【完結】続・攻略対象者に殺されかけた悪役令嬢は、治癒師の御主人様になる

As-me.com

文字の大きさ
15 / 21

《15》悪役令嬢は名推理を閃く

しおりを挟む
 猫耳少年……獣人国の皇太子からプロポーズされたあの日から1週間。もはやバカンスどころでは無くなりそれはもう怒涛の1週間があっという間に過ぎたのだった。


 まず、あれから3日後にお父様がやってきた。ほとんど寝ていないのか目の下には隈がはっきりと刻まれている。どうやら徹夜でしばらく分の仕事をやり終えて休暇をねじ込んできたらしい。入れ替わりで執事長が公爵邸に帰宅した。お父様が帰るまでに色々と調整しておくとのこと。

「……旦那様!」

「あぁ、愛しいマーリルシュエ。すまない、君にあんなお願いをしてしまった疎かな夫を許してくれ。あの元アホ王子よりは数倍マシだったし、なによりもエメリアの拗らせた初恋相手だったものだから……」

「いいえ、わたくしもまさかあの男があんなヘタレだったなんて……もう少しスマートで手早く、それでいて丁寧にわかりやすく告白してサクサク進めなくてはエメリアちゃんにわかるはずもない事すら理解できていないなんて思わなかったのです。
 ーーーーエメリアちゃんの拗らせた初恋相手でさえなければとっくに捩じ切ってやりましたのに」

 やつれ気味のお父様の側にお母様が駆け寄る。その誰よりも近い距離感にさすが愛し合っている夫婦だと感心するが、久しぶりの夫婦の会話の内容はあまり穏やかではなかったようだ。なんて言ってるのかはよく聞こえなかったがふたりの黒い笑顔がそれを物語っている気がしてならない。

「あの、お父様……お母様……」

「どうしたんだい、エメリア。おまえも捩じ切るかい?」

「なにを?!」

 殺伐とした雰囲気に怯えながらおずおずと声をかけると、お父様は極上の笑顔でそう言い、お母様も「一生使い物にならなくしてやりましょう」と頷くのだった。

 よくわからないが、お父様もお母様もだいぶお疲れのようである。


 それからというもの、皇太子は私にベッタリくっついて離れようとしないし、ルークと会おうものなら限りなく邪魔される始末だ。

「御主人様」

「ルーク……」

 数日ぶりに顔を見れたルークはどことなくやつれているようにも見える。ルークは私の手を握り締め、そっと微笑みを見せてくれた。

「やっとふたりきりになれたね、御主人様」

「皇太子がトイレに行っている隙に抜け出してきたの。なぜか急におなかの具合が悪くなったみたいで……」

 私の手料理をどうしても食べたいって言ったから、唯一自信のあるシチューを作ったんだけど……ひと口食べた後に真っ青になってトイレから出てこなくなったのだ。

「普通に海鮮シチューを作ったら、なぜか虹色のシチューになっちゃったの。ヴァイオレットシチューはギリギリセーフだったからレインボーシチューもセーフかと思ったんだけど……発光してなかったから」

 そう言えば料理長が慌てふためいて鍋を取り上げようとしていたけど、以前のヴァイオレットシチューをルークが完食した事をどこからか聞いたらしくて皇太子がどうしても食べるって鍋を奪って食べたのよね。さすがに私だってクッキーみたいにショッキングピンク色だったら食べさせたりしないけど、レインボーだったから大丈夫かなって。だってほら、発光してなかったから。

「うーん、そのおかげでこうして会えたとはいえ、あんなクソガキに御主人様の手料理を食べさせるはめになるとは勿体ないな。……後でオレにもちょうだい?」

「でもルーク。もしかしたら私の手料理は……発光してなくても美味しくないのかもしれないわ。体の丈夫な獣人がお腹を壊すんだもの。シチューだけは自信があったのに……ヴァイオレット以外のシチューはダメなのかも」

