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4 【お嬢様と執事】私のお嬢様が可愛い過ぎるのでつい溺愛してしまうのですが、なんの問題もありません

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    私の執事はなんでも出来る完璧執事だ。はっきりいって使用人10人分の仕事もすぐさまこなしてしまうくらい有能である。
    我が家は公爵家でそれなりに仕事量も多いのだがこの執事にとったら全て朝飯前らしい。

    さらに言えば見た目も完璧で、艶やかな黒髪と光加減でルビーのように紅く見えるその瞳に魅了され目が合っただけで腰くだけになった女性の数は計り知れない。まぁ、本人はなんにも気にしていないみたいだけれど。






    そんなある日、私は婚約者である第2王子に婚約破棄されてしまった。しかも国外追放のおまけつきだ。

    婚約破棄は別にいい。私だってあんな女タラシな王子なんか好きじゃないし、婚約破棄だけなら喜んで受けたのだが……まさかあんなバカげた罪で断罪されるなんて思いもしなかった。しかも冤罪だ。

    ……っていうか、あの男爵令嬢って誰?

    私はハッキリ言って興味の無いことは覚えられない性格だ。ほんの一握りの友達や、衝撃的な印象でもあれば記憶に残るのだがそれ以外はサッパリなのである。だいたい面倒臭がりだからややこしそうな人には近づかないようにしてるし、知らない人に視線を向けられるとキモッ!って思ってしまってつい逃げてしまうのだ。

    ……いやもう、ほんと誰?あんな子学園にいたっけ?

    その誰だかよくわからない男爵令嬢をイジメた罪で国外追放される。らしい。

    あのちゃらんぽらん王子の恋人ねぇ……。一応、婚約者は私だったはずなんだけど?そういえばこの1年くらいずっと避けられてたから久々に顔を見た気がする。はぁ、やっぱり王子に関わるとろくなことがない。

    それでもさすがにその場で国外追放には出来なかったみたいで一旦屋敷に帰された。去り際に王子が「逃げるなよ!」と怒鳴り散らしてたけど、婚約者で公爵令嬢の私を国外追放する権力なんてあんた持ってないだろうがよ!ばーか!

    そんなわけで疲れ果てて屋敷に帰り、思わず執事に愚痴を言う。今回のパーティーは婚約者にエスコートされる予定だったので執事は屋敷で待っていてくれたのだ。まぁ、エスコートどころか婚約破棄されたけど。

    私の愚痴を笑顔で聞いてくれる執事。だが私が極度の人見知りだとか、婚約者の浮気相手をイジメる度胸なんかないとか、泣いて逃げて転けるとか……それって悪口じゃないのよーっ?!

    思わず頬を膨らませてギロリと執事を睨むが、指先でつんと頬をつつかれ「誉めているのですよ?」とキョトンとした顔で首をかしげられてしまった。

    あぁ、なんか一緒に話を聞いていたお父様がすんごい怒ってるわ。王家を訴えるって……いやいや、婚約破棄は別にいいのよ?国外追放がめんどくさいだけだから。よく知らない男爵令嬢をイジメたってのもちょっと調べたら冤罪だってわかるだろうし。

    今にも城へ乗り込もうとするお父様を止めてもらおう執事の方を見たら、なんと執事も怒っていると言うではないか。
え?まさか冤罪なんかかけられた私が情けないとかって思ってるとか?……あ、違うの?ほっ。

    え?今から出かけるから外出許可が欲しいって別にいいけど……どこに行く気なわけ?全て任せろって……。
    そんな微笑まれながら言われたらダメって言えないじゃない。







***






    翌日、王子は廃摘され国外追放となり、浮気相手の男爵令嬢は虐めの自作自演を認めて自ら修道院へと入ったことを伝えるとお嬢様は一瞬目を丸くしてから半目で私を見てきました。

    なんですか、その顔は?可愛いですね。

    おっと旦那様のお耳にも噂が届いていたようで「どうやらかなり怯えながら逃げていったらしいぞ。ふん、いい気味だ!」と口元をにやつかせておられます。

    そうですね、あの時の絶望したような怯えた顔はいい気味でした!

「それと、婚約破棄については白紙に戻してもらいました。もちろん国外追放も無しですよ。こちらが王家からの謝罪文書とお詫びの品だそうです」

    びっちりと謝罪文の書かれた紙を見せ、詫びの品だと根こそぎぶんどってきた宝石類をテーブルに並べましたが、旦那様には「よくやった!」と言われましたよ?





「お嬢様、お茶をお持ちしました」

「ありがとう。ねぇ……あなた何をしたの?」

「そんなたいしたことなどしていませんよ?本当の事を言わないと死ぬより酷い目に合うと理解していただいただけです。……ただ、お嬢様の憂いを晴らすのは私の役目ですので少々張り切ってしまいました」

 にっこりと微笑んでそう言えば、諦めたようにため息をつかれました。ふふ、そんな顔をしても口元がうっすら喜んでおられますよ?どうやら憂いは晴れたようですね。

 たった一晩で状況を一変させた私の正体ですが、実は悪魔だったりします。
 その昔、お嬢様に偶然ですが魔方陣から呼び出されてしまいまして。まぁ、色々あって契約してしまったわけですが、いつかお嬢様の魂を引き取るまでお側にいると宣言させて頂いております。

    悪魔である私がなぜ人間の娘に執事として仕えているのか不思議に思われるかもしれませんが……気に入ってしまったのです。もう、それはそれは可愛くて仕方がないのですよ。だからかついお嬢様のためならやり過ぎてしまうことがありますが……特に問題はないでしょう。

    お嬢様は困ったように、それでいて可愛らしく目を細めて「困った執事ね」と私を見ました。

「お褒めに預かり光栄です」

    今回はお嬢様の色々な表情が見れたので私としては満足です。が、今後お嬢様に新しい婚約者などがあてがわれるようなら先に手を打たないといけませんね。などと考えてしまいました。今回の婚約者(阿呆王子)は私が出会う前からの婚約者だったので諦めてましたが、私より後から出会う男などにお嬢様をお任せなど出来ませんから。

    だって、まだまだお嬢様を愛し足りません。お嬢様が溺れる程の愛を注ぎ、私がいなくては生きていけなくなるまで。ね?

 



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