JCダンサーは夢使いをやめられない!

泉蒼

文字の大きさ
13 / 22
第2話 捕われのツインタワー

2-2

しおりを挟む
ということで、結局。
「かくかくしかじか――、娘が起き掛けに超怖い夢を見ちゃいました………………マル」
結菜がそう告げると、
「ぬあああああ!」
 スーツの上から花柄のエプロンを巻いた父は、ちょうど自分の書斎で、筋力トレーニングをしている最中だった。
そんな朝から超アクティブな父は、
「悲鳴だけがっ、聞こえる夢っ? もう終わるっ、しばし待てっ!」
今まさにベンチプレスで150キロの重りを上げようとしていた。
 書斎には他に、ランニングマシンやボート漕ぎのマシンもあり、父はよく読書をしながら筋力トレーニングに励んでいる。
「海斗~、結菜は自分で動画配信するんはあきらめたみたいやで!」
 バクさんは、あれから少し仲が気まずいふたりを気遣ってか、父にそんな告げ口をする。
(……フンっ、別にあきらめた訳じゃないわよ。今はチャンスを窺ってるだけだからね!)
 結菜はそう思うが、ここは夢使いとして、自分の見た夢が予知夢かどうかを判断する方が先決だと考え直した。
 仮に今朝の夢が予知夢だとしたら、あの悲鳴は誰かを助けなくてはならない合図かもしれないのだ。
 だから。
「お父さん! 動画配信はしないから、早く予知夢かどうか判断してよ!」
結菜は本音を隠して、150キロの重りを上げ切った父に言った。
「それなら結構だっ! 夢使いはな、誰にも知られてはいけない秘密の職業だからなっ! ぬああああ――――っ、これでフィニッシュだああっ!」
 父は腕をプルプルさせながら重りをゆっくりとおろす。
そして、ベンチから逆立ちして床に下りた父が書斎の本棚に向かうと、そこからとある黒革の日記帳を取って戻ってきた。結菜の目の前で、父はそのページをぱらぱらとめくる。
「ここには長年の経験と知恵が詰まっている!」
「なるほどな~。見覚えのある日記帳が出てきたと思ったら、そういうことか! 海斗の膨大な過去の経験から判断しようってわけやな!」
 日記帳を感慨深げに眺める父を見て、宙に浮いたバクさんも懐かしむように頷く。
「過去の経験から判断?」
 結菜はポカンとした。
「まあ、早い話が海斗の夢診断タイムっちゃうこっちゃ」
「ぬあ~っ、お父さんってば夢診断まで出来ちゃうのね~っ」
「見た目と違って海斗の心は超乙女やからな。ほんで、結菜が見た夢は予知夢なん?」
宙のバクさんは、結菜から視線をそらすと、今度は興味津々な顔で父を見下ろした。
「空を飛び、西部劇の町へ行き、そこで銃撃……と思えば、ひたすら聞こえる悲鳴か」
父はそうつぶやきながら日記帳のページをめくる。
やがて。
「そうか!」
あるページで指を止めた瞬間、父の賢そうに見える銀縁メガネがキラリと光った。
「視覚と聴覚っ! 結菜の見た夢はその2パターンが組み合わさった、非常にめずらしい変化形予知夢だと言っていい!」
「……何それ、変化形予知夢?」
 キョトンとする結菜に、バクさんが思い出したように口を開く。
「たしか視覚に訴えかけてくる夢は、他人に関する予知夢やったよな?」
「そうだ! 一方、聴覚に訴えかけてくる夢は自分に関する予知夢だ!」
 父の説明を聞いた宙のバクさんが、腕を組んでから、ぼそっと言う。
「……非常にマズイやん」
「ええっ? マズいって……何が? ちょっとバクさん……どういうことなのよ? そんな怖い顔で私を見ないでよっ!」
バクさんに目を細めながら見つめられた結菜は、たまらなく怖くなってしまう。
「何よふたりしてぇ……人の心があるならせめて、私を恐怖のどん底に陥れないよう工夫して、私の気持ちも汲み取って、どうにか何とか私が安心できるように説明してよ~っ」
 両手をグーにし、結菜がそれを自分のこめかみにぐりぐり当てたその時。
「つまり、こういうことだ――」
 父は少しためらった後、ドキドキしながら次の言葉を待つ結菜と宙のバクさんに、ぐーっと顔を近づけた。
「悲鳴が聞こえる夢の正体は、結菜に、危機が訪れることを暗示している!」
 父はよく通る声でそう言い、結菜の目の前で、バタン、と日記帳を閉じた。
夢診断によると、空を飛んだり西部劇の町にいる夢はおそらくただの夢らしい。
だが。
「ぬあ~っ、悲鳴が聞こえる夢って、自分に危機が迫ってるって意味だったのね~っ!」
視界が真っ暗になって悲鳴が聞こえる夢は、我が身の危機を暗示しているようだった。
「……ご愁傷様やで」
 バクさんはそう言って、結菜に向かって、両前足で拝むようなポーズをとった。
「ダハッ……」
 ショック過ぎた結菜の口から謎の擬音が飛び出す。結菜の嫌な予感は的中したようだっ
た。
(起き掛けに見た夢は、やっぱり予知夢で、しかも超良くない夢だったのね……)
「お父さんに相談し、スッキリ解決しようと思ってたのに、甘かったのね~っ!」
 解決どころか、夢診断を聞いた後の結菜のモヤモヤは、さらに増大して苦しみが倍増して
しまうのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【3章】GREATEST BOONS ~幼なじみのほのぼのバディがクリエイトスキルで異世界に偉大なる恩恵をもたらします!~

