【完結】ヒロインはラスボスがお好き

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メリケンサック最強伝説

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    やっと上級クラスにたどり着き、近くにいた生徒に声をかけ色黒王子を呼んでもらう。が、

「おぉ、どうしたレディ?わざわざオレの顔を見に来たのか?」

 呼ばれる前に色黒王子の方から来た。やたらとニヤニヤしていて気持ち悪いにも程がある。
 私は出来るだけ平常心を心がけて営業スマイルで答えた。

「いいえ、先生方がどうしてもとおっしゃるのでご挨拶にだけ伺いました。では失礼いたしますね。行きましょう、セバスチャン」

 それだけ一気に伝えると私はくるりと踵を返す。あなたになんか興味ありませんわ!アピールだ。

「まて、レディ!せっかく来たのだ、昼食を一緒にどうだ」

「いえ、これから友人と昼食の約束がごさいますのでご遠慮いたしますわ」

 すると色黒王子は馬鹿にしたように鼻で笑った。

「ふんっ、友人とはあのルチアとか言う生意気そうな女か?この国の王子たちの婚約者らしいが、2人の王子を手玉にとりどちらつかずの尻軽女など、レディの友にはふさわしくなほがぁっ!?」

 ルーちゃんの悪口を言われて思わずメリケンサックで殴ってしまった。私の黄金の右ストレートは健在だ。
 色黒王子は教室の入り口から壁まで吹っ飛んで、少し壁にめり込んでいる。

「……私の親友の事を悪く言うような方と同じ空気を吸うのも嫌なので、もう2度と私の前に現れないで下さいませ」

 私はにっこり微笑んで言った。もちろん目は笑っていない。本当は先生方の顔を立てるためにも数回は通いつつ(ちゃんと通ったと言う証拠を残すため)嫌われていこう思っていたのに、この色黒王子の顔と発言がムカつきすぎる。
 まぁ、1回だけでも来たのだからいいだろう。

「れ、れでぃ、こんなことをして、どうなるか……」

 ちっ、さすが筋肉の塊だけあって気絶はしなかったようだ。(壁にはめり込んだのに)

「なんですか?筋肉自慢の王子ともあろう方が、たかだか小娘ひとりに打ち負かされたと、親に泣きつくんですか?みっともないことですこと」

 自分の発言だがなんとなく女王様モードのルーちゃんに似てきたな。と思った。ブチギレするとこうなる仕様なのだろう。

「お、お前は手に武器をはめているのだから、これは正式な戦いで負けたわけでは……」

「そうですか、私ごときか弱い小娘が護身用の武器を持つことすらも卑怯だと?ご自慢の筋肉があってもこんな武器すら脅威なのでしたら、どうぞ剣でも持ち出して私の事を切り裂かれればよろしいではありませんか。
 だって私は卑怯者なのでしょう?この教室にいる先輩方が証人ですわ」

 ざわっと教室内の空気が揺れた。巻き込んで申し訳ないけど、昼休みとはいえまだほとんどの生徒が見ている前で起きたことなのでしょうがない。

「れ、レディは変わってしまった!運命の出会いをした時のレディは可憐で可愛らしく純粋で、涙を浮かべてオレを見つめていたのにっ!」

 は?それは誰のこと?殴ったことしか覚えてないけど。

「誰が、誰がオレのレディを変えてしまったんだ!オレはそいつを許さない!元のレディに戻ってくれ!」

 色黒王子が叫んでいると、私の後で黙っていたセバスチャンが一歩前に出て、私の肩をつかんだ。

「セバスチャン?」

「アイリ様が変わってしまって、もう昔のアイリ様には絶対に戻らない。と証明してしまえばよろしいのでは?」

 いや、そんなこと言われても。戻るもなにも私は子供の時からこのままなんですが?

