されていたとは……あいつはとんだ尻軽女だ!あんな女と婚約していたと思うと虫酸が走る!!
あの日、ロゼリアに親戚だというアルファン伯爵を紹介されてから4日が過ぎた。
ガゼボでふたりきりになった時、アルファン伯爵は俺の味方だと囁いてきたのだ……。
そしてなぜか、その日からアルファン伯爵は王宮に泊まっている。いや、許可したのは俺なんだが。
アルファン伯爵は悩める俺の相談役になってくれた。親身に話を聞いてくれて、男同士なのだから無礼講だと。それまで友と言う名の取り巻きしかいなかった俺は、はじめて心の底から話し合える相手を見つけた気がした。
アルファン伯爵は毎夜寝室にやって来て俺の悩みや愚痴を聞いてくれた。彼はロゼリアのこともよく知っているから俺の知らないロゼリアを教えてくれるのも嬉しかった。
アルファン伯爵は不思議な男だ。
俺から見てもとんでもなく美しいと思う。しかし、やたらなんというか……時々こそばゆい感覚になってしまうのだ。
耳元で甘く囁かれると頭の芯が時折痺れるような感覚に陥る。男同士なのだから気にする必要はないのだが、彼の指先が俺の……その、わざわざ際どい場所に触れてくる気がしてならない。いや、俺の思い過ごしだと思うのだが。
でも……それが彼の親愛の示し方なのだろうかとも思ってしまう。何の抵抗もなく自然に彼は俺の心に染み込んできたのだ。俺の中にあったはずの警戒心はとっくの昔にほぐれてしまっていた。
これが親友と言うものかと、嬉しささえも覚えたものだ。
***
「フレデリック殿下、僕とふたりきりの時はあなたはとても可愛らしいですね。とても魅力的だ」
「ア、アルファン伯爵……っ?!」
な、なんだこれ……なぜか胸の奥がきゅんきゅんする――――?!
耳元でそんな言葉を囁かれ、我に返った俺は自分の心臓の鼓動の煩さに戸惑った。
あぁ、それにしてもなぜだ。……今現在、なぜ俺はアルファン伯爵の膝の上に乗っているのか?!
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
答えられません、国家機密ですから
ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。
編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?
灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。
しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?
護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜
ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。
護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。
がんばれ。
…テンプレ聖女モノです。
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!?
元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる