51 / 58
筋金入りのストーカーがぁっ!
しおりを挟む
ドゴンッ!!
寮の部屋の壁が少しへこみ、パラパラと欠片が落ちた。
「……あの男、ムカつく……!!」
皆さんこんにちは。先ほどルーちゃんの悪役令嬢断罪事件でショックで混乱しているところを見知らぬ痴漢男にうっかり襲われかけたアイリです。
なんたる不覚……!セバスチャンが助けてくれなければまだやり直ししてもらってないファーストキスがまたもやピンチに陥るところだった。
あのあと我に返り、しばらくしてから怒りがこみ上げてきた。
「メリケンサックで殴るのなら壁ではなくさっきの痴漢を殴ってください」
「だって、思い出すとムカムカするんだもん!なんか名前知られてたし、勝手に愛称つけられたし、あんなことされたし!」
セバスチャンは軽くため息をつくと、いつの間にかお茶の準備をしている。
「本当に知らない男なんですね?」
「知らないわよ、あんな人。今まで学園でも見かけたことないわ。あんなミルク色の髪なんて目立つし、会ったことあればさすがに覚えていると思うもん」
セバスチャンが「ならばやはりストーカーですね」とお茶を置いてくれた。私は椅子に座りお茶をひとくち飲むと、ふーっと息を吐く。
「ルーちゃん……」
あんな痴漢男なんてかまってる場合ではない。なんとしてもルーちゃんを助けないといけないのに。でもゲームの進行状況が私の知ってるものと全然違うからどうしたらいいのかがわからないのだ。
「ねぇーえ」
金魚鉢からピチャンと青い熱帯魚が顔を出し、鼻(があるのか知らないが)をヒクヒクと動かした。
「また妖精の臭いと、変な臭いがするわよぉ」
「変な臭い?」
「ん~、なんかちょっと獣臭いわぁ。コウモリとは違う臭いよぉ。それに妖精の臭いがぷんぷんするぅ」
ヒレで器用に口の先をつまみ、顔をしかめた。
「……獣?それにこの間から妖精の臭いってずっと言ってるけどあの時の妖精王の臭いがまだついてるってこと?」
最後に妖精王に絡まれてからだいぶたってるのに、妖精の臭いとはどれだけしつこいんだろうか。
「妖精の臭いについては心当たりがございます」
セバスチャンが熱帯魚を指先で金魚鉢に押し戻しながら言った。「ぎゃっ!ぶくぶくぶく……」と熱帯魚が溺れている。なんでも吸血鬼に触られるのは嫌いらしい。
「実は先ほど妖精に呼び出されておりました」
「えぇ?!」
そういえばさっきのルーちゃん事件の時はセバスチャンはいなかったなと思い出す。
「妖精って、あのぼいんちゃん?」
私はあの時の野生のばいんばいん美女を思い出して思わず眉間にシワがよる。吸血鬼様に言い寄ってきてセクハラ(胸を触らせるなど)してきた女の妖精だ。
「違います、子供の妖精でした。おつかいを頼まれたと言っていましたね。
なんでも妖精王の魂が逃げ出して行方不明になったんでそっちで悪さしてるかも。だそうですよ」
セバスチャンがサラッととんでもないことを言ってきた。それってかなりヤバい状況なのではないだろうか?
