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断章
タビノシカイ
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魔術の影響は私にも及んだ。
絞り尽くされることは無かったが、数分動けなくなるほどには体の生気を持って行かれた。
目覚めた時にはもう日が出始める時間帯になっていた。
幸い未だ人は出て来ていない。
騒ぎを聞いて
大きな音は出さずにここまでボロボロになったのかと変な感傷に浸る。
ハリスは…手遅れだった。よく見るとあの魔術を放つ前と今で姿も、肌の色も変わっていない。
倒れた樹官らはどちらも肌が青白く絞られた雑巾のように、見っともない姿になっていた。
術の拡がる感覚はあったが、どこまで及んだかは分からない。他の無関係の人まで巻き込んでいるかもしれない。
術の規模も図らずに、無責任に放ったことへの罪悪感が押し寄せる。
周りに血は無かった。ただ灼けて使い物にならないだけ、痛いだけだった。
茫然としていた頭がやっと正常に動く。
逆にこの短期間に二度も正常な思考が出来ない状況に陥っているのが今後の旅に支障をきたしそうで思いやられる。
先の旅、ついさっきまで考えていたその先をもう夢見ることすら叶わない。
戻らない親友、焼け爛れた足、幾度となく身体を巡る不可能の文字に頭が割れる。
…取り敢えず今は「今」を考えなければいけない。先は後だ。
現状は死体三つに足が動かない役立たずが一人。
枝は何処か、目の届かぬところに行ってしまった。
探そうにも動けない。
でもここで座り込んでいる場合ではない。
出来損ないの匍匐前進で百足の様に這い回る。
興奮が冷めたのか、足を擦る毎に足がおろされていく。
ジャリジャリジャリ…
動く毎に足がすり減る。
苦痛を紛わすための思考も一向に完結する目処が立たない。
死が直前迫る暗闇の中で、死体の下敷きになっている枝を見つけた。
九死に一生を得る。この言葉を自ら体現するとは思ってもいなかった。
足の火傷を動ける程度に治す。
痛みが和らぐとまた要らぬことを考え始めて泣いてしまった。
ハリスの体は家に埋めた。
彼の生まれも育ちも知らないが、ここで過ごした思い出は沢山ある。
せめてもの想いで綺麗に埋めた。
襲ってきたやつらは切り刻んで魔獣共の餌にでもしようと思う。
なるべく追跡されない様にするためにも骨すら砕いて呑み干す奴らは都合が良い。
肉塊共を引き摺って、誰もいない黒い赤空の下ハリブを去った。
絞り尽くされることは無かったが、数分動けなくなるほどには体の生気を持って行かれた。
目覚めた時にはもう日が出始める時間帯になっていた。
幸い未だ人は出て来ていない。
騒ぎを聞いて
大きな音は出さずにここまでボロボロになったのかと変な感傷に浸る。
ハリスは…手遅れだった。よく見るとあの魔術を放つ前と今で姿も、肌の色も変わっていない。
倒れた樹官らはどちらも肌が青白く絞られた雑巾のように、見っともない姿になっていた。
術の拡がる感覚はあったが、どこまで及んだかは分からない。他の無関係の人まで巻き込んでいるかもしれない。
術の規模も図らずに、無責任に放ったことへの罪悪感が押し寄せる。
周りに血は無かった。ただ灼けて使い物にならないだけ、痛いだけだった。
茫然としていた頭がやっと正常に動く。
逆にこの短期間に二度も正常な思考が出来ない状況に陥っているのが今後の旅に支障をきたしそうで思いやられる。
先の旅、ついさっきまで考えていたその先をもう夢見ることすら叶わない。
戻らない親友、焼け爛れた足、幾度となく身体を巡る不可能の文字に頭が割れる。
…取り敢えず今は「今」を考えなければいけない。先は後だ。
現状は死体三つに足が動かない役立たずが一人。
枝は何処か、目の届かぬところに行ってしまった。
探そうにも動けない。
でもここで座り込んでいる場合ではない。
出来損ないの匍匐前進で百足の様に這い回る。
興奮が冷めたのか、足を擦る毎に足がおろされていく。
ジャリジャリジャリ…
動く毎に足がすり減る。
苦痛を紛わすための思考も一向に完結する目処が立たない。
死が直前迫る暗闇の中で、死体の下敷きになっている枝を見つけた。
九死に一生を得る。この言葉を自ら体現するとは思ってもいなかった。
足の火傷を動ける程度に治す。
痛みが和らぐとまた要らぬことを考え始めて泣いてしまった。
ハリスの体は家に埋めた。
彼の生まれも育ちも知らないが、ここで過ごした思い出は沢山ある。
せめてもの想いで綺麗に埋めた。
襲ってきたやつらは切り刻んで魔獣共の餌にでもしようと思う。
なるべく追跡されない様にするためにも骨すら砕いて呑み干す奴らは都合が良い。
肉塊共を引き摺って、誰もいない黒い赤空の下ハリブを去った。
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