魔樹の子

クラゲEX

文字の大きさ
17 / 26
ハクチ編

ワレハクチ

しおりを挟む
ハクチ二日目の朝。
二度寝したからか、はたまた足の痛みからか、寝起きはすっきり快活な朝だ。
今日は取り敢えず、居住区の外れにある図書館へ向かう。
身支度を済ますために体を起こす。
歯を磨き服を着替え、朝食を摂る。
顔がバレてはいけないのでフードを被るが、杞憂に終わるだろう。

朝日が燦々と降り注ぐ。茶色く照り輝く道を眺めて目的地へ向かう。

初めて来る場所だからなのか、死を孕む恐ろしい筈のこの國がやけに輝いて見える。
人の笑顔が多いから?ハリブと違って國の清掃が行き届いていて、物理的に輝いているから?
浮かれていられる状況ではないのに、自然とウキウキしている自分が恥ずかしい。

こんな状態でまたあんな奴らに襲われたら、今度は足どころじゃ済まないだろう。

気を引き締めろ私。浮かれていたら殺されるぞ。

いつの間にか私の一人称が私になっている。
…何故だろう、以前は俺の方がしっくりきたのに。

不意に目が熱くなって、掘り出し物を埋め返す。そうすると浮かれた気分も目の熱も急速に冷えていった。

二十分程歩いて図書館に到着したのだが、
ハリブでは図書館に行く必要が無かったし、村には存在すらしていなかったので初めてちゃんと図書館というものを見た訳だが、

大きい。ハクチの図書館が特別大きいのかもしれないが、とにかく大きい。
先のように此処が特別なのなら、これから見る図書館は少々見劣りしてしまうだろう。

というか劣る。この図書館のデザインで分かったが、ハリブにも同じデザインの施設があった。少し見る程度だったが、あれに比べてこれは…大きいな。

ハクチやハリブとは一風違った、王都の前衛的なデザインに近い。白を基調とした木造のドーム型。上はガラス張りの見ていて飽きない魅力あるデザイン。

これ、図書館だったのか。初めて来るが見るのは初めてではなかったことに驚きだ。どちらかというと困惑しているかも。

素人目でも分かる程に街のメルヘンな雰囲気に合っていないがこの建築自体は好きだな。


中に入っても期待を裏切ること無い内装だ。

デザインや建築にあまり興味が無かったが、ここまではしゃいでいるのは何故だろう。
だが今はこの図書館に心躍っている。

再燃した熱をそのままに魔者について書かれていそうな本、あとは魔樹教…樹官についての詳しい情報が載っている本を探す。

流石でかいだけあって探し物はここにあった。探すのには少し手こずったが。

しかし一つの本でどちらも把握出来るとは思わなかった。

「樹官全書」
この本に全て載っていた。
樹官になるには試験の合格が必須なようで、その参考書とでも言うべき本なのだがここに全て載っていた。

樹官は魔樹教の存続、権威を象徴する魔樹教の最高戦力。
人員数は約三千。
一人一人が大抵の魔獣を単独で撃破する程の戦力を有する。
教の危機となれば一般市民ですら容赦無く屠る。
主な活動はハリブの監視、禁忌魔術、原語の探索と歴史の調査。
有事の武力介入。そして、異端者(原語者、有害指定者)の捕縛(場合によっては処刑)。

有害指定者
有害指定を受けた者。
二等級以上の犯罪を犯した者、禁忌魔術を習得した者。そして未制御の魔者。

王都以外の四國でこの指定は有効。
國ごとの軍警、自警団との連携の下、
指定者を「鳥籠」に収容。
暴走、反抗を指定者が行う場合は処刑も可。
鳥籠からの脱走も同様である。

知りたいことは分かった。
恐れられていた逃げられない場所という者は鳥籠で、彼が有害指定を受けたのも夢の中で時折り姿が見えてしまう辺りから察しがつく。

どうやら王都以外の四國は魔樹教とは協力体制にあるらしい。

………何故知らなかったのだろう。
判っていればすぐに逃げたのに。
ハリスを連れて今でも一緒にいられたかもしれないのに。

ハリスは、
ただ有害指定について知らなかっただけなのか、あの國で死ぬことを望んでいたのかは知らないが、彼は何故最期に私の願いを聞いてくれたのだろうか。

知らないにしても今の生活を投げ捨てて何故?死ぬと覚悟していたのなら何故?

何故俺を家に招いたんだろう。





原語者…この星の言語とされる「第一言語」以前の言葉を扱う者。

禁忌魔術…今の言語では使用出来ない、星の抑制を受けた魔術。
錬金や即死や不老不死など…
 
 使うには原語での使用か、第一言語での魔術の併用を以って元に近い再現をする他ない。
再現ですら禁忌に抵る。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

神は激怒した

まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。 めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。 ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m 世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【完結】平民聖女の愛と夢

ここ
ファンタジー
ソフィは小さな村で暮らしていた。特技は治癒魔法。ところが、村人のマークの命を救えなかったことにより、村全体から、無視されるようになった。食料もない、お金もない、ソフィは仕方なく旅立った。冒険の旅に。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...