転生したらチートスライムになりまして。~前世の前世も悲惨だった事を思い出したので三周目の人生はモンスター生活を満喫します~

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どうやら進化をしちゃいまして(他作品とのリンクあり)

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『なんて事しちゃってるんですかぁぁぁぁ!!』

    小さな白い人が信じられない程の大きな叫び声を森に響かせる。耳がキーンってするくらい(耳は無いけど)びっくりした。もしかしたらとんでもないことをしでかしてしまったのだろうかと慌てた。

『あ、あのっ!私、なにかしちゃったんでしょうか?!』

     わたわたと取り繕おうとしたがぷにぷにの体はくねくねと波打つだけだった。

    すると私に美味しい物をくれた謎人物が「うーん」と顎に手を当ててじっと私を見てくる。

    なんか、見られてる……。あの美味しい翻訳機は食べてはいけないものだったのだろうか。美味しかったのに。

    すると顎から手を離し、その手で白い小さな人の頭をポンポンと軽く叩く。

「まぁまぁ、落ち着いてヴィー。このスライムもなにやら訳アリのよ『あんたに言っとるんじゃい!』わかった、わかったってば。ボクだってまさかスライムが金属まで溶かして吸収するなんて思わなかったんだよ。悪かったって」

『あ……あのユーキさんが、あぁあぁぁ謝るなんてぇ!?もう世界が滅亡すぶっ?!』

    謎人物が肩をすくめて謝罪を口にすると白い小さな人が怯えたように体を震わせ……舌を噛んでいた。スライムには口も舌もないけれど、前世や前前世の記憶から痛そうだなぁ。と思って私はそのやり取りを眺めていたのだった。








***








『あのっ!これとっても美味しいですねっ!』

    謎人物……ユーキさんは私の目の前に美味しい物を山積みにしてくれて「どうぞ、召し上がれ」と言ってくれた。なんだかよくわからないが嬉しい!

じゅわっ!

『う~ん、こっちは甘くて、こっちはマイルドな酸味……最高過ぎる……っ!』

「あぁっ!それはわたしの愛用してる〈なんでも捕まえる君〉です!食べないで下さい~っ」

    最初に私を食べようと捕まえた人はフリージアさんと言うそうだが、フリージアさんが持っているものも美味しそうだったのでつい手を伸ばしてしまった。どうやらスライムとなった私はかなりの食いしん坊らしい。……いや、これは前世の因果かもしれない。いつも粗末な残飯ばかり食べていたからその反動がスライムの食欲を掻き立てるのだ。

「こら、スライム。フリージアを困らせたらダメだよ」

    ユーキさんが顔を近づけてきたので思わずその顔にかかっている眼鏡に手を伸ばした。

『でも、まだ食べ足りない……じゃあ、これくださいっ!』

「「あっ」」

    ユーキさんとフリージアさんが同時に叫ぶが眼鏡は一瞬で私の体内に取り込まれた。

    んっ?んんっ?これは……!

『お、美味し~いっ!極上ですぅぅぅ!!』

「ユーキさまのご尊顔があぁぁぁぁ!!」

    なんて美味しいのだろうと歓喜の舞いを披露しそうになる。このユーキさんの力が込められている物は本当に美味しい。これらの物は全てユーキさんが作った物だと聞いて驚いたが、もうユーキさんの作った物以外食べられない!と思うくらいに私はその味の虜になった。

    私が生まれて初めての満足感にうっとりしていると、フリージアさんが涙を流しながらユーキさんを「最近お顔を拝ませてくれなかったから~っ!ありがたや~!」とブツブツ呟きながら拝んでいるけど……なんで?

    あれ?そう言えば、ユーキさんは眼鏡を取るとかなり印象が違う気がする。イケメンだ。ボサボサの髪もダサい白衣もなぜか眼鏡を取った瞬間からかっこよく見えるではないか。やはり謎人物だ。

「予備の眼鏡どこにやったけ……」

    ガサゴソと白衣のポケットを探り新たな眼鏡を取り出すユーキさん。さすがにあれまで欲しがったら怒られるかな。まぁお腹いっばいで満足したからどのみちいいか。

    そう言えばあの小さい人……ヴィーさんが私の事を『クイーンスライムの跡継ぎ』だとか言っていた。どうやら私を食べたあの巨大スライムがそのクイーンスライムだったようだ。私はただ単に食べられたわけではなく新たな森の守護神の“核”に選ばれたらしい。なにをどうしたらそんな重要な役に見初められたのか。

    それにしてもヴィーさんはなんでそんなこと知っているのだろう……えっ、元神様なの?うわぁー……神様って本当にいるんだぁ。

    ん?ヴィーさんが神様なら、の神様って誰なんだろう?さすがに神様不在じゃ世界が滅亡しないだろうか?

    そんなことをぼんやりと考えているとヴィーさんがやけくそに叫んでいた。

『……ーーーーへ?そんなにモンスターっているのかって……言っときますけどユーキさんたちが普段食べてるシシイーノや、あの古代種の巨大魚もモンスター属性ですからね!』

    ヤバイ。やはりこの人たちモンスター食べるんじゃん!スライムで良かった。もし他のモンスターの姿だったら絶対に食べられていた気がする。

『ふぅ~、お腹いっぱいでふぅ』

    けふっ。と小さなゲップが口から出ると満腹感からか体がテローンと伸びた。

    あぁ、幸せ……。そう思った瞬間。私の体にビリッと亀裂が走り……とんでもないことになった。


「あ……あぁっ?!大変です、ユーキ様!」

    フリージアさんが私を見て叫ぶ。

   頭の中が真っ白になり、何かの感情がフラッシュバックするかのように流れてくる。それは永遠のような 一瞬のようなそんな不思議な感覚の中で、私のに確かな変化が起こった。

『よっしゃあ!成功です!』

「成功ねぇ……」

    ヴィーさんとユーキさんの声がはっきりと耳に届いた時、私は進化・・を遂げたのだ。

    私の中に刻み込まれて融合したのはユーキさんの“力”。私はそれを“遺伝子”として体の細胞に受け入れた。

    そして、驚いた様子で私を見るユーキさんに向かってそれまでは体の動きでしか表現出来なかったそれをちゃんと顔の筋肉を動かして見せることができた。

    目を細め、唇の口角をあげて歯を見せる。そう、私は彼女の遺伝子を受け継いだ存在となったのだ。だから私にとっての彼女の敬称を笑顔で口にする。



『おかーさん!』と。

    

    遺伝子を取り込み理解して、やっとユーキさんが女性だとわかったんだけどね。



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