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034_初めてのジャンクフード
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034_初めてのジャンクフード
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「おい、あっちこっち触るなよ。爆発しても知らないからな」
「承知しました、師匠!」
マグワニスは絶対分かっていない。
「おおお! 師匠、これは何ですか!?」
ボンッ。
やっぱり理解してなかった。
オールバックの白髪が黒焦げのアフロになった。しかも髪の毛が燃えている。
「だから触るなと言ったんだよ」
水をかけて火を消してやる。あーあ、俺の工房が汚れてしまったじゃないか。
「お前なぁ、デートの邪魔をするだけじゃなくて、工房を破壊するつもりか」
「ははは。今のはたまたまですよ、師匠。次は大丈夫です」
「次はないからな。二度と触るな。触ったら破門だ」
「は、破門ですかっ!?」
弟子にした記憶はないが、こいつにはこれが一番効くと思う。
「むむむ……。が、我慢しましょう……」
この世の終わりのような顔をするなよ。
「うふふふ。賢者殿がまるで子供のようですね」
「笑いごとではないですよ、リーン様」
そもそも今日はリーン様の魔力操作の訓練をするのに、マグワニスのおかげでその時間が少なくなってしまう。
「こい、メイド・イータ」
ゴーレムを呼ぶ。試作を除いた7番目のメイド型ゴーレムだ。掃除はこのメイド・イータがしてくれる。
「まあ、この子はゴーレムなのですか!?」
「掃除をしてくれるゴーレムです。掃除のことはメイド・イータに任せておけばいいですから、リーン様はあちらへ」
地下の試験室に移動した。この工房の中で一番広く頑丈に造られた空間だ。
「まずは魔力を感じることが必要です。リーン様は【魔女】ですから、魔力を感じていますよね?」
「少しは……」
「正直に言ってください」
「魔力を感じるのはあまり得意ではありません」
目を逸らすリーン様は、気まずそうだ。
「それでは魔力感知から始めます。言っておきますが、苦しいですよ。止めるなら今のうちですが、どうしますか?」
「大丈夫です! 私はどんな苦行も耐えてみせます」
いい覚悟だ。その意志が最後まで続くことを願っているよ。
「師匠! 某にも修行を!」
「お前はそこら辺で勝手にやってろ」
「それはないですよー」
「うるさい。黙れ。邪魔するな」
「今度は某にも稽古をつけてくださいよ!」
「分かったから、お前はそっちで魔力操作をしていろ」
マグワニスを遠ざける。
リーン様を椅子に座らせ、目を閉じてもらう。
「これから両手を握って俺の魔力を流します。苦しいですが、いいですね」
「はい」
彼女の手を握る。柔らかい手だ。
最初は少しずつ魔力を流す。細い糸のようにリーン様の手を伝って流し込む。
「あっ……」
「苦しくても我慢です」
「は、はい」
両手から魔力を流し込んでいくと、リーン様の頬が赤く染まっていく。
よし、リーン様の体内で俺の魔力が繋がった。
その魔力をリーン様の中で動かす。
「あぁぁん……うふん……はぁん……」
リーン様の可愛らしい口から悩ましい声が漏れる。
「我慢ですよ」
「はい……ひゃっん」
「いいですか。これが魔力です。魔力は体中のどこにでもありますが、特に胸の辺りに多くあります」
「んん……はい……あぁん……」
「この感覚を覚えてください。魔力は常にリーン様と共にあります」
魔力を動かしてそれを感じることが、一番早く覚えて確実だ。多少苦しいけど、それで魔力を感じられるようになれる。といってもリーン様次第だけど。
しばらくリーン様の体内で魔力を動かしていると、リーン様は玉のような汗を流した。
「今日はここまでですね」
「あぁぁ……はぁはぁ……ありがと……うございました……」
