家族

クラゲEX

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離別・感謝

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そうして歪な意識を自覚した夜からまた、1年が経った。
私は大学生となり、それなりに名の知れた大学に入ることとなった。想定していた以上に大学とは自由なもので高校の様に、自分でやるべきことを把握して気楽に臨んでいれば対して困ることはなかった。その上、高校の様に自分のやりたいことについてとやかく申し立てる親気取りな教師もおらず、とても開放的な気分で心地が良かった。しかし、そんな気持ちとは裏腹に暇が増え、虚無なる時間が増えた。やるべきことが無くなり、自分で何をするべきか、別のベクトルでそういったことを考えるのが、私はめっぽう苦手だった。だからなのか本を一通り読み終えて、本にも飽きた後の時間は何もせずに私は「うつ伏せる位しかやるべきことがないな」と呟き、その通りにするしか無かった。うつ伏せる様なことをやるべきことと表現する時点で大学生なりに中々末期なものがあるその癖は、死ぬまで治ることは無かったのだが、その頃の私は流石に20も行かぬ若者が、老人の様に横たわるだけが習慣になるというのはまずいと思ったこともあってか、若者らしく体を動かそうと決めた。
こうして私の大学生活の基盤は盤石なものとなった。
さて、ここまであの家族紛いについて話さ無かったのにはわけがある。話したくない。というのが一番の本音だが、其れとは別にもう出会うことが出来ないためであり、自分も話したくても話せないからである。
確かに大学入学式までの一年は共に生活していたし、
話すこともあった。だがその間は皆空気を読んだのか、
運命が空気を読んだのか、何も起こることは無く、いや、私の知らない間に何かが表面下で蠢いていたのかもしれないが、その頃は勉強の虫になっており、そんなことに構う余裕が無かったのだ。
だが今思い起こすともう少し、家族紛いと今でも思うが、だけど今まで共に暮らしてきた人達なのだから、優柔不断なりにもっと仲を深めるとは行かずとも、言葉を交わしていた方がよかったのだろう。何故なら家族はもういないのだから。

旅行だった。ただ少し遠い温泉街まで行くだけだった。
高速道路での家族の乗っていた車を含め、合計で4車の玉突き事故だった。家族の乗っていた車は前から二番目だったらしく、盛大に巻き込まれたらしい。
当時私は高校3年生で、受験勉強のために旅行を遠慮したのを覚えている。そこから葬儀の終わりまではあんまり覚えていない。結局どうしようもなく悲しかったのだ。
なんと言おうと、家族が亡くなって悲しいのだ。
まだ姉と妹がいたが、そんな連絡も取れず住所も分からない者達が家族と言えるのだろうか?いや、私は言えない。歪の意識が矯正される原因が意識の元凶の死とはなんとも笑えない。今頃治って貰っても困る。そんなことを当時の私の心を埋め尽くして離れなかった。
いや、それは未だ小さくはなっても残り続けているのだから、当時と表現するのはおかしいか。ともあれこうして落ち込みながらも力が入った受験は成功して、母方の親戚の援助と保険金のサポートもあり、どうにかこうして大学まで漕ぎつけられた大学当時の私は先程も述べた様に身体を動かすためにバイトを始めた。当時血の繋がりはあるものの殆ど関わりの無い私を快く迎え入れてくれた叔父さんからの仕送りに甘え続けるのも悪いと思った行動でもあるが、叔父さんは一切仕送りを止めようとせず、お金も受け取ってくれなかった。ただ、「元気な顔を年に一度は見せてくれ。」と言って来たのでそんなことで良いのか?と思いつつも毎年叔父さんの家で大学生時代は歳を越した。今となってもあの叔父さんには感謝の念は忘れていない。あの人のおかげで友人の少ない私は孤独にならずに済んだのだから。そしてこうも思う、あの時孤独に過ごしていたのなら、いま予定していることを大学時代に実践して終えていただろうと。そんな気持ちにさせず、いつでも会えば構ってくれた叔父さんは私の暗い時代の太陽だった。そんな太陽に支えられた時代は友人は少ないながらも交友関係を絶やすことなく、小さいながら心地良い空間で温っていられる安堵な時間だった。この時間がこの時代を過ぎた後でも続けばよかったのだろうが、そうは行かなかった。
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