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出会い系
ノリで来たぜ空港へ
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山本はマネージャーに電話を掛けていた。要件はもちろん、いつもの気まぐれ、を通すため。電話先のマネージャーは慌てた様な声で「今どこに入るんです!?」と食い気味にかみついて来るが、彼にとっては慣れてしまった。単なる音楽でしかない。
隣で心配そうな顔をする狂山に「大丈夫だよ」の意味を込めてウインクをすると、小声で今喫茶店にいる事を告げる。すぐ様「予定はどうするおつもりですか!?」とヒステリックな金切り声が返ってきた。しかしこれも慣れたものだ。返事の代わりに1ヶ月の長期休暇を宣言し、マネージャーの返事も聞かずに電話を切る。そのままスマホで4人分のツアーを申し込むと、皆に向き直って微笑んだ。
中東アジアの遺跡ツアーに。彼の独断で。この趣味仲間、基いネッ友をエスコートする運びになった。
そこから先は早かった。山本の手配したタクシーに乗り込むと、あれよあれよと言う間に空港へ。今は四人で売店の前に立っている。皆、無事に休暇の手配ができているようだ。学生のくれてつ、未成年の狂山は大丈夫なのだろうか?とほんの少し心配はしたが杞憂に終わったらしい。今は二人ともほとんど年が変わらないという事実に驚いているようだ。
数分後、皆それぞれ買い物を済ませて戻ってきた。以下、それがこのリストだ。
★くれてつ
→缶ジュース(数本)、哲学の本、モバイルバッテリー
★狂山
→小型LEDライト、サバイバル用ロープ、お土産用の刀剣(攻撃力高め)
★山本歳三
→ラムネボトル(たくさん)、おにぎり(たくさん)、虫眼鏡
★カメリアン
→スパークリングワイン、メイク直し用のファンデーション、携帯食料(たくさん)
フライトの時間はあと1時間後。買い物を終えた一行は、カフェで改まって自己紹介をする事になった。
「まずはオレから自己紹介をしよう。」と山本が立ち上がる。勿論ゴリゴリの変装付きで。すぐ様カメリアンから座りなさい、と厳しい声が上がった。
「俺の名前は山本歳三。みんなも知っている通りの…俳優さ。と言っても、自慢できるものはあまり無いよ。強いて言うのであれば、少しばかり薬学の知識が有るくらいか。それと…人よりも運動神経がいいことくらいだ。俳優としてはまだ何もなし得ていないよ。宜しく頼む。」
山本は「完璧な投票」と言う大ヒットドラマで主役を努めた超人気俳優だ。銀色のショートヘアに青色の瞳、厳つい見た目に反して物腰柔らかく思慮深いところが女性に恐ろしいほど人気なのだとか。それを知っているのか、カメリアンは目を細めて「嘘をついては駄目よ」と苦言を呈する。どこに行っても出待ち、出待ち、の人気俳優がなぜこんな場にいるんだろうなんて想う余裕すらもない。
彼を椅子に座らせると、カメリアンが自身をさして自己紹介を続けた。
「私は臨床心理士のカメリアンよ。見ての通り日本人では無いのだけれど…日本に住んでだいぶ長いから言語の差に苦しむ事は無いわ。人間の心理を突き詰めていたらこうなったの…うふふ。でも最近は考古学にも興味が湧いてね。今回の旅行の為に色々と調べてきたのよ。もし皆が悩んだり、怪我をしたらなおしてあげられるから安心して頂戴ね。」
ワインボトルを軽く掲げるカメリアン。柔らかく笑みを浮かべているが、心中は霧がかったように読めない。
そもそも旅先に酒とファンデーションを取っていくこと自体どこか世間知らずなように思えてしまう。しかし、何が起こるか分からない旅先に心理学に強い人間がいるのは有り難いのかもしれない。…彼女が語学に堪能であれば、の話だが。
狂山が手を上げる。視線は一斉にそちらへ向いた。
「…狂山。名前は京山。19だ。ポックスでも話したが、各地を旅する事を生業にしている。」
短すぎる自己紹介。視線はこちらに合わせず、テーブルの上の空のグラスに注がれている。人見知りなのだろうか?山本は助け舟を求めるようにカメリアンを見遣るも、ニッコリと微笑まれただけだ。違うそうじゃない。
「あ、一応趣味で狩猟系の免許は持っている。鹿とか、熊とか、撃退する程度なら…。居合の疑似も趣味で…。」
「それは大したものだな!その若さで良く極めたものだよ!」
興奮気味に口を開く山本の横顔に、カメリアンの窘めるような支線が突き刺さった。狂山はすっかり口を閉ざしてしまったようだ。
口数が少ないとは言え、ここに来たということは多少なりとも自分達に対して好意的な気持ちがあるのではないだろうか?山本はどうしたら彼ともう少し親睦を深められるだろうと思考を深めている。
一同は、まだ自己紹介をしていない青年へと視線を向ける。
「あ、俺の番ッスか。」
水の入ったコップを一気に飲み干したくれてつは、笑顔で軽く片手を上げてみせた。
「くれてつッス。本名は未成年なので聞かないでもらえると有り難いというか…。年は狂山のひとつ下で、18になったばかりッスね。護身の心得を習っていたんで、ある程度力はある方なんじゃないかって思ってるんだけど。」
