魔樹の子

クラゲEX

文字の大きさ
9 / 26
ハリブ編

マモノノナヤミ

しおりを挟む
「魔者って何ですか?」

直接聞く。
魔者と名乗り、その魔者特有の“何か”を俺に使ったのだ。
説明出来るだろう。してくれるかは別だけど。

「え、その前に君について知りたいんだけど…」

「俺は俺です。村育ちのアレンです。
あの夢については俺も何がなんだか…確かに自分だったんですが、別の自分だったんだと思います。だって、あんなところ初めて見たから。」

色々と分からない。あれは別世界の俺?夢に浮かぶほど想い描いた暮らし?色んな可能性が頭の中で錯綜する。

「だから、ハリス。なんで貴方が俺を変に思うのか。
夢見の魔者とはなんなのか。教えて下さい。」

「…分かった。本当に分からないようだし。」

良かった…このまま教えてくれる形になってくれて。
ちょっと殺気混じりの目をしていたから、問答無用で殺されるかもとも思ったが、そうはならなそうだ。

 ハリスは複数の魔獣を単独で撃破する程の腕の持ち主だ。
一対一の戦闘になったら勝機は無いだろう。

「まず、魔者について説明するね。魔者は魔獣や魔樹の様に、体内に、もっと詳しく言うと体のどこか一部に魔力を宿している人間のことなんだ。」

「魔力を宿す…」

「まあ魔力を宿すっていうより、勝手に体の一部が魔力を吸収しているだけなんだけどね。僕の場合は右目。」

右目に魔術を使うとき以外にも、魔力が蓄えられているってことか?普通魔力を吸収するのは口や鼻腔からだ。
そして、体内に蓄えるってことは出来ない。

「そしてここからが、“夢見”に当たる説明だ。
魔者の魔力を蓄えている部位は、唱えて使う魔術とは別に、固有の魔術が使える。僕の右目は相手の夢、心象世界への干渉、閲覧だ。」

「__そんな人が存在するんですね。」

驚いた。固有の魔術、それに夢へ介入する魔術なんて聞いた事がない。再現しようにも靄が掛かる様に、上手く想像が出来ない。

「それで…何故ハリスは、協会の人からあんな風に噂されているのですか?まるで恐れられている様な感じでしたが。」

忌避されている様だった。それに、何故俺の夢を見たのか聞きたい。

「それはね…僕が皆んなの夢を荒らしたからなんだよ。僕の右目ね、高確率で閲覧した夢を悪夢にするんだ。
最初は偶然だと思ったんだ。入る日に偶然悪夢が重なったって。でもね、どれだけ時間が経っても殆どの夢が悪夢なんだ。それに加えて、夢を見ている人は僕をはっきりとは捉えられないけど、黒い人型としては見えるらしくて、そこから悪夢を見た人が魔者だ魔物だって噂して…こうなってしまったんだ。」

…大変そうだな。けど、一つ大切な事が抜けている。

「なんで夢を閲覧するんです?しなければそんな騒動にもならずに済むのに。」

そう話すと、少し頬を膨らませる様に、少し怒っている様な風でこちらを睨んで来た。

「分かってるよ。けど見たくなくとも、見ちゃうんだ。
勝手に。僕が寝ていると勝手にね。」

繰り返し言ってきた。それだけ悩まされているのか。
確かに右目が見せる夢は殆ど悪夢、使用者のハリスも当然その悪夢を見る訳だから悩むか。

「すいません。その、悩んでいるとも知らずに。」

「そんなに申し訳なさそうにしないでくれ。
ごめん、ちょっと責める様な口調になってた。
許してくれ。」

下を向く俺を見て、しどろもどろになりながら謝ってくる。

「謝らずとも、俺が悪かったんですから。」

「いや、今のは僕の方が悪かった。」

こんな押し問答が数分続いた。 

「えっとまあ、これは置いといて、僕が君を変に思ったのは、今までの夢とは違う、かなり異質なものだったからなんだけど…君も分からないならいいよ、ちょっと驚いただけだからね。不快な思いをさせてごめん。」

さっきから凄い謝るな…確かに夢を見られていたってのはこっちこそ驚いたが、理由を聞いた今なら納得出来るし、仕方ない事だと割り切れる。

なのにこの人ときたら…

「さっきから謝り過ぎですよ。事情は分かりました。これから俺がが変な夢を見るようになっても俺は平気です。だから、謝らないで下さい。」

そう言うと、彼は泣き崩れた。ワンワンと早朝から大声を出して。

「ありがとうぅぅ…こんな僕を責めないでくれてぇぇ」

多分この力で今までも辛い思いをしてきたのだろう。 


俺よりも一回り以上大きい彼は、泣き疲れたのか、一通り叫んだ後、
夜が明けると言うのにまた眠ってしまった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...