渡辺と彼女

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霜月の雨

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初冬、わたしは道端に一人佇んでいた

初冬と言っても11月中旬で初冬と言うにはまだ早い様な気がするが。あまり寒くないのは唯一の救いだった

もしこのニットの長袖と少し長めのスカートだけで冬本番を過ごしたらわたしはこの道端で息を引き取っていた事だろう

辺りは細雨が烟っていて、視界は決して良いとは言えないが雨音は耳に安らぎを与えてくれていた

流石に雨が降っているだけあって普段より人の通りは少なく、たまに通りかかったと思ったらこちらをちらと怪訝そうな顔つきで見て通り過ぎて行った

しとしとと心地の良い雨音が冷たさと共に身体に伝ってくる

なんとも言い難い心地の良さに全身のありとあらゆる神経を雨音に委ねてわたしは目を瞑り、空から落ちてくる雨粒に色々な想像を膨らませた

地に降る雨は土に吸い込まれて草花や土の中に住んでいる虫達、それと木々や人にも活力と生きる力を与えると同時に害も与え、しかもそれは時に人を死に陥れるというとても酷なものだけどやはりこの丸い地球には必要不可欠な存在という事に変わりはない

もしもわたしが雨粒になったら害をもたらす方には絶対になりたくない

そうは思っていても決めるのはわたしでは無く神様なのだからもし神様が害をもたらす方に行けと言うなら抗いようが全く持って無い。神様はそんなにも情がないのかと自分で勝手に想像して勝手に落ち込む。

空の上に居る神様も甚だ迷惑だろう

でも少しだけ神様に情というものがあってわたしの願いを聞き届けてくれるのなら花の下に落としてくれる事を強く望む

わたしは花の下に落とされたわたしに思いを馳せてみる

地に落ちたわたしは花の糧になりそしていつしか花になりなんとも言えぬ香しい匂いで辺りを包む、そんな花を周りの蝶々や蜜蜂が放って置くわけがなくわたしを求めて飛んで来るのだ
そして蝶々や蜜蜂に吸われたわたしは巡り巡って蝶になり蜜蜂となる

こんな夢のある話があるだろうか

瞼を薄らと開けて外を見ると相変わらず雨は降っていて止む気配がない

わたしはそれでも良いと思っていた。寧ろその方がずっと楽しい

記憶の無いわたしにとって今の事状況は唯一の幸せなのだ。誰にも邪魔をされたくない

そしてまたわたしは瞼を閉じ、自分の世界に溶け込んで行った
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