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番外編2 リーゼロッテの悩み
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まるで彫刻のような美しい肌の上を汗が一滴滑り落ちて、ポタリと音を立てる。
彼の指先がそれを追うように肌を弄び、痺れるような快感を与えた。
「あぁ、お願い、許して……お義父様」
「ふふ、可愛い僕のランスロット……」
こうして美しく成長したランスロットは義理の父である男に開発されていったのだったーーーー。
「おい、リーゼロッテ。これはなんだ?」
ぺしっ。と丸めた本で頭を叩かれた。なにやら怒気を含んだその声にそっと振り向くと、幼なじみのランスロットがにっこりと微笑んで後ろに立っていた。しかも額に青筋をたててだ。
あ、やべ。手に持っているのって私の新刊だわ……。お、怒ってる……?
「えーと。おはよー、ランスロット。い、いい天気ね?」
「窓の外見てみたか?朝からどしゃ降りだよ」
「ど、どこでそれを手にいれたの?」
「義父上の信者が献上してきたぜ?」
なんと、腐女子の中に裏切り者がいたのかぁ!?せっかくこっそり作って楽しんでいたのに!
「お前ら腐女子の間では義父上をモデルにするのはご法度なんじゃなかったのか?しかも俺まで出しやがって……この本は出版差し止めだ」
「えぇぇ~っ?!そんな殺生な!ジークハルトおじさんの実名は出してないわよ?!」
「まず俺を出すなっていってんだ!」
その昔、美少年キラーとして名を馳せたジークハルトおじさんは“腐薔薇の貴公子”の名を返上し結婚してしまった(男と)。だからその養子となったランスロットは幼い頃から英才教育を受けてきたはずなのに、なんとも厳しいのである。
「お前も一応王女なんだから、ちょっとはおしとやかにしたらどうなんだ?」
「大きなお世話だわ」
私は思わず大きなため息をついてしまった。それでなくても最近は大好きなおばさまが結婚してしまったせいで遊んでもらえる時間が減ってしまったのだ。だからこそ少しでも楽しみを増やしたいと思っていたのに……まったく、昔は一緒に“萌え”や“腐”について萌談していたはずなのに大きくなってからのランスロットはなにかと冷たい。あんなに男と男の愛について熱く語り合っていたのにだ……!
「もう!ランスロットはそんな態度だから、私の婚約者なんかに任命されちゃうのよぉ!」
「それはお前が、候補者の男どもを全員そっちの世界に染めたからだろうがぁ!!」
またもやぺしっ!と頭を叩かれ、ランスロットに怒られたのだった。
ああん、もう。やっぱり私の婚約者に選ばれたこと怒ってるじゃないかしら? 一応自由恋愛が許されてはいるから相手は女性でもダメでは無いのだけど、私は女性が好きと言う訳でもないので(男同士のカップルは好きだが)やはり婚約者は男性で……となったのだが、これでも(一応)王女なので最初は他国の王子や高位貴族の息子なんかが候補者に選ばれたわけだが……。
ええ、みごとに染めてやりましたよ……!なんといっても、ローゼおば様直伝ですからね☆
幼い頃に宣言した通り、他国の王子と公爵家の令息はカップル成立☆でもランスロットに略奪愛なんてどう?と勧めたらバッサリお断りされたけど……くすん。
そんな訳で候補者の少年たちは全員そっちに走ったので、幼なじみで私の扱いがよくわかっているランスロットが婚約者になってしまったのだ。
私としてはランスロットとならなんだかんだと楽しそうなので別に不満はないんだけど、ランスロットの方はそうではないようである。婚約が決まってからは目が合うと反らしたりするし、なんだかソワソワしてるし……もしかしてこの間、ランスロットが婚約者になったのが嬉しくて思わずほっぺにキスしたから嫌われた?!
やはりジークハルトおじさんの義息子だから、女にキスされるのは嫌だったのかしら?でもランスロットに(男の)恋人がいるとは聞かないしなぁ。
つまり、幼なじみで本性を知ってる女(私)が婚約者じゃ気にくわないけど王命だから仕方なくってことよね……。確かにランスロットは伯爵家だから逆らえないか。ごめんね、ランスロット。
ロゼリアの英才教育の賜物によりすっかりBLに染まったリーゼロッテが、自分の回りにいる少年たちをどんどんそっちの世界へ引きずり込んだ結果。伯爵家の養子であるランスロットしか婚約者になれる相手がいなくなったのである。……だがランスロットも照れ隠ししているだけで満更でもないのだが、その真意にリーゼロッテが気づくのはまだまだ先かもしれない。
終わり
彼の指先がそれを追うように肌を弄び、痺れるような快感を与えた。
「あぁ、お願い、許して……お義父様」
「ふふ、可愛い僕のランスロット……」
こうして美しく成長したランスロットは義理の父である男に開発されていったのだったーーーー。
「おい、リーゼロッテ。これはなんだ?」
ぺしっ。と丸めた本で頭を叩かれた。なにやら怒気を含んだその声にそっと振り向くと、幼なじみのランスロットがにっこりと微笑んで後ろに立っていた。しかも額に青筋をたててだ。
あ、やべ。手に持っているのって私の新刊だわ……。お、怒ってる……?
