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ハリブ編
マモノノナヤミ
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「魔者って何ですか?」
直接聞く。
魔者と名乗り、その魔者特有の“何か”を俺に使ったのだ。
説明出来るだろう。してくれるかは別だけど。
「え、その前に君について知りたいんだけど…」
「俺は俺です。村育ちのアレンです。
あの夢については俺も何がなんだか…確かに自分だったんですが、別の自分だったんだと思います。だって、あんなところ初めて見たから。」
色々と分からない。あれは別世界の俺?夢に浮かぶほど想い描いた暮らし?色んな可能性が頭の中で錯綜する。
「だから、ハリス。なんで貴方が俺を変に思うのか。
夢見の魔者とはなんなのか。教えて下さい。」
「…分かった。本当に分からないようだし。」
良かった…このまま教えてくれる形になってくれて。
ちょっと殺気混じりの目をしていたから、問答無用で殺されるかもとも思ったが、そうはならなそうだ。
ハリスは複数の魔獣を単独で撃破する程の腕の持ち主だ。
一対一の戦闘になったら勝機は無いだろう。
「まず、魔者について説明するね。魔者は魔獣や魔樹の様に、体内に、もっと詳しく言うと体のどこか一部に魔力を宿している人間のことなんだ。」
「魔力を宿す…」
「まあ魔力を宿すっていうより、勝手に体の一部が魔力を吸収しているだけなんだけどね。僕の場合は右目。」
右目に魔術を使うとき以外にも、魔力が蓄えられているってことか?普通魔力を吸収するのは口や鼻腔からだ。
そして、体内に蓄えるってことは出来ない。
「そしてここからが、“夢見”に当たる説明だ。
魔者の魔力を蓄えている部位は、唱えて使う魔術とは別に、固有の魔術が使える。僕の右目は相手の夢、心象世界への干渉、閲覧だ。」
「__そんな人が存在するんですね。」
驚いた。固有の魔術、それに夢へ介入する魔術なんて聞いた事がない。再現しようにも靄が掛かる様に、上手く想像が出来ない。
「それで…何故ハリスは、協会の人からあんな風に噂されているのですか?まるで恐れられている様な感じでしたが。」
忌避されている様だった。それに、何故俺の夢を見たのか聞きたい。
「それはね…僕が皆んなの夢を荒らしたからなんだよ。僕の右目ね、高確率で閲覧した夢を悪夢にするんだ。
最初は偶然だと思ったんだ。入る日に偶然悪夢が重なったって。でもね、どれだけ時間が経っても殆どの夢が悪夢なんだ。それに加えて、夢を見ている人は僕をはっきりとは捉えられないけど、黒い人型としては見えるらしくて、そこから悪夢を見た人が魔者だ魔物だって噂して…こうなってしまったんだ。」
…大変そうだな。けど、一つ大切な事が抜けている。
「なんで夢を閲覧するんです?しなければそんな騒動にもならずに済むのに。」
そう話すと、少し頬を膨らませる様に、少し怒っている様な風でこちらを睨んで来た。
「分かってるよ。けど見たくなくとも、見ちゃうんだ。
勝手に。僕が寝ていると勝手にね。」
繰り返し言ってきた。それだけ悩まされているのか。
確かに右目が見せる夢は殆ど悪夢、使用者のハリスも当然その悪夢を見る訳だから悩むか。
「すいません。その、悩んでいるとも知らずに。」
「そんなに申し訳なさそうにしないでくれ。
ごめん、ちょっと責める様な口調になってた。
許してくれ。」
下を向く俺を見て、しどろもどろになりながら謝ってくる。
「謝らずとも、俺が悪かったんですから。」
「いや、今のは僕の方が悪かった。」
こんな押し問答が数分続いた。
「えっとまあ、これは置いといて、僕が君を変に思ったのは、今までの夢とは違う、かなり異質なものだったからなんだけど…君も分からないならいいよ、ちょっと驚いただけだからね。不快な思いをさせてごめん。」
さっきから凄い謝るな…確かに夢を見られていたってのはこっちこそ驚いたが、理由を聞いた今なら納得出来るし、仕方ない事だと割り切れる。
なのにこの人ときたら…
「さっきから謝り過ぎですよ。事情は分かりました。これから俺がが変な夢を見るようになっても俺は平気です。だから、謝らないで下さい。」
そう言うと、彼は泣き崩れた。ワンワンと早朝から大声を出して。
「ありがとうぅぅ…こんな僕を責めないでくれてぇぇ」
多分この力で今までも辛い思いをしてきたのだろう。