山本は改めてくれてつを観察してみた。確かに学生の割に確りとしていると思った。所作もどことなく落ち着いているし…一見にこやかに笑顔を浮かべる人物ほど、爆発したときは手に負えないだろう。
自己紹介を終えた一同は、フライトの手続きを取るために場所を移動した。
隣で心配そうな顔をする狂山に「大丈夫だよ」の意味を込めてウインクをすると、小声で今喫茶店にいる事を告げる。すぐ様「予定はどうするおつもりですか!?」とヒステリックな金切り声が返ってきた。しかしこれも慣れたものだ。返事の代わりに1ヶ月の長期休暇を宣言し、マネージャーの返事も聞かずに電話を切る。そのままスマホで4人分のツアーを申し込むと、皆に向き直って微笑んだ。
中東アジアの遺跡ツアーに。彼の独断で。この趣味仲間、基いネッ友をエスコートする運びになった。
そこから先は早かった。山本の手配したタクシーに乗り込むと、あれよあれよと言う間に空港へ。今は四人で売店の前に立っている。皆、無事に休暇の手配ができているようだ。学生のくれてつ、未成年の狂山は大丈夫なのだろうか?とほんの少し心配はしたが杞憂に終わったらしい。今は二人ともほとんど年が変わらないという事実に驚いているようだ。
数分後、皆それぞれ買い物を済ませて戻ってきた。以下、それがこのリストだ。
★くれてつ
→缶ジュース(数本)、哲学の本、モバイルバッテリー
★狂山
→小型LEDライト、サバイバル用ロープ、お土産用の刀剣(攻撃力高め)
★山本歳三
→ラムネボトル(たくさん)、おにぎり(たくさん)、虫眼鏡
★カメリアン
→スパークリングワイン、メイク直し用のファンデーション、携帯食料(たくさん)
フライトの時間はあと1時間後。買い物を終えた一行は、カフェで改まって自己紹介をする事になった。
「まずはオレから自己紹介をしよう。」と山本が立ち上がる。勿論ゴリゴリの変装付きで。すぐ様カメリアンから座りなさい、と厳しい声が上がった。
「俺の名前は山本歳三。みんなも知っている通りの…俳優さ。と言っても、自慢できるものはあまり無いよ。強いて言うのであれば、少しばかり薬学の知識が有るくらいか。それと…人よりも運動神経がいいことくらいだ。俳優としてはまだ何もなし得ていないよ。宜しく頼む。」
山本は「完璧な投票」と言う大ヒットドラマで主役を努めた超人気俳優だ。銀色のショートヘアに青色の瞳、厳つい見た目に反して物腰柔らかく思慮深いところが女性に恐ろしいほど人気なのだとか。それを知っているのか、カメリアンは目を細めて「嘘をついては駄目よ」と苦言を呈する。どこに行っても出待ち、出待ち、の人気俳優がなぜこんな場にいるんだろうなんて想う余裕すらもない。
彼を椅子に座らせると、カメリアンが自身をさして自己紹介を続けた。
「私は臨床心理士のカメリアンよ。見ての通り日本人では無いのだけれど…日本に住んでだいぶ長いから言語の差に苦しむ事は無いわ。人間の心理を突き詰めていたらこうなったの…うふふ。でも最近は考古学にも興味が湧いてね。今回の旅行の為に色々と調べてきたのよ。もし皆が悩んだり、怪我をしたらなおしてあげられるから安心して頂戴ね。」
ワインボトルを軽く掲げるカメリアン。柔らかく笑みを浮かべているが、心中は霧がかったように読めない。
そもそも旅先に酒とファンデーションを取っていくこと自体どこか世間知らずなように思えてしまう。しかし、何が起こるか分からない旅先に心理学に強い人間がいるのは有り難いのかもしれない。…彼女が語学に堪能であれば、の話だが。
狂山が手を上げる。視線は一斉にそちらへ向いた。
「…狂山。名前は京山。19だ。ポックスでも話したが、各地を旅する事を生業にしている。」
短すぎる自己紹介。視線はこちらに合わせず、テーブルの上の空のグラスに注がれている。人見知りなのだろうか?山本は助け舟を求めるようにカメリアンを見遣るも、ニッコリと微笑まれただけだ。違うそうじゃない。
「あ、一応趣味で狩猟系の免許は持っている。鹿とか、熊とか、撃退する程度なら…。居合の疑似も趣味で…。」
「それは大したものだな!その若さで良く極めたものだよ!」
興奮気味に口を開く山本の横顔に、カメリアンの窘めるような支線が突き刺さった。狂山はすっかり口を閉ざしてしまったようだ。
口数が少ないとは言え、ここに来たということは多少なりとも自分達に対して好意的な気持ちがあるのではないだろうか?山本はどうしたら彼ともう少し親睦を深められるだろうと思考を深めている。
一同は、まだ自己紹介をしていない青年へと視線を向ける。
「あ、俺の番ッスか。」
水の入ったコップを一気に飲み干したくれてつは、笑顔で軽く片手を上げてみせた。
「くれてつッス。本名は未成年なので聞かないでもらえると有り難いというか…。年は狂山のひとつ下で、18になったばかりッスね。護身の心得を習っていたんで、ある程度力はある方なんじゃないかって思ってるんだけど。」
山本は改めてくれてつを観察してみた。確かに学生の割に確りとしていると思った。所作もどことなく落ち着いているし…一見にこやかに笑顔を浮かべる人物ほど、爆発したときは手に負えないだろう。
自己紹介を終えた一同は、フライトの手続きを取るために場所を移動した。
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