「アイリ様はまっすぐ前を向いて立っていてくだされば大丈夫です」

 そう言われ、おとなしく言う通りにする。するとセバスチャンは私の髪をかきあげ、普段は長い髪で隠れている首筋をあらわにした。

 そこには昔、吸血鬼様につけられた小さな傷痕が2つ並んでいるはずだ。しかしこの傷痕は普通の人には見えないはずだし、私も特別に隠してなどいない。
 そういえばこの間から(高熱で倒れてから)セバスチャンが私の髪型を結んだりせずに首筋を隠すかのようなストレートヘアにするようにしていた。私の髪型や服装などは全部セバスチャンに任せているので好きなようにやってもらっているが。(私自身も鏡の前でおとなしく身支度するのは苦手なのでセバスチャンに3秒で身支度してもらった方が楽だからなにも文句などないのだ)

「……なっ!」

 その首筋を見て色黒王子が驚愕する。教室内のざわつきがいっそう激しくなった。

 なんだ、この反応は?!もしかして吸血鬼様の傷痕がみんなに見えてるの?!
 しかし色黒王子と教室内の生徒の顔はみるみる赤くなりざわつきながらも静かになった。

 え?見えてるの?見えてないの?!どっちなの?!
 なんで色黒王子は急にうずくまって動かなくなったの?!

「と言うわけで、もうアイリ様は昔のような純粋なアイリ様には戻れないのでございます。ご理解下さい」

 セバスチャンは私の髪を戻してささっと整えるとにっこり執事スマイルで微笑んだ。

 なんだろう、これって悪口言われてる?昔から純粋に吸血鬼様を観賞用ペットにしたいと思ってるよ?ピュアハートだよ?

「では、失礼いたします」

 セバスチャンに肩を捕まれたままくるりと方向転換され、そのまま上級クラスを立ち去った。

セバスチャンとアイリのいなくなった教室には、うずくまったまま動けない色黒王子を見ないようにしながら、なんとも言えない空気が漂ったとか。




「セバスチャン、もしかして吸血鬼の傷痕を見せたの?」

 廊下を歩きながらさっきのことを質問すると、セバスチャンはクスッと笑いながら私の横に並んだ。

「まさか、あの程度の人間にあの傷痕が見えるはずありません。その辺はアイリ様の方がお詳しいでしょう?」

 まぁ、確かに。この傷痕が見えるのは吸血鬼に関わる者だ。あの中に私と同じように吸血鬼に咬まれた人(だって吸血鬼様はセバスチャンしかいないのだし)や眷属か妖精などがいるとは思えない。が、

「じゃあ、何を見せたのよ?なんで色黒王子はおとなしくなっちゃったの?」

「ちょっとショックを与えてやっただけです」

 私の首は水戸○門の印籠か何かなのか。それとも100年の恋も覚めるくらい酷い首なのか?

「私の首って、見れたもんじゃないってこと?」

「そんなことありませんが、今日はもう誰にも首筋を見せないことをおすすめいたします」

 にっこりとそう言われたのでとりあえず従うが、まったく意味がわからないんですが……。

「一体何がそんなにショックを与えたのかしら?」

 頭の上にクエスチョンマークを浮かべて首を捻る私をセバスチャンが楽しそうに見ていた。

「気まぐれにマーキングしたのが変な所で役にたちましたね」

「え?何か言った?セバスチャン」

「いいえ、なにも。まぁ今夜にでも消しておきます」

「う、うん?」

 よくわからないがセバスチャンの機嫌がよいからいいことにしておこう。とりあえずルーちゃんとお昼ご飯を食べて、それから先生方に謝りに行くか。
 まさか本当に学園が潰されたりはしないだろう。だって学園が無くなったらゲームが続かないもんね。ゲーム内でも先生のデフォルメの変更は無かったはずだし。
 いざとなったら私が責任をとって学園を退学するなどすれば色黒王子が訴えてきても学園の体裁が保たれるだろう。ルーちゃんと離れるのは寂しいが、セバスチャンがいてくれるなら別に学園で無くてもいいのだから。

 こうして私は、色黒王子のフラグを木っ端微塵にできたと軽い足取りでルーちゃんの待つ教室へと急いだのだった。
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