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)とアイテムを生みだした! 彼らのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅するほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能を使って読み進めることをお勧めします。さらに「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です! レーティング指定の描写はありませんが、万が一気になる方は、目次※マークをさけてご覧ください。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

大人で子供な師匠のことを、つい甘やかす僕がいる。

takemot
児童書・童話
 薬草を採りに入った森で、魔獣に襲われた僕。そんな僕を助けてくれたのは、一人の女性。胸のあたりまである長い白銀色の髪。ルビーのように綺麗な赤い瞳。身にまとうのは、真っ黒なローブ。彼女は、僕にいきなりこう尋ねました。 「シチュー作れる?」  …………へ?  彼女の正体は、『森の魔女』。  誰もが崇拝したくなるような魔女。とんでもない力を持っている魔女。魔獣がわんさか生息する森を牛耳っている魔女。  そんな噂を聞いて、目を輝かせていた時代が僕にもありました。  どういうわけか、僕は彼女の弟子になったのですが……。 「うう。早くして。お腹がすいて死にそうなんだよ」 「あ、さっきよりミルク多めで!」 「今日はダラダラするって決めてたから!」  はあ……。師匠、もっとしっかりしてくださいよ。  子供っぽい師匠。そんな師匠に、今日も僕は振り回されっぱなし。  でも時折、大人っぽい師匠がそこにいて……。  師匠と弟子がおりなす不思議な物語。師匠が子供っぽい理由とは。そして、大人っぽい師匠の壮絶な過去とは。  表紙のイラストは大崎あむさん(https://twitter.com/oosakiamu)からいただきました。

だからウサギは恋をした

東 里胡
児童書・童話
第2回きずな児童書大賞奨励賞受賞 鈴城学園中等部生徒会書記となった一年生の卯依(うい)は、元気印のツインテールが特徴の通称「うさぎちゃん」 入学式の日、生徒会長・相原 愁(あいはら しゅう)に恋をしてから毎日のように「好きです」とアタックしている彼女は「会長大好きうさぎちゃん」として全校生徒に認識されていた。 困惑し塩対応をする会長だったが、うさぎの悲しい過去を知る。 自分の過去と向き合うことになったうさぎを会長が後押ししてくれるが、こんがらがった恋模様が二人を遠ざけて――。 ※これは純度100パーセントなラブコメであり、決してふざけてはおりません!(多分)

運よく生まれ変われたので、今度は思いっきり身体を動かします!

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞」重度の心臓病のため、生まれてからずっと病院のベッドから動けなかった少年が12歳で亡くなりました。両親と両祖父母は毎日のように妾(氏神)に奇跡を願いましたが、叶えてあげられませんでした。神々の定めで、現世では奇跡を起こせなかったのです。ですが、記憶を残したまま転生させる事はできました。ほんの少しだけですが、運動が苦にならない健康な身体と神与スキルをおまけに付けてあげました。(氏神談)

処理中です...