「あの時妖精王のエネルギーは全部吸いとったので完全に清らかな魂に戻ったと思っていたのですが、やっぱりしつこいですね」
なんだかものすごく、嫌な予感がする。
「もしかして……」
セバスチャンが冷めてしまったお茶を新しく入れ直して私の前にそっと置いた。
「アイリ様が人魚の海に落ちたことも、今回のルチア様のことも、あの妖精王が絡んでいると思われます」
ふと、お母様が「黄緑色の光を見た」と言っていたことを思い出す。そういえば、妖精王の瞳は黄緑色だった。
「……妖精王って、そんなこと出来るの?」
「そうですね。正常な判断力があればやりませんが、魂の状態に憎悪などの感情だけが残っていたとすれば正常な判断力があるとは思えませんから出来るでしょうね」
あの黄緑色の瞳を思い出し、ゾクリと背筋に寒気が走る。
「だから、妖精の臭いがするっていったでしょぉ」
熱帯魚がまた、ピチャンと跳ねたのだった。
寮の部屋の壁が少しへこみ、パラパラと欠片が落ちた。
「……あの男、ムカつく……!!」
皆さんこんにちは。先ほどルーちゃんの悪役令嬢断罪事件でショックで混乱しているところを見知らぬ痴漢男にうっかり襲われかけたアイリです。
なんたる不覚……!セバスチャンが助けてくれなければまだやり直ししてもらってないファーストキスがまたもやピンチに陥るところだった。
あのあと我に返り、しばらくしてから怒りがこみ上げてきた。
「メリケンサックで殴るのなら壁ではなくさっきの痴漢を殴ってください」
「だって、思い出すとムカムカするんだもん!なんか名前知られてたし、勝手に愛称つけられたし、あんなことされたし!」
セバスチャンは軽くため息をつくと、いつの間にかお茶の準備をしている。
「本当に知らない男なんですね?」
「知らないわよ、あんな人。今まで学園でも見かけたことないわ。あんなミルク色の髪なんて目立つし、会ったことあればさすがに覚えていると思うもん」
セバスチャンが「ならばやはりストーカーですね」とお茶を置いてくれた。私は椅子に座りお茶をひとくち飲むと、ふーっと息を吐く。
「ルーちゃん……」
あんな痴漢男なんてかまってる場合ではない。なんとしてもルーちゃんを助けないといけないのに。でもゲームの進行状況が私の知ってるものと全然違うからどうしたらいいのかがわからないのだ。
「ねぇーえ」
金魚鉢からピチャンと青い熱帯魚が顔を出し、鼻(があるのか知らないが)をヒクヒクと動かした。
「また妖精の臭いと、変な臭いがするわよぉ」
「変な臭い?」
「ん~、なんかちょっと獣臭いわぁ。コウモリとは違う臭いよぉ。それに妖精の臭いがぷんぷんするぅ」
ヒレで器用に口の先をつまみ、顔をしかめた。
「……獣?それにこの間から妖精の臭いってずっと言ってるけどあの時の妖精王の臭いがまだついてるってこと?」
最後に妖精王に絡まれてからだいぶたってるのに、妖精の臭いとはどれだけしつこいんだろうか。
「妖精の臭いについては心当たりがございます」
セバスチャンが熱帯魚を指先で金魚鉢に押し戻しながら言った。「ぎゃっ!ぶくぶくぶく……」と熱帯魚が溺れている。なんでも吸血鬼に触られるのは嫌いらしい。
「実は先ほど妖精に呼び出されておりました」
「えぇ?!」
そういえばさっきのルーちゃん事件の時はセバスチャンはいなかったなと思い出す。
「妖精って、あのぼいんちゃん?」
私はあの時の野生のばいんばいん美女を思い出して思わず眉間にシワがよる。吸血鬼様に言い寄ってきてセクハラ(胸を触らせるなど)してきた女の妖精だ。
「違います、子供の妖精でした。おつかいを頼まれたと言っていましたね。
なんでも妖精王の魂が逃げ出して行方不明になったんでそっちで悪さしてるかも。だそうですよ」
セバスチャンがサラッととんでもないことを言ってきた。それってかなりヤバい状況なのではないだろうか?
「あの時妖精王のエネルギーは全部吸いとったので完全に清らかな魂に戻ったと思っていたのですが、やっぱりしつこいですね」
なんだかものすごく、嫌な予感がする。
「もしかして……」
セバスチャンが冷めてしまったお茶を新しく入れ直して私の前にそっと置いた。
「アイリ様が人魚の海に落ちたことも、今回のルチア様のことも、あの妖精王が絡んでいると思われます」
ふと、お母様が「黄緑色の光を見た」と言っていたことを思い出す。そういえば、妖精王の瞳は黄緑色だった。
「……妖精王って、そんなこと出来るの?」
「そうですね。正常な判断力があればやりませんが、魂の状態に憎悪などの感情だけが残っていたとすれば正常な判断力があるとは思えませんから出来るでしょうね」
あの黄緑色の瞳を思い出し、ゾクリと背筋に寒気が走る。
「だから、妖精の臭いがするっていったでしょぉ」
熱帯魚がまた、ピチャンと跳ねたのだった。
5
あなたにおすすめの小説
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった
木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。
今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。
せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。
床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。
その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。
他サイトでもアップしています。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。
《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》
そのご寵愛、理由が分かりません
秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。
幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに——
「君との婚約はなかったことに」
卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り!
え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー!
領地に帰ってスローライフしよう!
そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて——
「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」
……は???
お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!?
刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり——
気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。
でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……?
夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー!
理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。
※毎朝6時、夕方18時更新!
※他のサイトにも掲載しています。
【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました
三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。
助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい…
神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた!
しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった!
攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。
ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい…
知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず…
注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる