全否定男は異世界でも論破する

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絶体絶命

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 俺は神威かむいという世界に転生し、南の国「南州なす」にある島、ヂパンにいる。
 さて、初期に立ち寄る村「シウキウ」までさくっと移動するか。

 俺はここから約2km先のシウキウへ懐かしむように徒歩で向かった。

 ゲーム開始時、まず草原地帯に放り出され徒歩でシウキウの村まで移動する。それからチュートリアルが始まるというのがセオリーなのだが、ゲームの場合チュートリアルをスキップすることが出来ない、という意味不明な仕様だった。果たしてこの世界もそうなのだろうか。
 チュートリアルに関してもそうだが、そもそも村から開始させてくれよと、それはプレイヤー全員が思ったことだろう。

――――と、俺は不意に出くわしたオオカミに意表を突かれた。
 何故ならば、ゲームであればここからシウキウまでの道のりに魔獣や獣の類は一切出てこないからだ。さすがSP版といったところか。

「アウゥゥゥウ」

 何処かに身を潜めていたオオカミの仲間が俺を取り囲んだ。合わせて10匹ほどだろうか。
 これは鬼畜だ。開始早々死に値する状況。絶体絶命のピンチってやつだ。本来ゲームならば戦う術は素手しかない場面。
 これがSP版だ! と言わんばかりの製作者の遊び心に、いや殺気に俺は興奮していた。

「ふん、面白い……『言術ごんじゅつ』」

 早速、先ほど理解したばかりのスキル「言術」を使うことにした。
 しかし敵が10匹ともなれば、全ての敵を対象とすることはできない。
 俺は逆転の発想を使う。

「俺は強い! 誰よりも強い! この世で一番強い! 宇宙一強い! 間違いないく俺が最強だ! だっはっはっはっは!」

 俺はドヤ顔で両手の親指を自分に向け、そう言い放った。
 するとどうだろう。俺の身体のどこにそんな力があったのか、というほどに力がみなぎってくる。

「簡易鑑定」

 俺は素早く自分とオオカミを鑑定した。
 「簡易」としたのは知りたい情報を絞りたかったからだ。出来るかどうかは分からなかった。しかし出来た。
 俺の視界の左下隅に簡易ステータスが浮かび上がる。

―陰正―
【レベル】1
【HP】100/1,060,000,000
【MP】100/53,000,000
【身体能力値】5,300,000
【精神能力値】5,300,000

―オオカミ―
【レベル】1
【HP】95/95
【MP】15/15
【身体能力値】33
【精神能力値】6

 俺のステータスが通常の53万倍になっていた。
 HPとMPの増加が最大値だけなのがなんともシュールだ。

「グギャゥ!」「グルォア!」「ガアアッ!」

 オオカミ達が一斉に俺に向かって襲い掛かってきた。
 しかし遅すぎて止まって見えた。オオカミ達一匹一匹のよだれが、どこに向かって飛んでいくかを眺める余裕すらあった。
 俺は調子に乗って「でぇあああ!」と叫び、体から力を解放するイメージで手と足を大袈裟に広げてみた。

 オオカミ達が何処ともなく散り散りになりながら吹っ飛んでいったのは言うまでもない。しかし、もうそれどころではなかった。
 俺の周囲には、過去最大級の地震と過去最大級の台風が同時に訪れたかのような惨状となっていた。この島が崩壊しないか心配するレベルだ。
 地面は割れ落ち、木々は根こそぎ豪風に引き抜かれ、空にあった雲は俺のいる位置だけぽっかりと穴が開いている。

「ふん、論破してやるまでもなかったな」

 と決め台詞を発し、俺は力技でオオカミ達を退治した。――――と思った時、俺の身体全身に半端じゃないほどの激痛が走った。

「うギィっ!」

 相応以上の力を自分の身に宿した反動だろう。もう痛いとかのレベルではなく、火炙りの刑にでも処されているかような感覚だった。まあ当然の結果だ。調子に乗って無茶をし過ぎたのだ。
 そして視界が暗くなっていった。


   * * *


『君さあ、無茶し過ぎだよ』

 聞き覚えのある声だった。
 情報理解「極」により、その声の持ち主が一瞬で分かった。
 再生の神だ。

『死ぬの早すぎー。だけど、よく思いついたね「自己啓発」。今回は余りにも効果が強すぎて死んじゃったけど、それもスキルの使い方のひとつにあったんだよ。君、中々センスあるかもね』

 そうか、俺はアレで死んでしまったのか。まさか自分の身を滅ぼすことになるとはな。

『今度はもう少し気をつけてスキルを使ってね。一回死んだから僕の加護はなくなるよ。次に死んだらゲーム終了だからね。それじゃあ続きを頑張ってくれ』


   * * *


――――目を覚ますと俺はベッドの上に横になっていた。
 身体を起こし、周りを見渡すと見覚えがあった。
 ここはシウキウの村の宿だ。
 
 コンコン。

 ドアにノックがして、許可もなくドアが開かれる。

「しっつれいしまーっす」

 俺は度肝を抜かれた。
 何故ならドアを開けて部屋に入ってきたのは――――。

「あれえ? 正人!」

 そう、朝子だ。
 幼馴染のたいら 朝子あさこが俺の目の前に立っていたのだ。
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