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一章
013 追われる者
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予想外の事態が起こってしまった。
というのも歩いて2日分は距離があったはずの追跡してきている集団との差が、ここへきてかなり縮まっているのだ。
俺のマップ上では歩いて半日分の距離も無くなっている。
もちろん朝には気付いたので起きてからさっさと朝食を済ませ、すぐに出発した。
レントとエリンは何事かといった様子だったが、俺の顔を見てなんとなく悟ったのだろう。
何も言わずに準備を急ぎ、合わせてくれた。
ずっとマップで確認しているはいるものの、集団のこの動き、何かきっかけでも掴んだのだろうか?
こちらに真っ直ぐと向かってきている。
魔法の残滓や野営の痕跡を消すことは欠かさなかったはずだが……これは単純に匂いや戦闘の痕跡に気が付いたのかも知れない。
さすがになにからなにまですべての痕跡を消してきてはいない。
モンスターの死体などは即収納しているが、争った形跡までは消していなかった。
「我ながら迂闊、だな」
そしてこの集団の移動速度だがかなり速い、このままでは追い付かれるのも時間の問題だ。
「2人とも、歩きながらでいいからよく聞いて」
「わかった」
「はい」
「追ってきてる奴らのペースがここにきてだいぶ上がってる。恐らくあと1時間もしないうちに追い付かれる」
「随分、早いんだね」
「その……大丈夫なのでしょうか?」
エリン、そりゃ心配だよな。
だが、ここはまず先に後顧の憂いを断たなくてはならない。
「レント、今歩いている方向へ真っ直ぐ進むと左手に岩場があるはずだ。そこでエリンと周囲を警戒しつつ待っていてくれないか?」
そこは今のところだがモンスターも少なく、もし戦闘になっても2人ならなんとかなる強さのやつしかいない。
「そんな、エイダンさんと離れるなんて私イヤです!」
エリンは足を止め、不安に満ちた瞳で心情を吐露した。
だが、ここでレントは俺に訴えかけるエリンを制し、冷静な声色で言った。
「……エリン、ここは兄ちゃんに任せよう。きっとオレ達が追って来てる奴らと会っても何もいいことはないと思う。それに万が一にもオレ達が捕まったりしたら兄ちゃんを困らせちゃうよ」
なんともいたたまれないが、レントの言うことは間違っていない。
「兄さん、でも……!」
エリンを落ち着かせないとだな。
「エリン、1度深呼吸して、俺の話を聞いてくれるかい?」
俺はエリンの頭に手を置き、目線を彼女の高さに合わせてお願いした。
エリンは少し戸惑ったが、その小さな身体いっぱいに大きく息を吸い込んだ。
「フゥ…………はい」
「まず、約束するね。絶対になんとかしてくる。それでまた2人に合流する。信じてくれるかい?」
「私がワガママを言うべきではありませんね……わかりました。兄さんと待っています」
エリンはそれでもやはりどこか不安げな様子だったが、諦めにも等しい表情を一瞬見せるとすぐに努めて明るく振る舞いながら笑顔を見せ、了解の意を示してくれた。
「さ、それじゃあ急いで」
「了解。行こう、エリン」
「うん。ただ、エイダンさん」
「ん?」
「いえ、どうかご無事で」
「フフ、安心してよ。いざって時は結界で包囲して放置してやるからさ!」
「それは……フフフフ、相手はたまったものじゃありませんね」
「兄ちゃん考えることがエゲツい」
レントめ、すっかり俺の言葉遣いが伝染ってきたな。
「エゲツい言うな。レント、頼んだぞ」
「任せとけ! なんせオレは第一将だからね!」
「2人もいざって時は即結界、それでもダメなら迷わず逃げの一択だよ。いいね」
2人はそれ以上何も言わなかった。
俺たちは無言で頷き合い、その場を後にした。
というのも歩いて2日分は距離があったはずの追跡してきている集団との差が、ここへきてかなり縮まっているのだ。
俺のマップ上では歩いて半日分の距離も無くなっている。
もちろん朝には気付いたので起きてからさっさと朝食を済ませ、すぐに出発した。
レントとエリンは何事かといった様子だったが、俺の顔を見てなんとなく悟ったのだろう。
何も言わずに準備を急ぎ、合わせてくれた。
ずっとマップで確認しているはいるものの、集団のこの動き、何かきっかけでも掴んだのだろうか?
こちらに真っ直ぐと向かってきている。
魔法の残滓や野営の痕跡を消すことは欠かさなかったはずだが……これは単純に匂いや戦闘の痕跡に気が付いたのかも知れない。
さすがになにからなにまですべての痕跡を消してきてはいない。
モンスターの死体などは即収納しているが、争った形跡までは消していなかった。
「我ながら迂闊、だな」
そしてこの集団の移動速度だがかなり速い、このままでは追い付かれるのも時間の問題だ。
「2人とも、歩きながらでいいからよく聞いて」
「わかった」
「はい」
「追ってきてる奴らのペースがここにきてだいぶ上がってる。恐らくあと1時間もしないうちに追い付かれる」
「随分、早いんだね」
「その……大丈夫なのでしょうか?」
エリン、そりゃ心配だよな。
だが、ここはまず先に後顧の憂いを断たなくてはならない。
「レント、今歩いている方向へ真っ直ぐ進むと左手に岩場があるはずだ。そこでエリンと周囲を警戒しつつ待っていてくれないか?」
そこは今のところだがモンスターも少なく、もし戦闘になっても2人ならなんとかなる強さのやつしかいない。
「そんな、エイダンさんと離れるなんて私イヤです!」
エリンは足を止め、不安に満ちた瞳で心情を吐露した。
だが、ここでレントは俺に訴えかけるエリンを制し、冷静な声色で言った。
「……エリン、ここは兄ちゃんに任せよう。きっとオレ達が追って来てる奴らと会っても何もいいことはないと思う。それに万が一にもオレ達が捕まったりしたら兄ちゃんを困らせちゃうよ」
なんともいたたまれないが、レントの言うことは間違っていない。
「兄さん、でも……!」
エリンを落ち着かせないとだな。
「エリン、1度深呼吸して、俺の話を聞いてくれるかい?」
俺はエリンの頭に手を置き、目線を彼女の高さに合わせてお願いした。
エリンは少し戸惑ったが、その小さな身体いっぱいに大きく息を吸い込んだ。
「フゥ…………はい」
「まず、約束するね。絶対になんとかしてくる。それでまた2人に合流する。信じてくれるかい?」
「私がワガママを言うべきではありませんね……わかりました。兄さんと待っています」
エリンはそれでもやはりどこか不安げな様子だったが、諦めにも等しい表情を一瞬見せるとすぐに努めて明るく振る舞いながら笑顔を見せ、了解の意を示してくれた。
「さ、それじゃあ急いで」
「了解。行こう、エリン」
「うん。ただ、エイダンさん」
「ん?」
「いえ、どうかご無事で」
「フフ、安心してよ。いざって時は結界で包囲して放置してやるからさ!」
「それは……フフフフ、相手はたまったものじゃありませんね」
「兄ちゃん考えることがエゲツい」
レントめ、すっかり俺の言葉遣いが伝染ってきたな。
「エゲツい言うな。レント、頼んだぞ」
「任せとけ! なんせオレは第一将だからね!」
「2人もいざって時は即結界、それでもダメなら迷わず逃げの一択だよ。いいね」
2人はそれ以上何も言わなかった。
俺たちは無言で頷き合い、その場を後にした。
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