【完結】可愛い義妹は最強腐女子でした〜義妹が私に婚約破棄を突き付けた王子をそっちの世界に引きずり込もうとしている件〜

As-me.com

文字の大きさ
25 / 26

番外編1 フレデリックの末路

しおりを挟む
※ホラーチック注意。ヤンデレ系が苦手な方はご注意下さい。



 美しく完璧だった王子から平民へと落とされたあの運命の日からすでに数年。俺は毎夜まくらを涙で濡らして過ごしていた……。



『僕は、結婚します』



 そう言って俺の前から立ち去っていったジークハルトの後ろ姿が俺の脳裏にこびりついて忘れられないでいたのだ。

 あれから俺は王宮を追い出され、街の端っこに建てられた小さな家へと押し込められてしまった。それは、まるで犬小屋のようなボロ屋だった。ついでとばかりに猫の額ほどの小さな畑を与えられ、ここでひとりで生きていけと渡されたのはわずかばかりの金でしかなかった。

 こんなのでどうやって暮らせと言うのか?!ふざけるな!と俺をここへ連れてきた兵士に喚いたが「平民にとしてはかなり贅沢な暮らしができるだけの設備と金額だ」と冷たく言い捨てられたのだ。

 なにが贅沢な暮らしだ!俺は悔しさでいっぱいだった。

 雨風がしのげるだけの屋根と壁の小屋に貧相なベッドが備えられているだけの寝室。小さなテーブルとイスはどう見てもディナーのフルコースなど並べられるはずもない。さらにはトマトとキャベツが実っているだけの小さな畑。そしてこれまで普段から俺が着ていたような衣服と宝石を買ったらすぐ無くなってしまうくらいしかないわずかな金のどこが贅沢なのだ。きっと俺がなにも知らないと思って騙されたのだろうなと思うと、じわりと涙がでた。みじめでならない。

 はぁ……ジークハルトはどうしているのだろうか。あのときは結婚すると言われて動揺してしまったが、この静かな小屋でひとりで考えていたらやっと冷静にジークハルトの言葉を理解できたのだ。

 きっと、ジークハルトは母上に脅されていたのだろう。と。

 だからこそ、あの場では俺を見捨てるような発言をしたのだ。そうしなければ俺を酷い目に合わすなどと言われたに違いない。たぶん、どこかで母上が見張っていたのだろう。

 だから事が落ち着けばきっとジークハルトは俺を迎えに来てくれるはずだ。平民にはなってしまったが、ある意味それは俺とジークハルトの間にある障害が無くなったということなのだと気づいたのだ。

 だから……俺はここでジークハルトを待つよ。いつか白いタキシードに身を飾ったジークハルトが薔薇の花束を持って俺の前に現れるまで……。

だから、だから、だから……。早く、俺を迎えに来て……ジークハルト………………………………。









 しばらくして、養子になった新しい王子が国王になったと噂が流れた。なんでも新たな法律を作り、同性同士の結婚が可能になったとか。

 俺は久々に心を踊らせた。ジークハルトはきっとこれを待っていたのだとわかったからだ。

 だから……俺はジークハルトがいつ迎えに来てくれてもいいように、一歩も家から出ずひたすら扉の前に佇んでいたんだーーーー。

















それからxx年後。



「……あれっ。ねぇ、あの廃墟みたいな家って誰か住んでいたっけ?」

「さぁ?あんな街の端っこにある家なんて興味もないし知らないな。うーん、確かだいぶ昔に誰か住んでたってじぃちゃんが言ってたような気はするけど……」

「屋根が今にも崩れ落ちそうだし、せっかくの庭も荒れ放題だね。もったいないね」

「まぁいいじゃん。そんなことより、早くお祭りに行こう!」












 俺はずっとここで、いつまでも待っている。


 俺の愛しい人をーーーー。


(フレデリックEND)
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。 しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。

答えられません、国家機密ですから

ととせ
恋愛
フェルディ男爵は「国家機密」を継承する特別な家だ。その後継であるジェシカは、伯爵邸のガゼボで令息セイルと向き合っていた。彼はジェシカを愛してると言うが、本当に欲しているのは「国家機密」であるのは明白。全てに疲れ果てていたジェシカは、一つの決断を彼に迫る。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜

咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。 もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。 一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…? ※これはかなり人を選ぶ作品です。 感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。 それでも大丈夫って方は、ぜひ。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

聖女解任ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私はマリア、職業は大聖女。ダグラス王国の聖女のトップだ。そんな私にある日災難(婚約者)が災難(難癖を付け)を呼び、聖女を解任された。やった〜っ!悩み事が全て無くなったから、2度と聖女の職には戻らないわよっ!? 元聖女がやっと手に入れた自由を満喫するお話しです。

処理中です...