「何言ってるのさ。御主人様の料理は全部美味しいよ」

「ルーク……」

 握り合う手に力が入り、お互いの距離が一歩近づく。

 あぁぁぁぁ、やっぱり好き。ルークが目の前にいるだけでここは天国になるのだ。

「ルーク……あの。この間の、私の返事……聞いてくれる……?」

「もちろんだよ、御主人様……聞かせて?」

 心臓の音がやたらと大きく聞こえ出す。でもその音はふたつあって、それがルークの音はだとわかると、私の心臓は破裂するじゃないかと思うくらい鼓動を早めた。

「ルーク……、私、私ーーーールークがす「イチャつくんじゃないっ!!」きゃあっ」


とうとうこの想いをルークに伝えられる。そう確信した瞬間……天井から皇太子が落ちてきて私とルークを引き裂いたのだった。どうやらお母様愛用の天井裏ルートを通ってきたらしい。

 ううっ、また邪魔された!これじゃいつまでもルークに私がルークの事を好きだって伝えられないわ!

「エメリア!もうすぐボクの父上がくるから一緒に出迎えてよ!」

 ルークから引き剥がされ、皇太子が私に抱きついてた。

「えっ!獣人の皇帝が?!ほんとに来たんですか?!」

 皇太子とはこんな感じだが、さすがに皇帝相手にはちゃんとしないと不敬で罰せられるかもしれない。私のせいで国際問題にもなり得る案件なのだ。もし不敬だと訴えられたら、私は元より家族や使用人、もちろんルークにだって被害が及んでしまう。

「ルーク、ごめんなさい!国際問題にだけは絶対にさせないから!」

 私は皇太子をルークに押し付け「皇太子をお願いね」と出迎えの準備をするために急いで部屋に戻ったのだった。








「……なんでお前なんかと抱き合わなきゃいけないんだ!」

「こっちのセリフだ、このクソガキ!せっかくいい雰囲気だったのに!」



 なにやら騒がしい声が聞こえたが、なんだかあのふたり仲良くなってない?やっぱり男同士だと気が合うのかしら。

「ーーーーっ、まさか!」

 その時、私は気付いてしまったのだ。

 皇太子は私にプロポーズしてきたけれど、本当はルーク狙いなのでは?と。だって命の恩人はルークだし、ルークは格好良いし素敵だし、いい匂いがするし素敵だし。同性から見てもすごく格好良いもの!でも皇太子として人の従者を奪うのは体裁が悪いわ。だから私と結婚して従者であるルークを手に入れようとしたのでは……?!

 なんで私なんかにプロポーズしてきたのか不思議だったけれど、それならすんなりと納得出来る。最初にペットになりたいって言ってきたのも、ルークの側にいるためだったのよ。


 ……私ってば名探偵!これはルーク争奪戦だったんだわ!

「……くっ!絶対に負けられない戦いがあるってこうゆうことなのね!」

 そうとわかれば準備にも気合いが入るというものだ。こうなったら向こうからプロポーズを取り下げてもらい、ルークを守るのよ!


しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~

あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。 「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

悪役令嬢のはずですが、年上王子が幼い頃から私を甘やかす気でいました

ria_alphapolis
恋愛
私は、悪役令嬢なのかもしれない。 王子の婚約者としては少し我儘で、周囲からは気が強いと思われている―― そんな自分に気づいた日から、私は“断罪される未来”を恐れるようになった。 婚約者である年上の王子は、今日も変わらず優しい。 けれどその優しさが、義務なのか、同情なのか、私にはわからない。 距離を取ろうとする私と、何も言わずに見守る王子。 両思いなのに、想いはすれ違っていく。 けれど彼は知っている。 五歳下の婚約者が「我儘だ」と言われていた幼い頃から、 そのすべてが可愛くて仕方なかったことを。 ――我儘でいい。 そう決めたのは、ずっと昔のことだった。 悪役令嬢だと勘違いしている少女と、 溺愛を隠し続ける年上王子の、すれ違い恋愛ファンタジー。 ※溺愛保証/王子視点あり/幼少期エピソードあり

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

処理中です...