「えーと。おはよー、ランスロット。い、いい天気ね?」
「窓の外見てみたか?朝からどしゃ降りだよ」
「ど、どこでそれを手にいれたの?」
「義父上の信者が献上してきたぜ?」
なんと、腐女子の中に裏切り者がいたのかぁ!?せっかくこっそり作って楽しんでいたのに!
「お前ら腐女子の間では義父上をモデルにするのはご法度なんじゃなかったのか?しかも俺まで出しやがって……この本は出版差し止めだ」
「えぇぇ~っ?!そんな殺生な!ジークハルトおじさんの実名は出してないわよ?!」
「まず俺を出すなっていってんだ!」
その昔、美少年キラーとして名を馳せたジークハルトおじさんは“腐薔薇の貴公子”の名を返上し結婚してしまった(男と)。だからその養子となったランスロットは幼い頃から英才教育を受けてきたはずなのに、なんとも厳しいのである。
「お前も一応王女なんだから、ちょっとはおしとやかにしたらどうなんだ?」
「大きなお世話だわ」
私は思わず大きなため息をついてしまった。それでなくても最近は大好きなおばさまが結婚してしまったせいで遊んでもらえる時間が減ってしまったのだ。だからこそ少しでも楽しみを増やしたいと思っていたのに……まったく、昔は一緒に“萌え”や“腐”について萌談していたはずなのに大きくなってからのランスロットはなにかと冷たい。あんなに男と男の愛について熱く語り合っていたのにだ……!
「もう!ランスロットはそんな態度だから、私の婚約者なんかに任命されちゃうのよぉ!」
「それはお前が、候補者の男どもを全員そっちの世界に染めたからだろうがぁ!!」
またもやぺしっ!と頭を叩かれ、ランスロットに怒られたのだった。
ああん、もう。やっぱり私の婚約者に選ばれたこと怒ってるじゃないかしら? 一応自由恋愛が許されてはいるから相手は女性でもダメでは無いのだけど、私は女性が好きと言う訳でもないので(男同士のカップルは好きだが)やはり婚約者は男性で……となったのだが、これでも(一応)王女なので最初は他国の王子や高位貴族の息子なんかが候補者に選ばれたわけだが……。
ええ、みごとに染めてやりましたよ……!なんといっても、ローゼおば様直伝ですからね☆
幼い頃に宣言した通り、他国の王子と公爵家の令息はカップル成立☆でもランスロットに略奪愛なんてどう?と勧めたらバッサリお断りされたけど……くすん。
そんな訳で候補者の少年たちは全員そっちに走ったので、幼なじみで私の扱いがよくわかっているランスロットが婚約者になってしまったのだ。
私としてはランスロットとならなんだかんだと楽しそうなので別に不満はないんだけど、ランスロットの方はそうではないようである。婚約が決まってからは目が合うと反らしたりするし、なんだかソワソワしてるし……もしかしてこの間、ランスロットが婚約者になったのが嬉しくて思わずほっぺにキスしたから嫌われた?!
やはりジークハルトおじさんの義息子だから、女にキスされるのは嫌だったのかしら?でもランスロットに(男の)恋人がいるとは聞かないしなぁ。
つまり、幼なじみで本性を知ってる女(私)が婚約者じゃ気にくわないけど王命だから仕方なくってことよね……。確かにランスロットは伯爵家だから逆らえないか。ごめんね、ランスロット。
ロゼリアの英才教育の賜物によりすっかりBLに染まったリーゼロッテが、自分の回りにいる少年たちをどんどんそっちの世界へ引きずり込んだ結果。伯爵家の養子であるランスロットしか婚約者になれる相手がいなくなったのである。……だがランスロットも照れ隠ししているだけで満更でもないのだが、その真意にリーゼロッテが気づくのはまだまだ先かもしれない。
終わり
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