いつか、ふたりで

ゆん

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肌のざわつき

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店を出て、再び2台で山道を奥へ進んだ。
キャンプ場は道のどん詰まりにあって、ようやくたどり着いた頃には、時計の針は午後をしっかり回っていた。

事務所で手続きを済ませてテントサイトに向かうと、キャンプ場の中でも最も上流(つまり光流いわく、トイレから最も離れた場所)にそれはあった。

渓流の自然な形を活かして作られているせいか隣のサイトとも適度に離れていて、まさに山の中でキャンプをしている、という感じ。

設営は、男性陣二人が慣れた手つきで取り掛かり、その間に私と光流はBBQの準備をすべく、食材を持って炊事場へ下りた。

そこは家族連れや、私たちと同じ大学生らしきグループで賑わっていた。

皆一様にはしゃいだ空気を纏い、修学旅行や林間学校など行事を思い出させるような懐かしさがある。

私たちはさっそく空きスペースを見つけて陣取ると、おしゃべりしながら、道の駅で買ってきた新鮮な野菜たちに包丁を入れた。

そして、それはとりとめもない話をしている最中のことだった。

「ね。真澄さ。海堂先輩好きになってるでしょ」

光流の突然の発言に、ダン、とナスのヘタが吹っ飛んだ。

「え、いや、どうかな……」
「なってるでしょー!だってめちゃ良い雰囲気じゃん!」
「良い雰囲気なのは光流と泉さん。海堂さんは……誰にでもあんな感じだよ」
「いやっなんか微妙に違う気がする!」

光流が興奮気味に包丁を持った手を振るから、あぶない、と注意しつつ、揺らいだ内心を悟られないように落ち着ける。

好き……は、好きだ。嫌いではないし。

でも付き合うだのなんだのは困るのだ。何故って、それは──考えようとして首を振る。理由は分からない。ともかく困る。

海堂が付き合って、と口にするのも、あんまり聞き過ぎて ”お約束” の感があるし、本気にしたらダメなんじゃないかという防衛本能が働く。

「確かに先輩はチャラいけどさぁ……不誠実ではないよね。や、分かんないけど。本心がどこにあるか分かりにくいタイプだけどさ」
「でしょ?あんなにモテる人、初めて見たし。付き合ってきた人たち見たら、私に本気になるようには思えないし」

自然と権平さんを思い出す。お化粧をした権平さんを見たことはないけど、スラッと背が高くてスタイルもいいし、堂々としてるし、海堂と並んだ時にまさに ”お似合い” と感じる。

私が並ぶと、近所のお兄さんに遊ばれてるガキンチョ風だもの。

「え~でもその言い方、本気だったらOKって感じじゃん」
「そ、そうじゃないよ。ただああいうタイプの人と自分が付き合うっていうのが想像できないだけで」
「そりゃ交際経験ゼロだったら想像できないって。ウチもそうだったんだから。付き合ってみたらいいじゃん」

互いにまな板の上の野菜をカットしつつ、玉ねぎの輪切りになってからは痛い痛い、と涙を流して、その話はそれで終わってしまった。

ただ自分の中ではぐるぐる考えていた。

仮に海堂が本気で、かつ私が ”そういう意味” で海堂を好きだとして。そして付き合ったとして。

それは、以前図書館の横で、私に何かあったのかと迫ってきたあの顔で、常時見つめられるということだろう。

それを想像すると、肌がざわつくのだ。

それは落ち着かない感触で、だから私は海堂とはそういう関係にはなりたくないんだと思った。

今がちょうどいいではないか。軽口を交わしたり、メールのやりとりをするだけで充分楽しい。

それ以上距離が近づけばやがて傷つく。確証もないのに、そう思わずにはいられないのだった。




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