エメラルドの瞳を持つ神

路地裏れい

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出会い系

【猫】の名を持つガイド

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 現地に到着した一行は、各々装備を整えてカメリアンの手配した車に乗車した。バギーは乗り心地が快適とは言い難いが、贅沢は言ってられない。

 これはあくまでも世間からは隔絶された、秘密の旅だ。…と、狂山は独りごちる。窓の外に映る見知らぬ植物達に思わず目を細めてしまった。隣に座っているくれてつは、スマホなんか取り出してしまったりして忙しなくシャッターを切りまくっている。危機感がないな…やはり子供だからか。なんて思いながらも、荒い運転を堪能しつつ森の奥へ進む感覚に目を見開いた。

 来たことのない地での旅は、不安よりも好奇心が勝つ。ポケットに忍ばせたをそっと一撫でした。彼は皆に隠している事が一つだけあった。彼は冒険家ではなく…

 「そろそろ着くみたいよ、準備を整えましょう!」

 カメリアンの声が聞こえて来て、狂山は視線を前へと向けた。

 荒い運転とも暫くお別れか、なんて笑いながらも到着した先に向かうと…

 「お前たち、ついたのか。お前たち、センセイの知り合いか。」

 たどたどしい日本語で話す、小柄な少年が掘っ立て小屋の前で立っていた。すぐ様カメリアンが自己紹介をしているようだ。くれてつや山本も続々と車から降りていく。自分も行かなければ。

 車を降りると、早速くれてつが近付いてくる。「酔ってない?俺、乗ってすぐに酔っちゃってさ。」と、眉間にシワを寄せて肩を竦めている。年が一つしか変わらないというのもあり、自己紹介の後から急速に距離を詰めてきた。まぁいいのだが…。ポケットから機内食で提供された鮮やかな緑色のブロッコリー(ティッシュ包み)を取り出すと、強引に握らせる。

 食べれば酔がさめると嘘を添えて。くれてつはアッサリと見破ったようだ。いらね、といいポケットにリターンされた。

 「ソレは…」

 すると、奥にいる少年が目を見開きブロッコリーを指差した。少年のそばにいたカメリアンは、どうしたのかしら?と首を傾げている。

 まさか自分のブロッコリーに何かついていたのだろうか。食べ残しを持ってきてしまった事自体が問題なのだろうか。そもそもが、目の前の少年は身なりが良くない。お腹が減っているのだろうか。これはブロッコリーを人知れず消化するいいチャンスなのでは無いだろうか。

 狂山は慣れない笑顔を貼り付けてティッシュの中のブロッコリーを彼へと差し出す。しかし、予想に反して少年は緑色のそれから勢い良く距離を取った。

 「それ…もしかして…」

 「どうしたの?」

 カメリアンが後ろから歩いてきた。オリーブオイルでベトっとしたブロッコリーを少年に向けるこの構図は、あまりにもシュールだったのだろう。彼女はため息を一つ付くと、エチケット袋にブロッコリーを押し込んでからウェットティッシュを狂山へと差し出した。手を拭けと言う事だろう。

 「おどろいた…」

 少年は眉間にシワを寄せながら呟いた。そりゃあそうだ。一同は少年に誘導されてキャンプ地へと辿り着いた。

 キャンプ地で少年は自身のことを話し始める。名は「メオ」と言うらしい。本当の名前は、わからなくなってしまったとのこと。

 「かみさまは声を奪う。かみさまは目を奪う。かみさまはを奪う。たすけてほしい。」

 メオは涙目で一行を見つめる。人助けの為にこの地に来たわけではない、と狂山は思ったが…隣に立つくれてつがやけに燃えていた。なんなら、山本もどこから持ってきたのか?水の入ったペットボトルを箱ごとキャンプ地へと差し出す。「物資はいくつあってもいいからね☆」と笑顔さえ向けて。

 「かみさまは、小道を歩んで、殿に居る。伝承がある。」

 メオの視線の先はテントの中に向けられている。カメリアンが「そこに何かあるの?」と問い掛けると、頷いてから「それ」を持ち出した。

 ソレは子供くらいの大きさの木箱で、蓋はなく細いロープでグルグルまきにされていた。まるで、中身を強引に封じるように。粗雑に、然して強制的に。木箱を彼女へと差し出すと、「開けろ」と言わんばかりに視線を向けてくる。

 カメリアンは戸惑うことなく、ロープに手を掛けた。スルスルと解かれるそれを、一同は固唾を飲んで見つめる。やがて、木箱がゆっくりと開けられると…

 「ひっ!!」

 くれてつは短く悲鳴を上げた。中に入っていたのは、だ。狂山も、自然と木箱から距離を取った。死臭はしないが、大きく窪んだ眼窩に、枝のように細くなった手足、カラカラの遺体に不釣り合いな大粒のエメラルドの装飾。


 カメリアンはしゃがみこんだ姿勢のまま、その猿のミイラをくまなく見つめている。よくそんな物見られるな!と山本が茶々を入れるが、聴こえていないようだ。彼女はミイラに付けられている、エメラルドを注視している。

 (…イミテーション?かなり精度が高いけれど。でも、そんな事は大した問題ではない…。)

 エメラルドの表面に、爪か何かで引っ掻くように記された文字に眉を顰める。現代の文字では無い。解読したいと思えど、文字が飛び飛びになって…

 「神…封じ?」

 バン!と音を立て、メオが強引に木箱の蓋を閉じた。同時にロープで強く巻き付ける。突然の事にカメリアンは虚を突かれた様な表情を浮かべた。

 「そう…。だいじょうぶ。もう、だいじょうぶ。」

 木箱を車へ積んだメオは、酷く怯えているように見えた。まるで「大丈夫」と無理やり言い聞かせているような…。


 「日比野せんせい、たすけてくれるか。」

 一同は顔を見合わせた。見知らぬ土地で、オフ会旅行と決め込もうとしたのだが…。

 断る理由は、無かったようだ。
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