俺よりも一回り以上大きい彼は、泣き疲れたのか、一通り叫んだ後、
夜が明けると言うのにまた眠ってしまった。
直接聞く。
魔者と名乗り、その魔者特有の“何か”を俺に使ったのだ。
説明出来るだろう。してくれるかは別だけど。
「え、その前に君について知りたいんだけど…」
「俺は俺です。村育ちのアレンです。
あの夢については俺も何がなんだか…確かに自分だったんですが、別の自分だったんだと思います。だって、あんなところ初めて見たから。」
色々と分からない。あれは別世界の俺?夢に浮かぶほど想い描いた暮らし?色んな可能性が頭の中で錯綜する。
「だから、ハリス。なんで貴方が俺を変に思うのか。
夢見の魔者とはなんなのか。教えて下さい。」
「…分かった。本当に分からないようだし。」
良かった…このまま教えてくれる形になってくれて。
ちょっと殺気混じりの目をしていたから、問答無用で殺されるかもとも思ったが、そうはならなそうだ。
ハリスは複数の魔獣を単独で撃破する程の腕の持ち主だ。
一対一の戦闘になったら勝機は無いだろう。
「まず、魔者について説明するね。魔者は魔獣や魔樹の様に、体内に、もっと詳しく言うと体のどこか一部に魔力を宿している人間のことなんだ。」
「魔力を宿す…」
「まあ魔力を宿すっていうより、勝手に体の一部が魔力を吸収しているだけなんだけどね。僕の場合は右目。」
右目に魔術を使うとき以外にも、魔力が蓄えられているってことか?普通魔力を吸収するのは口や鼻腔からだ。
そして、体内に蓄えるってことは出来ない。
「そしてここからが、“夢見”に当たる説明だ。
魔者の魔力を蓄えている部位は、唱えて使う魔術とは別に、固有の魔術が使える。僕の右目は相手の夢、心象世界への干渉、閲覧だ。」
「__そんな人が存在するんですね。」
驚いた。固有の魔術、それに夢へ介入する魔術なんて聞いた事がない。再現しようにも靄が掛かる様に、上手く想像が出来ない。
「それで…何故ハリスは、協会の人からあんな風に噂されているのですか?まるで恐れられている様な感じでしたが。」
忌避されている様だった。それに、何故俺の夢を見たのか聞きたい。
「それはね…僕が皆んなの夢を荒らしたからなんだよ。僕の右目ね、高確率で閲覧した夢を悪夢にするんだ。
最初は偶然だと思ったんだ。入る日に偶然悪夢が重なったって。でもね、どれだけ時間が経っても殆どの夢が悪夢なんだ。それに加えて、夢を見ている人は僕をはっきりとは捉えられないけど、黒い人型としては見えるらしくて、そこから悪夢を見た人が魔者だ魔物だって噂して…こうなってしまったんだ。」
…大変そうだな。けど、一つ大切な事が抜けている。
「なんで夢を閲覧するんです?しなければそんな騒動にもならずに済むのに。」
そう話すと、少し頬を膨らませる様に、少し怒っている様な風でこちらを睨んで来た。
「分かってるよ。けど見たくなくとも、見ちゃうんだ。
勝手に。僕が寝ていると勝手にね。」
繰り返し言ってきた。それだけ悩まされているのか。
確かに右目が見せる夢は殆ど悪夢、使用者のハリスも当然その悪夢を見る訳だから悩むか。
「すいません。その、悩んでいるとも知らずに。」
「そんなに申し訳なさそうにしないでくれ。
ごめん、ちょっと責める様な口調になってた。
許してくれ。」
下を向く俺を見て、しどろもどろになりながら謝ってくる。
「謝らずとも、俺が悪かったんですから。」
「いや、今のは僕の方が悪かった。」
こんな押し問答が数分続いた。
「えっとまあ、これは置いといて、僕が君を変に思ったのは、今までの夢とは違う、かなり異質なものだったからなんだけど…君も分からないならいいよ、ちょっと驚いただけだからね。不快な思いをさせてごめん。」
さっきから凄い謝るな…確かに夢を見られていたってのはこっちこそ驚いたが、理由を聞いた今なら納得出来るし、仕方ない事だと割り切れる。
なのにこの人ときたら…
「さっきから謝り過ぎですよ。事情は分かりました。これから俺がが変な夢を見るようになっても俺は平気です。だから、謝らないで下さい。」
そう言うと、彼は泣き崩れた。ワンワンと早朝から大声を出して。
「ありがとうぅぅ…こんな僕を責めないでくれてぇぇ」
多分この力で今までも辛い思いをしてきたのだろう。
俺よりも一回り以上大きい彼は、泣き疲れたのか、一通り叫んだ後、
夜が明けると言うのにまた眠ってしまった。
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