「時間がある時は、自分でも魔力を感じられるようにしてくださいね」
「は……い……」
疲れ切っているようだから、少し休憩するか。
「ロック。水を持ってきてくれ」
「こちらに用意してます」
ロックなのに気が利くな。
リーン様に水が入ったコップを渡すが、手がプルプル震えている。落としてはいけないので、コップごとリーン様の手を俺の手で包み込み、口へ近づけてあげる。
「ご迷惑をおかけしました」
三十分ほど休憩したリーン様が、もう大丈夫と頭を下げる。
「本当は毎日してあげたいのですが―――」
「ま、毎日!?」
「さすがにそういうわけにはいきませんので」
「ざ、残念です……」
継続は力なりと言うが、まさにその通りなのだ。
毎日繰り返し努力する。それが成長への早道になる。
訓練の後は食事だ。
ジャンクフードをテーブルに並べる。
「ハンバーガーですか」
残念そうにするマグワニス。
「お前の分はないからな」
「それはないですよ、師匠」
「勝手についてきて、食事までたかるつもりか?」
「むぅ……」
マグワニスは放置して、リーン様にハンバーガーを勧める。
「こうやって食べます」
ハンバーガーを包む葉を開き、中から出て来たハンバーガーを頬張る。
気取った食べ物は大概冷たくなっているが、これはまだ温かい。この温かさがご馳走の一つだと俺は思うんだ。
「温かいです……美味しい」
リーン様が小さな口でハンバーガーを頬張った。
「もっと豪快にがっつり口に含むのです」
「こ、こうですか……はむっ」
「いいですよ。それがハンバーガーの正しい食べ方です」
「心なしか、先程よりも美味しく感じます」
目じりを下げて、ハンバーガーを頬張る姿も絵になるな。
「これはポテトです。手でつまんで食べてください」
俺がやって見せると、リーン様も真似る。
「塩気がいいアクセントになってますね」
「塩気だけでも美味しいですが、こちらのケチャップにつけると違った味わいになります」
「まあ、本当ですわ! わたくしはこちらのほうが好きです」
喜んでくれて良かった。
034_初めてのジャンクフード
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「おい、あっちこっち触るなよ。爆発しても知らないからな」
「承知しました、師匠!」
マグワニスは絶対分かっていない。
「おおお! 師匠、これは何ですか!?」
ボンッ。
やっぱり理解してなかった。
オールバックの白髪が黒焦げのアフロになった。しかも髪の毛が燃えている。
「だから触るなと言ったんだよ」
水をかけて火を消してやる。あーあ、俺の工房が汚れてしまったじゃないか。
「お前なぁ、デートの邪魔をするだけじゃなくて、工房を破壊するつもりか」
「ははは。今のはたまたまですよ、師匠。次は大丈夫です」
「次はないからな。二度と触るな。触ったら破門だ」
「は、破門ですかっ!?」
弟子にした記憶はないが、こいつにはこれが一番効くと思う。
「むむむ……。が、我慢しましょう……」
この世の終わりのような顔をするなよ。
「うふふふ。賢者殿がまるで子供のようですね」
「笑いごとではないですよ、リーン様」
そもそも今日はリーン様の魔力操作の訓練をするのに、マグワニスのおかげでその時間が少なくなってしまう。
「こい、メイド・イータ」
ゴーレムを呼ぶ。試作を除いた7番目のメイド型ゴーレムだ。掃除はこのメイド・イータがしてくれる。
「まあ、この子はゴーレムなのですか!?」
「掃除をしてくれるゴーレムです。掃除のことはメイド・イータに任せておけばいいですから、リーン様はあちらへ」
地下の試験室に移動した。この工房の中で一番広く頑丈に造られた空間だ。
「まずは魔力を感じることが必要です。リーン様は【魔女】ですから、魔力を感じていますよね?」
「少しは……」
「正直に言ってください」
「魔力を感じるのはあまり得意ではありません」
目を逸らすリーン様は、気まずそうだ。
「それでは魔力感知から始めます。言っておきますが、苦しいですよ。止めるなら今のうちですが、どうしますか?」
「大丈夫です! 私はどんな苦行も耐えてみせます」
いい覚悟だ。その意志が最後まで続くことを願っているよ。
「師匠! 某にも修行を!」
「お前はそこら辺で勝手にやってろ」
「それはないですよー」
「うるさい。黙れ。邪魔するな」
「今度は某にも稽古をつけてくださいよ!」
「分かったから、お前はそっちで魔力操作をしていろ」
マグワニスを遠ざける。
リーン様を椅子に座らせ、目を閉じてもらう。
「これから両手を握って俺の魔力を流します。苦しいですが、いいですね」
「はい」
彼女の手を握る。柔らかい手だ。
最初は少しずつ魔力を流す。細い糸のようにリーン様の手を伝って流し込む。
「あっ……」
「苦しくても我慢です」
「は、はい」
両手から魔力を流し込んでいくと、リーン様の頬が赤く染まっていく。
よし、リーン様の体内で俺の魔力が繋がった。
その魔力をリーン様の中で動かす。
「あぁぁん……うふん……はぁん……」
リーン様の可愛らしい口から悩ましい声が漏れる。
「我慢ですよ」
「はい……ひゃっん」
「いいですか。これが魔力です。魔力は体中のどこにでもありますが、特に胸の辺りに多くあります」
「んん……はい……あぁん……」
「この感覚を覚えてください。魔力は常にリーン様と共にあります」
魔力を動かしてそれを感じることが、一番早く覚えて確実だ。多少苦しいけど、それで魔力を感じられるようになれる。といってもリーン様次第だけど。
しばらくリーン様の体内で魔力を動かしていると、リーン様は玉のような汗を流した。
「今日はここまでですね」
「あぁぁ……はぁはぁ……ありがと……うございました……」
「時間がある時は、自分でも魔力を感じられるようにしてくださいね」
「は……い……」
疲れ切っているようだから、少し休憩するか。
「ロック。水を持ってきてくれ」
「こちらに用意してます」
ロックなのに気が利くな。
リーン様に水が入ったコップを渡すが、手がプルプル震えている。落としてはいけないので、コップごとリーン様の手を俺の手で包み込み、口へ近づけてあげる。
「ご迷惑をおかけしました」
三十分ほど休憩したリーン様が、もう大丈夫と頭を下げる。
「本当は毎日してあげたいのですが―――」
「ま、毎日!?」
「さすがにそういうわけにはいきませんので」
「ざ、残念です……」
継続は力なりと言うが、まさにその通りなのだ。
毎日繰り返し努力する。それが成長への早道になる。
訓練の後は食事だ。
ジャンクフードをテーブルに並べる。
「ハンバーガーですか」
残念そうにするマグワニス。
「お前の分はないからな」
「それはないですよ、師匠」
「勝手についてきて、食事までたかるつもりか?」
「むぅ……」
マグワニスは放置して、リーン様にハンバーガーを勧める。
「こうやって食べます」
ハンバーガーを包む葉を開き、中から出て来たハンバーガーを頬張る。
気取った食べ物は大概冷たくなっているが、これはまだ温かい。この温かさがご馳走の一つだと俺は思うんだ。
「温かいです……美味しい」
リーン様が小さな口でハンバーガーを頬張った。
「もっと豪快にがっつり口に含むのです」
「こ、こうですか……はむっ」
「いいですよ。それがハンバーガーの正しい食べ方です」
「心なしか、先程よりも美味しく感じます」
目じりを下げて、ハンバーガーを頬張る姿も絵になるな。
「これはポテトです。手でつまんで食べてください」
俺がやって見せると、リーン様も真似る。
「塩気がいいアクセントになってますね」
「塩気だけでも美味しいですが、こちらのケチャップにつけると違った味わいになります」
「まあ、本当ですわ! わたくしはこちらのほうが好きです」
喜んでくれて良かった。
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